概要
パイプを模した日本の喫煙具で、南蛮貿易の時代に作られるようになった。
構造
刻んだ煙草の葉を詰める火皿(ひざら)、中間の管部分の羅宇(らう)、火皿と羅宇を渡す曲線部分である雁首(がんくび)、煙を吸うための吸口(すいくち)で構成されている。
羅宇は高級木材を使うこともあるが、ほとんどは竹で拵えられる。それ以外の部分は金属製で、金・銀・銅・鉄・亜鉛やそれらからの合金で作られる。
歴史
16世紀、日本にポルトガルから煙草葉が伝来し、1612年にから阿波国(現在の徳島県)近辺で煙草葉が栽培されるようになった。
これに伴い煙管が登場したが、商品として流通し始めたのは江戸時代に入ってからである。
当時は主に未加工の乾燥煙草葉が流通しており、喫煙する際に髪の毛より細長く刻む。
刻む作業を代行する「賃粉切り(ちんこぎり)」、羅宇に溜まったヤニをクリーニングしたり、新しい羅宇に取り替える「羅宇屋」という職業もあった。
庶民の間で喫煙文化が広がるとともに、喫煙具である煙管も様々な装飾を凝らしたものが登場し、武士や豪商、番頭などは特注で凝ったものを作らせ、煙草入れや煙草入れを帯に止めるための根付などもコレクションの対象となった。
江戸っ子たちの間ではいかに粋なポーズで煙管を吸えるかという競争もあり、様々な「かっこいい煙管の吸い方」が考案された。「やに下がった」は雁首を高く上げ、格好つけて煙管を吸っているとヤニが下がってくる事が語源である。
pixivには江戸時代の花魁が煙管を持っているイラストがあるが、太夫などは朱塗りの長羅宇煙管を帯に挟んでおり、遊女の間では格が高ければ高いほどこの羅宇が長くなるという決まりがあった。
また、遊女が客を選ぶ際に煙管を一口吸ってから吸口を軽く拭い、差し出された煙管を客が受けると客の側も気に入ったという意思表示となる「吸いつけ煙草」という文化があった。歌舞伎の演目『助六由縁江戸桜』に「煙管の雨が降るようだ」というセリフがあるが、これは江戸一のイケメンである助六に対し、遊女達が次々とこの吸いつけ煙草を差し出したという意味である。
煙管は歌舞伎で重要な小道具として使われ、持っている煙管や持ちかたでその登場人物の素性や役割を示した。客席から見えるように実際の煙管よりもかなり大きい。
やくざ者や無頼漢、豪傑などのキャラクターが巨大な煙管を持って登場する事があり、石川五右衛門が持つ真鍮手綱形太煙管が有名である。総真鍮で綱のようにねじれた装飾が入っているが、長さ30cm、直径は最大部分で数センチはあろうかという代物である。
煙管の灰を灰吹き(灰皿)にカーンと音を立てて落としてから決め台詞を言うという所作もあった。
武器として作られた「喧嘩煙管」は総金属製のものがほとんどで、長さは40cmから50cmほどのギリギリ煙管と言い張れるサイズ、羅宇の部分を角ばらせたり金属製の突起を付けるなど、煙管の格好をした金棒である。
江戸時代には旗本奴と呼ばれる武家の不良集団が町人に乱暴狼藉を働いたが、彼らの暴虐行為に対抗するための町奴が現れ、町人は帯刀する事が禁じられていたため「喧嘩煙管」を武器として携帯していた。そのため、江戸時代を題材にしたイラストでは「煙管で相手を殴る」「煙管で相手の刀を受ける」というシーンがしばしば登場する。
当時は煙管を武器とする町奴への規制や煙草の火の不始末による火事の予防、農民が米より換金率の良い煙草ばかり作ることへの警戒から、しばしば禁煙令が出されたが、全く守られることはなかった。
明治維新後の廃刀令によって刀を持てなくなった士族の一部も「喧嘩煙管」や鉄扇を護身用の武器として持ち歩いていた。
紙巻き煙草の普及や煙草の専売化により刻み煙草を扱う業者がほぼ絶滅し、煙管で喫煙している人を見る事はほぼ無くなったものの、愛好家は少なからず存在しており、「こいき(小粋)」という銘柄だけは販売され続けている。
2011年に外国製ブレンド葉を使用したベルギー製刻み煙草「宝船」(柘製作所)も登場した。
紙巻き煙草の吸い殻(シケモク)を先端にねじ込んでぎりぎりまで吸うのに使われる事もある。
煙管を使用するキャラクター一覧
創作作品では、和風の「大人っぽさ」「妖艶さ」を強調する為に、和服姿のキャラクターが持っていることが多い。pixiv内では、とくに女性のイラストが多い傾向にある。
また、『花の慶次』の前田慶次や『がんばれゴエモン』シリーズのゴエモンなど、煙管と縁のある著名なキャラクターも存在する。
- 綾辻行人:文豪ストレイドッグス
- 壱原侑子:xxxHOLiC
- 織田ノブナガ:戦国乙女
- 鬼塚慶次:テラフォーマーズ
- カブキノイド:機動刑事ジバン(打撃武器、さらにはマシンガンとして使用。花吹雪爆弾をばらまける必殺武器でもある)
- ガマブン太:NARUTO
- 擬宝珠夏春都…こちら葛飾区亀有公園前派出所
- 桐:このはな綺譚
- ギリコ:でこぼこ魔女の親子事情
- クルエラ・ド・ヴィル:101匹わんちゃん
- 煙ヱ門:星獣戦隊ギンガマン(ギンガの光が隠れているものを探す探知アイテムとして使用)
- 江華:銀魂
- ゴエモン:がんばれゴエモン(武器として使用)
- ココ:ファイナルファンタジー6
- コックリさん:繰繰れ!コックリさん
- シーラ:魔女の旅々
- 志々雄真実:るろうに剣心
- 四十万スイ:花咲くいろは
- スフィントス=カーメン:マギ
- 千両狂死郎:サムライスピリッツ
- 大黒亭文狐:うちの師匠はしっぽがない
- 高杉晋助:銀魂
- 月詠:銀魂
- 陳老師:高校鉄拳伝タフ(針仕込み)
- 辻平内:助け人走る (吸い口に仕込んだ錐状の針で、相手の首筋等の急所を突き刺す)
- 土蜘蛛、ぬらりひょん他:ぬらりひょんの孫
- 土籠:地縛少年花子くん
- 椿:このはな綺譚
- 虎田龍之助:必殺仕切人 (鋼鉄製の長煙管で、相手を殴り殺す)
- ドロンジョ:ヤッターマン(火皿の部分が髑髏型のものを使用。平成版TVアニメでは喫煙シーンなし)
- 直政:境界線上のホライゾン(アニメ版では六角レンチに修正)
- 東谷上下ェ門:るろうに剣心
- ピナコ・ロックベル:鋼の錬金術師
- ヒノエ:夏目友人帳
- ヒュー・ザ・ダーク・アルジャーノンⅢ世:SERVAMP
- 藤田靖子:咲-Saki-
- ブラックマリア:ONEPIECE
- フローレイティア=カピストラーノ:ヘヴィーオブジェクト
- 北条氏康(戦国無双):戦国無双シリーズ
- 鬼灯:鬼灯の冷徹
- 前田慶次:花の慶次
- 魔女:ゴブリンスレイヤー
- マダム・シャーリー:ONE PIECE
- ミスティ:ファイナルファンタジー6
- モーゼス:ねじれ探偵
- 燃神:大神
- モラウ=マッカーナーシ:HUNTER×HUNTER(身の丈ほどもある巨大キセルを持ち、煙を念能力の媒介にする他、打撃武器としても使用)
- ゆうぎり:ゾンビランドサガ
- 夢次:必殺仕事人・激突! (改造した煙管と煙草入れを組み合わせると、雁首から赤熱したゼンマイが飛び出し、相手の身体を貫く)
- 立法:不機嫌なモノノケ庵
- 凜雪鴉:Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀(術を用いるときにも使用。虚淵玄曰く「魔法のステッキのようなもの」)