「カッコつけんじゃねぇバカヤロー!」
「テメェらガタガタうるせぇんだよバカヤロー!」
「舐めてなんかいねぇよバカヤロー!」
演:ビートたけし
概要
ビートたけしこと北野武監督の『アウトレイジ』三部作に登場する主要人物の1人。シリーズ通して殺害回数が最も多い。
フルネームは明かされておらず、年齢も不明だが、外見から恐らく50代半ばから60代前半。
上野出身で、戦後間もない上野の闇市を10代の若さで仕切った韓国フィクサーの張大成とは古くからの付き合いがある。
大学時代はボクシング部に所属しており、その後輩には現マル暴の刑事片岡も在籍しており、その伝手でヤクザと刑事の間で互いに情報を共有している。
『アウトレイジ』当時は関東最大暴力団「山王会」の2次団体「池元組」傘下「大友組」の組長に就任しており、規模は小さいものの水野をはじめ武闘派の部下を率い、シマやシノギも抱えていた。
しかし、事あるごとに親分や敵味方問わず極道組織に振り回されて、貧乏くじばかり引かされる不遇な人物。彼については重要視しておらず、謂わば駒扱い同然の身である。
しかし、彼を甘く見ている人物の多くは彼によって相応の制裁を受けている。
人物
絵に描いたような武闘派ヤクザ。
敵対勢力に対する凄絶な拷問・リンチを率先して行い、直接相手を殺害することも厭わない。
特に、自身の恩人や仲間に対して危害を加えた者は徹底的に追い込みをかけ、最も残酷な手口で殺害する。
だが、部下に対しては優しい面を見せており、失態を犯した部下に理不尽なまでに制裁を下した水野とは対照的に、部下に手を上げることはなかった。
池本組との抗争では、水野に隠れるよう命令し、幹部の1人である安倍には自身の拳銃を渡して逃亡を促した。
かつて敵対していた木村に対しても、彼に対する仕打ちを心から反省し、謝罪するなど道理や筋はきっちり通す。
木村の子分の嶋と小野にもボディーガードは要らないと冷たく接したが、結果的に彼らのおかげで命拾いをしたこともあり、木村に叱責された際には庇っている。
一方、敵対勢力に対しては相手が刑事だろうと大組織の幹部であろうと臆することなく罵声の応酬を繰り広げる。
大友の怒号である「バカヤロー!」「コノヤロー!」はシリーズの代名詞的台詞であり、罵倒合戦は今作の見どころの一つとなっている。
劇中の活躍
直属の親分でもある山王会幹部の池元から、彼の兄弟分でもある村瀬組と「揉めているように」見せるため、村瀬組のシマに事務所を構え、村瀬組の経営するぼったくりバーに組員を引っ掛らせる。
この時点で「兄弟分の若衆から金を巻き上げた」という失態を村瀬組に演じさせた事で、当初の目的は果たせたものの、詫びに来た村瀬組若頭の木村の顔をカッターで切り付けてしまう。
この武闘派故の仕打ちが、泥沼へと発展してしまうこととなる。
復讐を企む木村によって部下を殺害され、揉めているように見えればよかったハズが本格的な抗争へと発展し、自身で手を下したくない池元によって、村瀬を締める役目を押し付けられる。
親の兄弟を締めろという無茶な命令に戸惑いつつも、自ら率先して動き、村瀬に直接手を下す。
池元の命令によって村瀬と抗争したにもかかわらず、詫び金一千万円は全額池元に掠め取られ、そのうえ「親の兄弟を殺した」と責められ破門される事態に陥る。
電話で池元に対し溜まりに溜まった怒りを露わにし、詫びの為にケジメとして指を詰めて関内の元に赴く。
その際に、関内から唆された大友は池元を殺害するが、同じく関内に唆された池元組若頭・小沢との抗争が始まる。
本家の支援を受けた池元組との組織力の差から、配下の組員達が次々と殺害され、徐々に追い詰められていく中で若頭の水野や幹部を逃がすも、部下の石原の裏切りによって結局部下は全員殺され事実上大友組は壊滅。
悩んだ末に自身は旧知の刑事・片岡を頼り、敢えて服役することで難を逃れようとする。しかし、最終的に自分も刑務所内で先に服役していた村瀬組若頭の木村に刺される。その際、片岡は「大友は刑務所で死亡した」と公表した。
…と思われたのだが、
前作から5年後、死んだと思われた大友は実際には生きていた。山王会から狙われるのを防ぐ為にあえて片岡はデマを流していたのだ。
前作と比較すると、人物像は丸くなっており、過去の木村に対する仕打ちや武闘派故の行き過ぎた行為を反省し、模範囚として大人しく刑期を過ごしていた。
しかし、現在の山王会は国の財政にまで手を着ける凶悪組織にまで巨大化しており、警察からの要請で弱体化を狙う片岡によって早期の仮出所を受ける。
出所後、以前より交流のあった張の元へ挨拶に向かうが、後に片岡の仲介で木村と再会し互いに相手への行為を謝罪して和解する。そして、片岡から自分達を破滅にまで追いやった山王会相手に復讐するよう焚き付けられるが、大友本人は既にヤクザ稼業に対して嫌気がさしており、張の世話を受けて堅気の生活に戻ろうとしていた。
だが、それから間も無く自分の部下だった石原に差し向けられたヒットマンに腹部を撃たれて重傷を負わされ、後に自分を助けてくれた木村の子分の嶋・小野が加藤を殺そうとして山王会幹部の舟木に返り討ちに遭い、惨殺される。
この事ででついに山王会への復讐に乗り出すことを決意、木村と兄弟の盃を交わし、共に行動を開始する。
山王会の兄弟分でもある関西最大規模の花菱会の助力を得た後は、木村と共に舟木の拷問を行ったり、裏切り者の石原を誘き出して殺害するなどして山王会への報復を行う。加藤の引退で一区切りついた後は木村からお互いに組を持たせてくれるという話(大友組の復活)を聞かされるも「自分は木村組の若い衆でいい」とヤクザに対する意欲は無く、抗争の手柄をすべて彼に譲った。
その後は一連の抗争を山王会と木村組の手打ちで終わらせた花菱会の策略によって木村組を破門されるが、本人はそれを承知しそのままヤクザから手を洗う。そして、引退した元会長の加藤がパチンコを打っているところに現れ、張会長の腹心の李と共に加藤を自らの手で刺殺し、遂に山王会への復讐を果たした。ところが、この加藤殺しが原因で元の抗争相手である木村組に警察の手が入り、その直後の隙を狙って片岡にけしかけられた加藤の元側近が木村を殺害してしまう。その後、彼の葬儀の場に現れるが、大友を待っていた片岡に暗に花菱会へ報復を行うよう唆される。しかし、一連の騒動の元凶が片岡だったことに既に気づいており、花菱会構成員を始末するためにと片岡から渡された拳銃で逆に片岡を射殺する。
その後、大友は日本を離れ張の伝手でそのまま韓国へ渡って行った。
数年後、韓国の済州島に渡った大友は張グループに所属し、用心棒として済州島の歓楽街を裏で仕切る。そして、新たな舎弟として張グループに所属する市川が加わり、事実上兄弟関係として行動する様になる。今作ではサングラスを常に着用する様になり、マフィアとしてのイメージが強くなっている。
物語序盤で前作より更に規模を拡大し、かつての山王会を乗っ取った花菱会の幹部の花田が張グループのホステスに手を出したことから徐々に大友らとの抗争事件に発展する。
更に、東京では張大成会長が花田の手下の丸山らに襲撃されるに至り、度重なる暴挙に怒りを募らせ、前作の抗争に乗じて自分を亡き者にしようとする花菱への報復を決意。張の部下でありブローカーのゴンを通じて偽造パスポートを入手し、日本へと渡る。
しかし、帰国早々に片岡の元部下でもある新マル暴繁田らによって加藤、木村、片岡殺害の容疑で警察に拘束されてしまう。それでも張会長の根回しによって釈放され、遅れて日本にやって来た市川ら若衆と合流すると、手始めに山王会の白山たちの手引きで木村組の組長である吉岡以下数人を銃殺する。しかし、その後野村が差し向けた刺客の韓国人ヒットマン達と撃ち合いになり、二人の若衆を失い、市川と二人だけになってしまう。ヒットマンが持ち込んでいたM4カービンで武装し、ビルの屋上駐車場にて若頭の西野、補佐の中田らと対面し、花菱会幹部の出所祝いパーティーで出てくる新会長の野村を狙う様依頼される。しかし予定と異なり、野村が出席しないとなり、西野自身は襲撃を止めさそうとするが、会場に市川と共に乗り込んでM4を乱射し、その場にいた花菱会構成員の殆どを殺害する。その後も西野の陰謀に協力する形で約束通り連れて来られた野村を生き埋めにして轢殺させ、同じく西野の手引きでSMプレイ中の花田の元に乗り込み、彼の口に爆弾を詰めて爆殺する。
しかしこれらの行動が原因で、張会長に対し警察・花菱の両方から圧力がかかり、この事態を重く見た李は、前作で弟分の木村を殺害した元山王会組員でもあるスクラップ工場長ら二人を手に掛けた後、大友を殺害するという決断を下す。最後は李から「これ以上会長に迷惑かけないで下さい」と銃を向けられるが、それに対しケジメは自分で付ける答え、「会長に宜しく」と恩師でもある張に遺言を言い残し拳銃自殺を遂げた。
最後の最後に大友は、今までの事件で手にかけてきた部下や親分、殺された組員、舎弟らに対するケジメをつけ、ヤクザとしての人生に幕を下ろした。