元くん、これがあたしの概要よ
昭和20年の8月6日に広島に原爆が投下された直後、中岡元(以下ゲン)と焼け跡で出会った女の子。ゲンの姉である英子に似ていたが別人で、顔に火傷をしていた。踊り子を志望しており、父亡きあとも母は彼女が着物とかんざしで着飾った晴れ姿でのデビューを楽しみにしていたが、原爆で無残な火傷を負った上、焼き殺される。
姉で無かったのを見て泣いてしまったゲンを叱咤するが夏江は体調を崩して(放射能の影響)倒れてしまう。ゲンは英子を思い出してしまい、彼女をかいがいしく介護して救護所に連れて行ったり親切な女性(原爆で殺された若者のお母さん)から頂いた桃を食べさせる、顔の火傷についた膿やそれにたかる蛆虫を退治して助ける。彼女を慕うゲンだが、飯盒に水を入れて夏江に与えた際に醜くなった顔が水に映ってしまったため、自殺未遂をされてしまう。だが、ゲンは何度も説得した上で夏江は自殺を思いとどまり、「さくらさくら」に合わせて踊り、涙を流してゲンと別れる。
それから数年間、夏江は親戚を訪ねるが「ピカの毒が移る」と恐れたおじさんや近所の男の子達に嫌われてしまい、世を呪って死に場を探していた。川へ飛び込もうとした時にゲンと再会して叱り飛ばされ、近藤隆太のいるバラックで暮らす。その後も2度目の入水を図るが勝子、ムスビとも仲良くなり、元記者の平山松吉老人をお父ちゃんと呼んで暮らす夏江は洋裁店を作る夢を持つようになる。ゲンの母君江をも母のように慕うが、松吉老人と君江は原爆症で落命する。
洋裁の才能を花開かせた夏江はムスビの商才や隆太のバイタリティに助けられて成功していたが、盲腸炎にかかり、原爆症による白血球不足で病は悪化の一途をたどる。死を決意した彼女は五日市に住む陶芸家夫婦の下で自分の骨壺を作るが、ゲンと隆太の激励で一時は立ち直る。だが、その甲斐もむなしく夏江は回復せず、死去してしまう。彼女の骨はゲンが作った骨壺(夏江が作った壺はゲンが壊してしまった)に納められ、中岡家代々の墓に葬られた。