概要
直接タバコの葉を含む混合物を噛むことにより風味を味わい、口腔の粘膜からニコチンを摂取する。
煙草に含まれるニコチンは有毒であるため、唾は飲み込まずに吐き出す。
嗅ぎ煙草と並び、タバコの形態としては最も古い方法である。
火を使わないため、火気厳禁である場所、たとえば船倉、鉱山、森林などで使用され、特に干し草や動物を扱うカウボーイ、武器弾薬を扱う兵士達に愛用されていた。
西部劇のように古い時代を扱った欧米映画等で、登場人物たちがモゴモゴと口を動かしているのはガムではなくだいたいコレ。
解説
タバコの葉を小石や木の実などと共に口に含んで、使用する。
北米大陸のインディアンは、石灰の小片(ライムと呼ばれる)と共に用いていた。現在ではタバコの葉と石灰の組み合わせのほかにさまざまなハーブなどを組み合わせたものや、ガムベースに葉タバコを練り込んだもの等も存在する。
また、歯で噛むのではなく、タバコの入った小袋やタバコを直接歯茎と唇の間に挟むタイプ(スヌースと呼ばれる)もあるが、こちらは主に嗅ぎタバコとしてカテゴライズされている。
噛みタバコの使用時に口に溜まる唾液は猛毒のニコチンを大量に含んでいるため、絶対に飲み込んではならない。
ニコチンは水溶性のため、唾液中のニコチンは体内への吸収が早く中毒症状も重い。いわゆる痰壷はこれを吐き出すためのものである。
また、口腔粘膜から直接タバコを接触させて成分を吸収する結果、口腔がん及び咽頭がんのリスクは紙巻き煙草が比べ物にならないくらいに高い。
かつては世界的に一般的なタバコの形態であったが、公共の場で黒々とした唾を吐く行為が不衛生であり、マナーの観点からも好ましくないことで、徐々に紙巻き煙草に需要が移った。
煙による肺活量の低下がないことから、アメリカのメジャーリーグの選手には噛みたばこを愛用する者が多く、試合中グラウンドやベンチ内でヤニを吐く光景がよく見られる。
しかし、口腔がんのリスクを無視することはできず、また、ベンチ周りを汚すという理由から、紙巻き煙草同様にこちらも現在は減少傾向である。
日本では「火を使わず副流煙も出ない、人に迷惑をかけることがないたばこ」であるとして一時普及の動きがあったが、日本人の舌に合わないせいもあって定着しなかった。
現在、日本では国の認可を得られていないことから入手するのは難しいが、好事家の一部には通販やコネ等を駆使して入手し、黒いタオルにヤニを吐くといった工夫をして楽しんでいる人もいるとのこと。
ビンロウジ
インドや台湾、東南アジアのほうでは葉タバコの代わりに、ニコチンに似た作用をもたらすアレコリンを含むビンロウジの種(檳榔子)を用い、その他ハーブやスパイスで味付けしてキンマという薬草の葉で巻いた『キンマ』もしくは『パーン』や、チョコやミントのような子供向けの甘味料と香料を多く含んだ『グトゥカー』と呼ばれる噛みタバコに似た製品がある。
いずれもカレーのような匂いの強い食べ物を日常的に食す土地で食後のブレスケアのように使われている伝統的な嗜好品(台湾では先史文明の頃から使用されていた形跡が見つかっている)だが、噛みタバコ同様に毒を含んだ唾液(ビンロウジの成分が溶け出して真っ赤になっている)は吐き出さねばならず、顎の変形や口腔がん・咽頭がんを引き起こすリスクの高さと風紀上の観点から、現在では規制されつつある。
なお、ビンロウジを使った製品は法令により日本国内には持ち込めない。