ゲンとの出会い
単行本4巻の後半で二人の友達と共に出てくるのが初登場シーン。通学中におなかの具合が悪くなった雨森は用を足そうとボロ屋の軒下にしゃがむが、そこが中岡元の家だったため棒で叩かれてしまう。怒るゲンに対して雨森は、「それでも家か。便所かと思うた」とからかいながら逃げる。
その日、初めての授業を受けることになった雨森は同じ学校のクラスにゲンがおり、先生に注意されて帽子を取った(原爆症で禿げたのが恥ずかしくてかぶっていた)のを見て嘲笑し、罰として立たされてしまう。その後、変わった髪型(ゲンと同じ理由でハゲてしまいカツラだった)をしていた同級生の女子・野村道子をも三人がかりで「ハーゲ、ハーゲ、恥ずかしい」と言っていじめているのを見咎めたゲンによって、「クソ森」の名を頂戴したのだった…。
犬猿の仲から親友に
自分を罵ったゲンに激怒したクソ森は、仲間の悪ガキ二人と共にゲンを挑発して原爆ドームを早く登る決闘を申し込む。途中まではクソ森が優勢だったが、彼はゲンが助けようとしたが及ばずに手を滑らせて転落してしまう。高い所から落ちたのだが擦り傷で済み、「ギギギ…」と涙目で呻きつつ悪ガキ達に連れられて退場した。
その後、自分の近所に住む住人達(後述する)がゲンの妹の友子をさらった一件で最初は捜査かく乱をしていたが、ゲンと打ち解けて彼のために一肌脱ぐことになる。ゲンが妹の治療費を稼ぐべく読経でアルバイトをしていたのを知ったクソ森は、亡くなった人がいる家を探してゲンに教えてやったり、彼のハゲ頭を磨いて泣きっ面にする事でお坊さんの代理に見せかけたのだ。
それ以降はゲンと行動を共にする場面が増え、呼び名も「ハゲ」「クソ森」だったのが「雨森」「中岡」に変わり、一緒に作文を書いていたり、お正月の集会に誘ってあげるなど優しい部分が目立つようになる。一方でGHQと結びついているABCC(原爆傷害調査委員会)についていったが裸にされて調べられたり、昭和天皇の訪問で「天皇陛下ばんざーい」をしているなどゲンにとっての加害者(マッカーサー元帥や昭和天皇など)サイドに追従する部分も描かれている。
中学校時代と別れ
8巻冒頭で再登場したクソ森はゲンと共に波川中学校に進学するが、朝鮮戦争が勃発したのに無関心だったためにからかわれる。私怨で体罰やハラスメントを行う問題教師が野放しな中で、唯一の常識人だった元軍人の太田先生が反戦運動に参加した事で追放された時には悲しみ、彼が下宿している魚屋に押し掛けた。
ゲンとの友情も健在で、偏見に囚われた校長先生がゲンを一方的に殴った時は彼を庇って抗議し、卒業式でもゲンの指揮で一同に「青い山脈」を歌わせた。また、不良の横道徹に暴力を振るった教師らが御礼参りされた時にも全く同情しないなど、終始ゲンと太田先生を慕う人情味と漢気を見せる。その後、高校に進学する事をゲンに話しつつ、歌いながら一緒に帰宅して以降、クソ森は登場しなくなる。
クソ森を囲む人々
- 有馬と木村
クソ森の悪友の悪ガキ二人組。彼をガンちゃんと呼んで慕い、野村やゲンをからかうが後に和解。その後も典型的ないたずらっ子や悪ガキキャラとして何度か登場する。
- 雨森の兄
いじめられっ子の野村道子がゲンに話していた人物で「ボンクラの兄さん」。喧嘩に負けると兄に告げ口をするため、クソ森が嫌われている原因とされている…が、なぜか本編には登場して来ない。
- 近所の住人達
クソ森の近隣に住まう人々。「エヘへへ、ここが違うわい」「ごたごた言いやがると半殺しにしゃげたるわい」など名言の宝庫でもある。
- 民吉さんと春さん
民吉さんは顔にケロイドが出来た被爆者で足に障害を負った老人。娘婿を原爆で殺され、孫の泰子を亡くした彼は死にかけた娘の春さんを助けるべく、ゲンの妹の友子を攫う。春さんは原爆症で病死し、お経をあげに来たゲンを見た民吉さんは詫びて友子を返す。
- 鉄さんと銀さん
ヒゲ面の巨漢鉄とキセルを加えた痩せ形の銀太で構成される荒くれ者。戦争と原爆で家族を失った上に原爆症への恐怖から自棄になり、喧嘩に明け暮れるヤクザにまでなり果てていたが、友子に出会って彼女を「お姫さん」と慕って真人間になる。
- 三吉と六さん
三吉は鼻水を垂らしてほっかむりをした間抜け面の男で、堆肥を道にまいて警官を邪魔するなど活躍するが友子にキスできずに嫉妬する。六さんはムスビに似た顔の大男で、着物姿に庖丁を振り回して警官を恫喝し、捜査を邪魔した。
- 幸吉さんとフミさん
幸吉さんは妻の菊さん、フミさんも夫が死にかけている。二人とも伴侶を励ますために民吉さんが盗んだ友子に千恵、秋江と言う偽名をつけて行方不明になったり死んだ赤ちゃんだと偽っていた。
その他の住人達も友子をお姫様と慕って死んだ子の代わりに育てようとするが、友子の病は悪化してしまう。朴さんとも再会して援助を受けたゲンの努力もむなしく友子は死んでしまい、一同は涙に暮れながら彼女を火葬にして弔った。