外国人の犯罪一般についての研究
外国人の犯罪一般についての言説は、しばしば、移民や外国人に対する否定的な感情と結びついて語られやすい傾向があるが、米国等での定量的な研究では、外国生まれであることは全体的に犯罪と負の関係があり、暴力犯罪や器物犯罪を犯すこととは有意な関係がないことが示されている。
国内の都道府県別の分析を行った功刀らの研究によれば、「地域によるアジア人全体を見ると、全都道府県データではアジア人比率の増加によって日本刑法犯罪率増加することが分かった。しかし大都市圏データ、外国人の多い都道府県データでの分析ではアジア人比率の増加は刑法犯罪率を減少させることが分かった」という。
Yamamoto & Johnson(2014)によれば、日本における外国人犯罪の研究は、諸外国における移民と犯罪の研究が犯罪の性質や程度について多角的に分析されているものが多い状況と比べて、基本的な研究が難しい状況にあるという。「日本における起訴と刑罰は、国籍によって多少の格差があるように見えるが、利用可能なデータがあまりにも限られているため、その性質や大きさについて自信を持って結論を出すことができない」という。たとえば、来日外国人による裁判においては、執行猶予がつくケースが多いが、もし執行猶予がつかない場合は長い懲役になる傾向が見受けられる。この特徴が、差別的な要因によるものなのか、それとも犯罪パターンの違いによるものなのか、あるいはその両方によるものなのかは、現状のデータでは結論づけられないという。また、日本においては、犯罪の取締りと、移民の取締りが混ざってきている傾向が顕著にうかがえ、犯罪言説における外国人犯罪の存在感の大きさと実際の来日外国人の検挙者数(日本全体の2%)、受刑者数(全体の5%)の間には、開きがある。日本の外国人犯罪言説には、外国人嫌悪、警察庁等の施策、日本の移民政策等の歴史が絡まり合っており複雑な様相を呈しているが、これらの複雑な状況を検証するためにはより詳細なデータを整備していくことが必要であるという。