概要
1961年公開。
第三次世界大戦の勃発した世界を舞台に、市井に生きる人々の姿を通して描く反戦映画。
当時はベルリンの壁構築、翌年のキューバ危機等に代表されるように、東西冷戦の世界的に緊張していた時期であり、映画の中でも反映されている。無駄な刺激を与えないよう資本主義陣営を「連合国」、社会主義(共産主義)陣営を「同盟国」と表記しているが、脚本段階ではアメリカ等実際の国名が表記されていた。
監督は戦争映画、サラリーマン映画で実績を得ており僧侶でもある松林宗恵。プロデューサーに田中友幸。特技監督に円谷英二、音楽に團伊玖麿と戦記物の黄金スタッフで構成されている。また映画『私は貝になりたい』のドラマ版と映画版双方で主演を担当していたフランキー堺が主演を務める。
松林監督は本作のテーマとして「仏教の無常観」を挙げている。
出演した宝田明は「松林監督はこの作品に格別の想いを持っていた」と証言しており、松林監督の代表作に挙げている。
昭和36年芸術賞受賞作。
あらすじ
第二次世界大戦の敗戦から16年。復興していく東京で田村茂吉は記者クラブの運転手をしながら生活の糧を稼ぐ日々を過ごしていた。そんな中、茂吉の娘の冴子が田村家に下宿している高野という青年と結婚する事を告げる。茂吉はどうするべきか思い悩んでいた。
一方、世界は「同盟国」と「連邦国」の二つの勢力に分かれて武力衝突の危機が迫っていた。北太平洋で行われていた同盟国陣営の軍事演習エリアに連邦国の潜水艦が侵入したのを皮切りに、朝鮮半島では小型核兵器を使った紛争が勃発し、各国で核ミサイルの誤射や爆発事故が多発する。
日本では総理が病の身を押して公務し、各国の良識のある人々の努力によって何とか戦闘の危機だけは回避されていた。韓国と北朝鮮で休戦協定が結ばれ、緊張が瓦解されようとしていた矢先、北極海上で発生した戦闘機同士の戦闘によってついに第三次世界大戦が勃発する。
日本にも核ミサイルが発射される警戒が始まり各地で大パニックが起こる中、田村家では冴子と高野の結婚を祝って最後の晩餐が開かれていた。
そしてついに東京に核ミサイルが発射される。
登場兵器
- 無人ミサイル戦車
メイン画像の戦車。戦術核弾頭ミサイルを搭載した12連装ミサイル発射機を備えた無人戦車で、V-107ヘリコプターから遠隔操作される。
- 連邦国軍ICBM
連邦国軍の核ミサイル。運搬車のトレーラーが垂直に起立し発射台となる。
撮影用模型は『怪獣大戦争』で鳥居哲夫の部屋や世界教育社の応接室に置かれたロケットの模型として流用されている。
- 連邦国軍潜水艦SA-42号
連邦国軍の潜水艦。北大西洋で行われていた同盟国軍の軍事演習に侵入、同盟国軍の追跡を受ける。
外観が『海底軍艦』のレッドサタン号に類似しているが同一の模型かは不明。
- F-105戦闘機
連邦国軍の戦闘機。外観はF-101に酷似している。
『ガス人間第一号』のDVD特典映像で現存する撮影用模型が紹介されたが、その際にはなぜか「スーパーハリヤー」と呼称されていた。
- モグ戦闘機
同盟国軍の戦闘機。外観はMiG-21に酷似している。
都市爆破シーン
壮絶なミニチュアワークで造形された全世界の主要都市が核兵器で木っ端微塵に爆破されるシーンは、『ウルトラセブン』の最終回「史上最大の侵略」クライマックスに流用されている。映画よりもこちらで見た人が多いかもしれない。
また『ノストラダムスの大予言』の核戦争のイメージシーンにも流用されたほか、核爆発で溶岩の海と化した東京のシーンは『ゴジラVSデストロイア』の特報にも流用されている。
余談
当初橋本忍による脚本が執筆されたが、東映で同じ題材の『第三次世界大戦 四十一時間の恐怖』が制作されることが決まり、ほぼ同じタイトルの『第三次世界大戦 東京最後の日』として制作を決定。監督には堀川弘通が起用されたが、東映側の脚本が先に完成したため東宝側は改稿を余儀なくされ、最終的には企画を丸ごと立て直して本作に至った。
核爆発のキノコ雲は水槽に絵の具を落とした映像を逆さに撮影している。
同時上映で松林監督・門下の古澤憲吾監督の『アワモリ君乾杯!』ではアワモリ(坂本九)たちが銀行ギャング団を追って東宝砧撮影所に潜入し、本作の撮影現場に迷い込み田村家に突撃侵入したあげく家主のフランキーが玄関で「何だい?!どうなってんのこれ?」とスタッフ共々激昂する場面がある。封切興行で本作を先に観て気休めで『アワモリ君乾杯!』を観た観客達は、「地獄…バッドエンドから天国…ハッピーエンドへひっくり返した」古澤監督の荒業に相当肝に応えただろう…。
本作ではV-107やF-105、モグ戦闘機のほかにSu-7らしき同盟軍哨戒機とYak-28に似た同盟軍戦闘攻撃機が登場。ミニチュアの動きに合わせてカメラもスクロールするなど今まで以上に立体的な画面作りが行われた。この結果海外では実機を飛ばしていると勘違いされ、円谷英二はアメリカで「一体飛行機を何機飛ばしたんだ」と質問されたという。
国内版の予告編は東宝社内には現存しておらず、DVDには海外版の予告編が収録されている。