来歴
1920年7月7日、島根県邑智郡桜江町(現:江津市桜江町)出身。
浄土真宗の寺の五男で、日本大学芸術学部在学中に映画に仏心を注入したいと考え東宝演出助監部に入る。
1943年に海軍第3期兵科予備学生となり、1944年に海軍少尉に任官。廈門島で陸戦隊を率いる。
戦後復員してからは東宝に復職したが、東宝争議を経て新東宝に移った。
1952年に『東京のえくぼ』で監督デビュー。藤本真澄プロデューサーが東宝に復帰したことから1955年に東宝に復帰。森繁久彌主演の喜劇映画『社長シリーズ』や戦争映画を多数手がけた。
1980年にフリーとなり、1990年代からは講演活動に従事していた。
2004年には江津市桜江町の「水の国/ミュージアム104"」内に「松林宗恵映画記念館」が開館した。この水の国ミュージアムでは何度か松林監督作品の上映イベントが行われていたが、2008年に休館し再開は未定となっている。
2009年8月15日、心不全で死去。同年9月10日に東宝スタジオで開催されたお別れ会には司葉子ら芸能界関係者だけでなく安倍晋三元首相も出席した。
2020年に生誕100周年を記念して江津市総合市民センターで展示会が行われた。
人物
自身の作家性よりも脚本の意図に忠実に撮影する職人気質で知られたが、「仏心」は常に心掛けていたという。特に『世界大戦争』は「無常観」をテーマとし、出演した宝田明も松林は同作に格別の想いを持っていることを語っていたと証言し、代表作の一つに挙げている。
夏木陽介によると戦時中の従軍経験から軍人役の演技指導も行っていたという。
戦争映画は1963年の『太平洋の翼』を最後にいったん途絶えるが、これは自身が戦争映画を作り続けていくことに迷いを抱えていたと語っている。久々に手掛けた『連合艦隊』はまさに自身が作りたかった戦争映画だと引き受けたという。
『連合艦隊』に登場する空母瑞鶴の零戦搭乗員は脚本上では青木二飛曹という名前だったが、廈門島で戦死した部下の名前を取って中鉢二飛曹にしたと同作オーディオコメンタリーで言及している。
星由里子は撮影現場では冗談を言うなど現場を明るくしようと努める楽しい人物だったと語っている。
映画賞に恵まれることはなかったが、黒澤明と市川崑が不在となった1960年代後半の東宝では岡本喜八と並ぶエース監督であった。
市川崑とは仲が良く『女王蜂』では応援監督をこなしている。
中井貴一を俳優にスカウトした人物としても知られる。『連合艦隊』のラストシーンに登場する特攻隊員役に相応しい俳優が見つからず困っていた松林は、生前親交のあった佐田啓二の法事で出会った中井をスカウトしたという。
監督作品
映画
- 水色のワルツ(1952年5月15日) ※青柳信雄との共同監督
- 東京のえくぼ(1952年7月15日)
- ハワイの夜(1953年1月8日) ※マキノ雅弘との共同監督
- アチャコ青春手帳第三話 まごころ先生の巻(1953年3月12日)
- 戦艦大和(1953年6月15日) ※応援監督
- 青春ジャズ娘(1953年9月22日)
- 花と波涛(1954年2月10日)
- トラン・ブーラン 月の光(1954年9月21日)
- 慈悲心鳥(1954年11月15日)
- 人間魚雷回天(1955年1月9日)
- 月に飛ぶ雁(1955年4月19日)
- 浅草の鬼(1955年8月14日)
- 風流交番日記(1955年11月8日)
- 天国はどこだ(1956年4月23日)
- あなたも私もお年頃(1956年6月21日)
- 兄とその妹(1956年9月19日)
- 婚約指輪 エンゲージリング(1956年11月20日)
- 美貌の都(1957年3月13日)
- ひかげの娘(1957年6月5日)
- 青い山脈・新子の巻(1957年10月27日)
- 続青い山脈・雪子の巻(1957年11月19日)
- 社長シリーズ
- 社長三代記(1958年1月3日)
- 続・社長三代記(1958年3月18日)
- 社長太平記(1959年1月3日)
- 社長道中記(1961年4月25日)
- 続・社長道中記(1961年5月30日)
- サラリーマン清水港(1962年1月3日)
- 続サラリーマン清水港(1962年3月7日)
- 社長外遊記(1963年4月28日)
- 続・社長外遊記(1963年5月29日)
- 社長紳士録(1964年1月3日)
- 続・社長紳士録(1964年2月29日)
- 社長忍法帖(1965年1月3日)
- 続・社長忍法帖(1965年1月31日)
- 社長行状記(1966年1月3日)
- 続・社長行状記(1966年2月25日)
- 社長千一夜(1967年1月1日)
- 続・社長千一夜(1967年6月3日)
- 社長繁盛記(1968年1月14日)
- 続・社長繁盛記(1968年2月24日)
- 社長えんま帖(1969年1月15日)
- 続・社長えんま帖(1969年5月17日)
- 社長学ABC(1970年1月15日)
- 続・社長学ABC(1970年2月28日)
- 風流温泉日記(1958年8月19日)
- 大学の人気者(1958年9月30日)
- まり子自叙伝 花咲く星座(1959年4月5日)
- 潜水艦イ-57降伏せず(1959年7月5日)
- 夜を探がせ(1959年10月18日)
- ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐(1960年4月26日)
- がんばれ! 盤嶽(1960年10月16日)
- 世界大戦争(1961年10月8日)
- 新・狐と狸(1962年9月29日)
- 太平洋の翼(1963年1月3日)
- こんにちは赤ちゃん(1964年3月20日)
- 万事お金(1964年10月14日)
- てなもんや東海道(1966年8月14日)
- 落語野郎 大泥棒(1967年4月15日)
- てなもんや幽霊道中(1967年9月2日)
- 喜劇 百点満点(1976年10月2日)
- 恋の空中ぶらんこ(1976年12月25日)
- 関白宣言(1979年12月22日)
- 連合艦隊(1981年8月8日)
- ふしぎな國 日本(1983年4月29日) ※製作も担当
- 山下少年物語(1985年10月10日)
- ゴルフ夜明け前(1987年12月19日)
- 勝利者たち(1992年10月10日)
テレビドラマ
- 泣いてたまるか(1966年-1968年)
- 帰ってきたウルトラマン(1972年)
- ライオン奥様劇場 妻の過去(1974年)
- 少年探偵団(BD7)(1975年-1976年)