概要
作者は石坂洋次郎。1947年(昭和22年)6月から10月の「朝日新聞」に連載された。作者が青森県立弘前高等女学校(現在の青森県立弘前中央高等学校)の教員を務めていたころ、女子学生達から聞いた学校生活をこの小説の題材にしたといわれている。
ただし作中で描かれる高校のモデルは弘前学院聖愛高等学校といわれている。
東北地方の港町を舞台に、若者の男女交際をめぐる騒動をさわやかに描いた。
連載当時にはすでに教育基本法と学校教員法が施行され現在の中学・高校の制度も確立していたが、連載開始時点では新制中学に1年生が入ったくらいであった。そのため作中で描かれる高校は中等学校令に基づく旧制高等女学校および旧制高等学校をもとに描かれている。
1949年には原節子主演で映画化され、後述の主題歌「青い山脈」も大ヒットした。
映画「青い山脈」
1949年版
7月19日公開の「青い山脈」と7月26日公開の「續青い山脈」の2部構成。
東宝と松竹が映画化権を争い最終的に東宝で映画化が決定。松竹は木下恵介監督を起用すると提示したことから東宝は負けると覚悟していたという。
とはいえ東宝争議から明けて間もない東宝では組合が石坂を「プチブル作家」と呼び反発。監督の今井正が「戦時中に抑圧されていた若い男女が一緒に街を歩く、それを描くだけでも意義がある」と説得したという。
前述のように東宝争議の影響で東宝はまだ機能が麻痺しており、藤本真澄プロデューサーが設立した藤本プロとの共同作品となった。
脚本は小国英雄が手掛けていたが今井監督と対立し降板、新たに井出俊郎が起用され、井出はこれが脚本家デビュー作となった。
実は今井監督は有名な主題歌は好んでいなかったといわれている。
打ち上げ花火やカモメなどの描写にはアニメーションが使用され、前年に東宝を退社した鷺巣富雄が作画を手掛けている。
スタッフ
キャスト
- 島崎雪子:原節子
- 梅太郎(笹井とら):木暮実千代
- 金谷六助:池部良
- ガンちゃん(富永安吉):伊豆肇
- 沼田玉雄:龍崎一郎
- 笹井和子:若山セツ子
- 駒子:立花満枝
- 松山淺子:山本和子
- 寺沢新子:杉葉子
- 井口甚蔵:三島雅夫
- 武田校長:田中栄三
- 八代教頭:島田敬一
- 岡本先生:藤原釜足
- 田中先生:生方功
主題歌・挿入歌
- 主題歌「青い山脈」
- 作詞:西條八十
- 作曲:服部良一
- 歌:藤山一郎、奈良光枝
- 挿入歌「恋のアマリリス」
- 作詞:西條八十
- 作曲:服部良一
- 歌:二葉あき子
1957年版
10月17日公開「新子の巻」と11月19日公開「雪子の巻」の2部構成。
スタッフ
キャスト
- 沼田玉雄:宝田明
- 島崎雪子:司葉子
- 金谷六助:久保明
- 寺沢新子:雪村いづみ
- 梅太郎:淡路恵子
- 松山浅子:水谷良重
- 北原:草笛光子
- 富永安吉:太刀川洋一
- 笹井和子:笹るみ子
- 井口甚蔵:志村喬
- 岡本先生:藤原釜足
- 田中先生:田島義文
- 八代教頭:村上冬樹
- 易者:沢村いき雄
- 駒子:森啓子
- 中尾先生:堺左千夫
- 武田校長:十朱久雄
1963年版
1月3日公開。日活が製作した。時代設定が公開当時(昭和30年代後半)に変更され、舞台となる学校も新制女子高等学校に、旧制高校生も大学生に変更されている。
有名なラブレターの「恋しい恋しい」と「変しい変しい」を巡って教職員と父兄が議論する場面で大学生がアマチュア無線を使って主人公たちに実況中継するという脚色が加えられている。
カラオケで主題歌の映像として使用されることが多いのは本作。
スタッフ
キャスト
- 寺沢新子:吉永小百合
- 金谷六助:浜田光夫
- 島崎雪子:芦川いづみ
- 笹井和子:田代みどり
- 富永安吉:高橋英樹
- 田中:藤村有弘
- 白木:北林谷栄
- 長森老人:左卜全
- 八代教頭:織田政雄
- 寺沢修蔵:清水将夫
- 井口甚蔵:三島雅夫
- 岡本:井上昭文
- チョビひげの男:近藤宏
- 武田校長:下元勉
- 宝屋の内儀:高橋とよ
- 松山浅右衛門:山田禅二
- 柳屋の主人:中村是好
- 駒子:松尾嘉代
- 松山浅子:進千賀子
- 寺沢英一:小沢茂美
- 梅太郎:南田洋子
- 沼田玉雄:二谷英明
主題歌
1975年版
8月2日公開。東宝映画製作、東宝配給。
スタッフ
キャスト
- 金谷六助:三浦友和
- 寺沢新子:片平なぎさ
- 沼田玉雄:村野武範
- 島崎雪子:中野良子
- 梅太郎:星由里子
- 富永安吉:田中健
- 笹井和子:木村理恵
- 松山浅子:加藤小夜子
- 野田アツ子:千波恵美子
- 武田校長:小栗一也
- 八代教頭:田武謙三
- 岡本先生:宮口精二
- 田中重次郎:山谷初男
- 中尾先生:安田伸
- 小野先生:塩沢とき
- 白木先生:南風洋子
- 井口基蔵:大滝秀治
主題歌
1988年版
10月15日公開。タイトルは「青い山脈'88」。1949年版当時東宝と映画化権を争った松竹が配給。製作はキネマ東京。
舘ひろしが演じた沼田玉雄はあまりにもインパクトの強いいでたちから刑事とも評される。
1949年版で金谷六助を演じた池部良が一転して封建的な父親である寺沢善衛を演じたことも話題となった。
スタッフ
キャスト
- 沼田玉雄:舘ひろし
- 島崎雪子:柏原芳恵
- 寺沢新子:工藤夕貴
- 寺沢房子:野際陽子
- 林恭子:加賀まりこ
- 金谷六助:野々村真
- 梅太郎:梶芽衣子
- 駒子:石田浩子
- 井口甚蔵:小松方正
- 土門治:笈田敏夫
- 松山浅子:松岡由美
- 笹井和子:池田純子
- 北原千尋:久野翔子
- 大林由香:助川ユキ
- 寺沢善衛:池部良
主題歌
- 主題歌「青い山脈」
- 作詞:西條八十
- 作曲:服部良一
- 歌:舘ひろし
テレビドラマ版
1962年版
毎日放送ほかで放送。全13話。
スタッフ
- 原作:石坂洋次郎
- 脚本:中沢昭二
キャスト
1966年版
松竹テレビ室と日本テレビが共同制作し、日本テレビ系列で放送。石坂洋次郎原作の『風と樹と空と』、『山のかなたに』に続くシリーズ第3作として制作された。
第9話と第13話では関口宏の父親である佐野周二がゲスト出演、親子共演の場面がある。
スタッフ
キャスト
- 寺沢新子:加賀まりこ
- 金谷六助:関口宏
- 富永安吉(ガンちゃん):工藤堅太郎
- 笹井和子:三沢照子
- 島崎雪子先生:村松英子
- 沼田玉雄先生:中野誠也
- 芸者・梅太郎:ロミ・山田
- 松山浅子:野田和子
- 岡本先生:藤原釜足
- 田中重次郎:柳沢真一
- 武田校長:森川信
- 八代教頭:山本豊三
- 井口甚蔵:曽我廼家明蝶
- 易者:左卜全
- 寺沢けい子(新子の母):三宅邦子
主題歌・挿入歌
1974年版
東宝とフジテレビが共同製作しフジテレビ系列で放送。
奇しくも放送時間は日本テレビ版と同じ月曜20時代だった。
スタッフ
キャスト
- 寺沢新子:坂口良子
- 金谷六助:志垣太郎
- 富永安吉(ガンちゃん):川口厚
- 島崎雪子:小川知子
- 沼田玉雄:加山雄三
- 貞子:蕭淑美
- 大作:川崎敬三
- 佳代:園佳也子
- 寺沢けい子(新子の母):渡辺美佐子
- 金谷弥吉(六助の父):加東大介
- 金谷とく(六助の母):沢村貞子
- 金谷八重子:中真千子
- 笹井梅子:浜美枝
- 笹井和子:萩原奈穂美
- 松山浅子:テレサ乃木
- 野田アツ子:中村利佳子
- 志保子:塩沢とき
- 武田校長:藤村有弘
- 田中重次郎:藤木悠
- 金太郎:大泉滉
- 長森老人:見明凡太郎
主題歌
放送当時日本コロムビアから発売されたレコードでは志垣ではなく円谷弘之(ジューク・ボックス)が歌唱していた。
主題歌「青い山脈」
1949年公開の映画版以降、歴代の映画・テレビドラマで主題歌として使用されている。
作詞:西條八十
作曲:服部良一
作曲した服部は梅田から省線に乗って京都に向かう途中に車窓に見えた六甲山脈を見て曲想が湧いてきたと語っている。
本来はデュエット曲だが、奈良が1977年に死去して以降歌番組では藤山がソロで歌うことも多かったため藤山の楽曲として知られている。