勇気のしるし
ゆうきのしるし
1988年にCMソングとして作曲されたリゲインのCMソング。
「24時間戦えますか」というインパクトのある歌詞と、陽気でリズミカルな旋律で一躍有名となり、中外製薬の「グロンサン」のキャッチコピー【5時から男のグロンサン】と対を成すかたちで、バブル期日本におけるサラリーマンスタイルを表現した。
「黄色と黒は勇気のしるし」は宣伝対象のリゲインを指しており、リゲインを勤労の友にバリバリ働いて活躍しようというサラリーマンの上昇志向を応援歌調に歌い上げている。
のちに2番以降の歌詞と寸劇も追加され、時任三郎氏の代表作となっている。
しかしバブル崩壊から21世紀を迎えた現在。
歌詞の受け取り方が、時代の流れと共に変化を起こした。
バブル全盛期だった発表当時。
サラリーマンは企業のために働いた分だけ、給与も出世も鰻登りの勢いという労働万歳の時代だった。
この頃の『勇気のしるし』はそんな【サラリーマンドリーム】をストレートに歌い上げた熱血応援ソングであった。
実際に1番のBメロの歌詞「遥か世界で戦えますか」は、会社負担でのベンチャー海外出張が当たり前だった日本の景気の良さを表現しており、2番以降の歌詞は海外出張で世界中を飛び回る様を謳っている。
しかし21世紀になると、バブル期の亡霊に取り憑かれたブラック企業による「低賃金」「サービス残業」「自費出張」が横行し、現在でも実質経済の景気回復が成せない暗雲の時代が長引いている。
故に令和時代においては、サラリーマンドリームはすっかり薄らぎ、本曲も「ブラック企業に勤務する社畜の悲哀を歌った曲」だと曲解されがちになった。
のちにサントリーとのライセンス契約で発売されたエナジードリンク版のリゲインが登場した際には、『うる星やつら』のラムちゃんに扮したモデルのすみれ氏の歌で「24時間戦うのはしんどいで〜す」と歌詞を変更。キャッチコピーも「3、4時間くらい戦えますか」とかなりゆるくなった。
そんな本曲だが、令和時代に再び脚光を浴びることになる。
それは集英社のweb漫画サイト「ジャンプ+ 」で連載される大人気作『ダンダダン』のアニメ化がキッカケだった。
本作に登場したキャラクター「ドーバーデーモン」が、本気を出すと『勇気のしるし』を口ずさんでいる。
それがアニメ化の際、初登場時に口ずさむABBA『チキチータ(Chiquitita)』が大人の事情で音をはずしていたのに対し、『勇気のしるし』は漫画時点では出さずにボカしていた商品名を含めてガッツリ歌ってみせた。
お陰でネット老人会はおろか、令和世代までざわつく事態となり、『勇気のしるし』が再注目される運びとなった。(もっとも、初登場時の雇い主は二言目には「給料カット」を言い渡して無理やり働かせるドブラックであり、どういう意味合いでこの曲が使われていたのかはお察し。)