厳かつ怪しい雰囲気の温泉宿・此花亭の従業員や利用者の様々な姿を、新米従業員・柚を中心に描く。
概要
「コミック百合姫S」(一迅社)にて第9号(2009年)から第13号(2010年)にかけて、「此花亭奇譚」というタイトルで掲載された。
ところが、「コミック百合姫S」第14号では作者の家族の病気が元で作者が精神的に漫画が描ける状態でなくなったことからやむを得ず休載したのだが、その雑誌が該当号で事実上廃刊に追い込まれてしまった。
同じ出版社の「コミック百合姫」への移籍がアナウンスされたものの、結局実現しなかった。
だがそれから4年半のブランクを経て、「バーズ」(幻冬舎コミックス)2015年2月号(2014年12月末発売)から、「このはな綺譚」のタイトルに変更した上で復活、該当誌にて2018年8月号まで掲載された。なお、「バーズ」は、連載開始当初から2015年5月号までは「コミックバーズ」という誌名だった。
「バーズ」廃刊後は、該当誌の版元が運営しているWebコミック誌「デンシバーズ」→「comicブースト」に移籍している。2018年8月から、毎月第4金曜日に配信される。
TVアニメが2017年秋アニメとしてTOKYOMX、AT-XおよびBS11に加えてフジテレビ系列局約1局にて放送された。アニメーション制作はLerche。
なお蛇足ながらアニメに登場する此花亭は、「千と千尋の神隠し」の油屋のモデルにもなった長野県渋温泉にある温泉宿「金具屋」の斉月楼がモデルである。
登場キャラクター
本作の主人公。
雪に埋もれて凍死しかけたところを尼僧・八百比丘尼(CV:大原さやか)に救われる。
「もっと広い世界を見て、様々な物事を見て欲しい」という彼女の想いを受け、仲居として此花亭に勤めることになった。以後、何もかも体当たりで奮闘し続ける。
八百比丘尼の教育の甲斐もあって学問に精通しており、また山育ち故に見た目よりも体力があるもよう。
よく着物の袖の中に饅頭を隠し持っている。
柚の先輩の仲居のひとりで、柚とコンビを組むことが多い。
暗所恐怖症。
姉・柊(後述)が、歌や踊りが得意な一方、フリーダムな「人間性」故に、此花亭に行かずに巫女になれたことから、自分が巫女の夢を棄てさせられて此花亭に逝くハメになった。故に柊の事は、才能は認める一方で、自分の夢を破壊した「張本人」として、親の敵の如く嫌っている。もっとも、巫女になる事自体はあきらめていない。
元々の構想では、柚ととある関係にまで進展する予定だったが、最初の掲載誌の廃刊などもあって、現状ではそこまでは行っていない。
柚の先輩の仲居のひとり。
男性ものの和服を身につけているが、れっきとした雌狐。一人称は「ボク」。
女性でありながらそのイケメン具合を遺憾なく発揮し、男女問わずよく惚れられる。
後述の「犠牲者」約2名のことにもある様に、ネーミングセンスに欠ける。
ニンジンが嫌い。
柚の先輩の仲居のひとり。おしゃれにうるさい。
愛らしい見てくれとは裏腹にお腹の中は真っ黒。
幼少時に周りの男子にいじめられて以来、男性恐怖症。
本人は隠してる(つもりになっている)が棗に惚れている。
ナルシストでKYで愚図でノロマで大馬鹿で重度のシスコンな妹・桃がいる。
柚の先輩の仲居のひとりだが、実は柚よりもお子ちゃま。
滅多にものを話さない。だがその一方で内情は極めてやんちゃであり、度々騒動のきっかけを引き起こす。
体が小さいせいか、仕事をする時はイタチの一種・飯綱(本来は「いいずな」だが、ここでは「いずな」と読む)に手伝ってもらうことが多い。
母親は此花亭に出入りしていた芸者・八重。ただし柚が此花亭に預けられた時点ではすでに故人だった模様。
此花亭の仲居のリーダー。後輩思いな一方で、酒とタバコが大好きで、隙あらばキセルをふかす。
ペーペーの新入りだった頃に櫻の母・八重のやっかいになっていた。ただし、その頃から結構仕事が出来る、優秀な仲居ではあった。
「此花亭奇譚」から「このはな綺譚」に変わるにあたって、レギュラーキャラの中で唯一髪型が大きく変更された。
此花亭の女将。
仲居達が(耳は狐のままではあるが一応は)人間の形をしているのに対し、彼女はモロに狐。しかも主な登場キャラクターの中では一番の巨体を誇る。
化粧をする事で別人のように変貌する。
柚の養母の尼僧と懇意。
遙か昔、ウカノミタマ(お稲荷さん、CV:桑島法子)に仕えており、実はその時代に・・・・・・・・・。さらにウカミノタマに仕えるまでは方々の神を渡り歩いていたが、これは元々仕えていた神が災害に巻き込まれていなくなってしまったため。
瓜乃介(CV:加隈亜衣)
巨大な卵からふ化した貘の赤ちゃん。卵については、原作では櫻が拾ってきたものだったのに対し、アニメでは、蓮(→皐)に取り憑いていたものに変更されている。
イノシシの赤ちゃん(俗に言うウリ坊)に似ていたばっかりに、棗にこんな名前を付けられてしまった。
貘であるので、柚を始めとする従業員達の悪夢を餌としており、なかなかありがたい存在なのだが、従業員達からは完全にウリ坊と勘違いされている、なかなか気の毒な存在でもある。
有名な職人によって作られた日本人形。ただ、あまりにリアルに作られてしまったばっかりに、元の持ち主から半ば見捨てられてしまい、結果、呪いの人形に成り下がってしまう。
故にとある和尚に押しつけられてしまうが、その和尚が此花亭を訪れた際に従業員達に預けられたのが運の尽き。棗にいじり倒されたうえに勝手にお菊という名前は付けられるわ櫻に髪をメチャクチャに切られてしまうわ(故に必要以上に櫻を恐れている)蓮から説教されたうええらいハイカラなヘアスタイルにされてしまうわ彼女特製のメイド服着せられてしまうわ挙げ句の果てにはなし崩し的に従業員の一員にされてしまうわと、「本人」からすればひどい目に遭わされ続けている。
瓜乃介とは気が合うらしく、移動の際も背中を借りている。
アニメでは原作よりかなり早く登場してる為、瓜乃介と共に大幅に出番が増えている。
中の人として割と珍しい女の子らしい外見かつ打たれ弱いキャラ。
柊(CV:池辺久美子)
巫女を務める皐の姉。俺っ娘。
相方の菖(CV:持月玲依)によると、女性を口説く病を患っている。
此花亭に奉公に出される筈だったが、母親曰く「ケンカっ早く考えなしで九九も出来ない」らしく、代わりに歌や躍りが達者なので巫女に出されることになった。
此花亭で働く皐を案じて、此花亭に訪れたとき友達が居ないようなら神社で引き取って巫女にしようかと考えていたが、仲居の仕事を立派にやっていることや、良い仲間ができているのを見ると、その必要が無いことを察して諦めた。
文豪さん
狐の面を付けた、ロングヘアの人間の女性(らしい)。
此花亭の常連客で、長く居座、ゲフンゲフン、もとい長期滞在をしては作品を書いて、というよりは描いている。
カバー裏漫画では数年間旅に出ていた事を柚に詫びていたが、再び快く受け入れられた。
普段は担当からの原稿の催促の電話に対してしおらしく対応しているが、人間の尊厳についての話題では非常に熱い語りを見せた。
その正体は作者・天乃咲哉(の分身)。アニメ第6話および12話(最終回)に登場した際には天乃本人が台詞をあてている。
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