概要
刻んだタバコの葉を、一度の喫煙で吸う分だけ紙で筒状に巻いたもの。
パイプや煙管などと違い他の喫煙器具が要らず、ライターのような着火する道具さえあれば単体でそのまま喫煙可能なのが最大の特徴である。
その手軽さから最も普及している煙草の形式であり、特に日本で単に「たばこ」と言えばこれを指す事が殆ど。
予め紙に巻かれて売られている物が多いが、購入者が自分でタバコの葉を紙で巻く所謂「手巻き煙草」もあり、手巻きローラーも売られている。
構造
収穫後、貯蔵され熟成された様々な種類や産地の葉タバコを刻んでブレンド、専用の紙で巻いて製造される。一つの銘柄につき、平均して40種類前後の葉がブレンドされる。
また、匂いをよくするために他のタバコ同様に香料が加えられることも多く(アメリカン・ブレンド)、よく使われる香料にはココア、メンソール、ラム酒、バニラ等がある。これらの香料はタバコの葉に直接染みこませたり、フィルターもしくは巻紙に染み込ませたりされる。
現在はフィルターが付いているものが殆どだが、フィルターの付いていないものは「両切りタバコ」と呼ばれる。
両切りタバコはフィルターを介さずに煙を吸うことになるため、フィルター付きタバコと同じように吸うと非常にキツい煙を吸うことになり、口の中に葉タバコの小片や入り込んでしまったりする。
上手く味わうには相応のコツが必要になるが、タバコ本来の味を楽しむことができるとして愛用する人は現在でも少なくない。
また、現在の日本では製造されていないが、厚紙で作られたストロー状の吸口を喫煙時に潰して使う「口付」(カズベック・チューブ)という物もある。
構造上、どうしても吸口やフィルターを中心として捨てる部分が生じてしまうのが困りもの。
外で吸う際はきちんと公共の喫煙スペースを利用するか、携帯灰皿を携行するなどしてマナーを守ろう。
ポイ捨ては絶対にダメ!
また他の煙草と比較して残り香が芳しくないと言われる。
本来、煙草葉は燃焼速度が遅く吸うのに時間がかかり、また、吸う技術が無いと安定した灰を作れないため、巻き紙に助燃剤(クエン酸ナトリウムやクエン酸カリウムなど)を添加している。これが燃焼すると鼻をつく酸っぱい臭いとなる。
現代社会では悠長に煙草休憩を取っている時間的余裕がなく、手早く吸い終える紙巻が求められるようになった。メーカー側としても早く吸える銘柄で消費を増やした方が利益が上がり、双方の理に適ったものである。
「アメリカンスピリット」は現在では珍しい助燃剤不使用銘柄で、吸い切るのに1本につき10分ほどの時間を要する。
歴史
その発祥については諸説あり、1853年のクリミア戦争の際、戦場でパイプを失くした兵士が、その場しのぎに薬包紙で刻みたばこ葉を巻いて吸ったのが始まりだの、1832年のエジプト・トルコ戦争においてシリアのアッコを占領したエジプト軍が輸送中の大量のパイプを敵に取られて兵士達が仕方なく刻みたばこを紙で巻いて吸ったのが始まりだの、実際にはそれ以前から世界各地で紙巻き煙草は吸われていただの、はっきりはしていないが、とにかくクリミア戦争以降に紙巻き煙草がヨーロッパを中心に普及していったことだけは確かである。
19世紀後半にはすでに手工業的に生産されていたが、当時は簡易な装置にのみ頼った手作業での製造のため高価で、葉巻やパイプを吹かす時間がない忙しい者向けの代替品だった。
19世紀末に大量生産が可能な巻き上げ機が発明されると安価で手軽に入手・喫煙できる煙草製品として市場を席捲するようになる。
とはいえ、紙巻き煙草が現在のように主流となったのはヨーロッパや日本・中国では第一次世界大戦後、アメリカでは第二次世界大戦後のことであり、さらに日本と中国を除くアジア諸国の多くでは1980年代からである。
ヨーロッパにおいての喫煙方法は嗅ぎ煙草や葉巻、パイプなどが第二次大戦後しばらくまで紙巻きと並んで主流であった。
アジア圏では各国独自の噛み煙草などが優勢であった。
日本においては古くより手早く吸えるキセルが重宝されており、1920年代になって紙巻き煙草が徐々に広まって行ったものの煙管の代用品という認識が強く、紙が燃える独特な臭いから敬遠する向きも多かった。
吸い方
火を着けて煙を吸い込む。
元々が葉巻やパイプの代わりとされていた歴史もあり、またタバコ葉は比較的低温で燃やすほうがしっかりと甘さが出るため、口内にのみ煙をたくわえる「ふかし」と言われる吸い方が本来の喫煙方法とも言われている。
しかし、現在の紙巻き煙草の使用者は一気に吸い込んで肺にまで煙を飲み込む人(肺喫煙)の方が大半で、逆にふかすだけの吸い方は「金魚(口をパクパクさせているだけ)」と莫迦にされる傾向にもあるらしいが、所詮は嗜好品なので、各々の好きな嗜み方で楽しめばよい。