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概要編集

ギアボックスなどの機構を利用して、ヘリコプターの要であるメインローター(回転翼)が同軸上で二重に設置され、それぞれが逆向きに反転している形式のもの。

プロペラ飛行機で類似の構造をしているものは「二重反転プロペラ」、船舶のスクリューなら「二重反転スクリュー」と呼ぶ。


回転している物体は、常に回転方向と逆のトルクを発生させているので、これを打ち消して機体を安定させるアイデアの一つである。


シングルローターとの違い編集

メインローターがひとつしかない一般的なヘリコプターは機体の後ろへブーム設置し、その先に垂直な「テールローター」を付けて、横向きの力を発生させメインローターのトルクを相殺している。

これだと動きの制御がしやすい反面、揚力に関係ないテールローターに動力を分け与えてやる必要があるので効率が悪くなる。また、テールブーム分だけ機体が前後に長くなってしまうほか、飛行中にブームやテールローターを破損して墜落するとか、テールローターに地上作業員を巻き込む事故が起きるリスクもある。

ヘリコプターの事故映像などでよく見る「機体がコマのように回転しはじめて制御を失い墜落」というパターンは、テールローターの破損や不具合でメインローターのトルク打ち消しができなくなった状態である事が多い。


二重反転ローターだと、二枚のメインローターがトルクを打ち消しあうので、テールローターが不要になる。

ブームを伸ばさなくていいので前後にコンパクトな機体を作れるし、動力の無駄が少ない、テールローターがらみの事故や弱点が無くなるという利点が出てくるので、狭い場所に積みたい空母艦載機などに採用例がある。

逆にローターが「二階建て」なので上下には大きくなってしまうし、二つが近い位置で回っているので干渉による無駄が出る、制御系がメインローターに集中するため構造が複雑という欠点がある。

例:ヤマハの試作二重反転ローター無人機



類似の機構編集

ローターを二つ反転させてトルクを打ち消すアイデアには、いくつかバリエーションがある。

タンデムローター編集

機体を前後に長い設計にして、頭上と尻の上にローターを備える形式。CH-47チヌークのような大型ヘリで実績がある。

二重反転と比べると機体が全体的に前後に長いという点が利点であり欠点。機体全長に加えて前後にはみ出るローターで大きなスペースを取るが、機内カーゴ容積の豊富な大型輸送ヘリを作れる。


交差反転式ローター編集

機体の左右に二本の軸を設け、斜めに傾けて設置した二つのローターを備える。二つのローターは回転面が交差しているが、シャフトなどで回転を同期させているのでぶつからないようになっている。

二重反転ほどローターまわりが複雑にならないが、同じ空間を左右のローターが横切るので干渉による無駄が大きめなほか、ローターが斜めなので横にも縦にも比較的スペースを取る。なんらかの故障で同期がズレた場合はローター同士がぶつかって即座に吹っ飛ぶ恐れもある。



サイドバイサイドローター編集

横に大きく基部を張り出させて、二つのローターを左右に設置する。公差反転とは違い、二つのローターの回転面は接しない。

張り出し部分を翼形にすると水平飛行性能が上がるという利点がある反面、機体の横幅が大きくなる。

ヘリモードのV-22オスプレイが典型的なサイドバイサイドだが、ローター回転面の角度を変えられるティルトローターであるかとは関係が無いので、固定式のサイドバイサイド機体もいくつか開発されている。

どちらかと言うと「左右双発のプロペラ機モードになれるティルトローター機を設計すると、ヘリモードは必然的にサイドバイサイドになる」という関係。

採用機体編集

ソ連のカモフ設計局が二重反転ローターのヘリを得意としていたので、ロシア軍機に実用化の例が多い。ソ連(ロシア)は爆撃機に二重反転プロペラを採用していることでも知られる。


Ka-50

S-97

AH-56


関連タグ編集

二重反転プロペラ

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