概要
北野武の16本目の監督作品であり、前作の続編にあたり、彼のキャリアの中では初めての続編作品。同じくR15+指定として年齢制限を受けている。
ヤクザの抗争が主軸であった前作に対し、今回は張り巡らされた計略の中で前作の勝者が徐々に追い詰められていく情景が緻密に描かれている。
前回と同じく、見るからに過激な暴力や拷問の場面も多い。ただし、会話シーンが多めなこともあり、暴力シーンそのもの数(とは言っても内容は相変わらず超がつくほどグロテスクだが)は比較的少なめとなっている。また、一部のキャラクターのフルネームが、セットの小道具で明らかにされている。
なお、当初は『アウトレイジ2』という題で、2011年の秋ごろに公開する予定だったが、東日本大震災の影響から、制作が延期となっていたが、その後、クランクインしたことが報告され、ようやく無事に完成に至った。キャッチコピーに「全員悪人 完結。」とある通り、今作では物語の結末が描かれている。前回と同じく劇中には常に罵声が飛び交っている。
ちなみに、前述にもあるように当初は単に『アウトレイジ2』というタイトルだったが、『もっと格好良い響きにしたい』というたけし自身の意向で、『前作を超えた作品にしよう』という願いも込められたこのタイトルに落ち着いている(ビヨンド(Beyond)は、英語で『~を超えて、~の向こうに』という意味を表す前置詞・副詞)
…もっとも、これが原因でたけしが次作のタイトルを「アウトレイジ3」と勘違いしたかどうかは定かではないが。
一旦は本作をもって完結とされる予定だったが、2016年12月に更に続編が作られることが発表。
そのタイトルも『アウトレイジ最終章』で、本作で生き残ったキャラクター以外にも新キャラ数人を迎え、真の完結を描くことが明かされた。
同作は翌年2017年公開され、正式にアウトレイジシリーズの物語に終止符を打つこととなった。
あらすじ
5年前、ヤクザ界での生き残りを懸け壮絶な権力闘争に明け暮れた暴力団山王会は関東の頂点を極め、政界にまで勢力を広げていた。彼らの壊滅を目指す刑事の片岡は、関西最大の花菱会と対立させるべく策略を練る。そんな中、遺恨のある木村に刺されて獄中で死んだはずの大友が生きていたという事実が持ち上がる。その後、出所した大友だったが……。(シネマトゥデイのサイトより引用)
登場人物・キャスト
前作に登場するキャラクターは演者ごと太字+☆で表記。
大友と木村一派
大友(演:ビートたけし)☆
元・大友組組長(詳しくは、前作のページも参照)。上野出身。
前作で木村に刺殺されたと見られていたが、実は無事に生き残っている。
前回での彼に対する激しい仕打ちに対しては深く反省しており、このため彼が負傷させたことを黙っていた。模範囚として大人しく刑期を過ごしており、前作に比べ性格はかなり丸くなっている。
山王会への報復を焚きつける片岡や花菱会の西野、中田らと罵声の応酬になることはあったが、それ以外では木村に責められる小野と嶋を庇うなど、前作で微かに見られた部下・仲間想いな一面が多く見られる。
前回までの経緯から極道社会への復帰や山王会への復讐にも興味を示さなかったが、片岡から『加藤と裏切った石原にきっちりケジメをつけて下さいよ!』と迫られてその熱意に負けたため、結局は釈放されることになった。
出所後に木村と再会、刺したことを詫びる木村に「あんたにした事に比べればどうって事ない」と謝罪し無事和解する。
当初はあまり乗り気ではなかったが、命の恩人であった嶋と小野が殺された事や、兄弟分の関係になった木村の意向を優先して、山王会への復讐を決意する。その際、木村と兄弟の盃を交わす。
彼らに対する復讐こそは果たしたものの、木村とは異なりヤクザ界に戻る気にはならず、また花菱会が木村に大友を形式上破門させたこともあり韓国に渡るが、花菱会の傘下に加わり木村が組を設立した際に祝辞を贈るなど、その後も木村とは交流を続けていたことが暗示されている。
その後密かに帰国し、引退した加藤を刺殺するが、加藤派の生き残りに木村が暗殺されてしまう。
一連の出来事を裏で手引きしていた元凶の存在に気づき、最後のシメとなる行動をとった(詳細は後述)。
木村(演:中野英雄)☆
元・村瀬組若頭(詳しくは、前作のページも参照)。
前作のラストで大友を刺して重傷を負わせたが、片岡から全てのいきさつを知らされると、これまでのことを謝罪し、大友自身も謝罪したことによって、無事に和解を果たした。
出所後は、バッティングセンターを運営している。自分の組を破滅に追い込んだ山王会への復讐を狙っており、部下として引き取った嶋・小野との死別を機に、花菱会へ赴く。
そこで大友が若西野、中田と一触即発の状態になるが、自身の小指を食いちぎって場を収める。治療後、大友と兄弟の盃を交わし、大友を「兄貴」「兄弟」と呼び慕うようになる。
花菱会のヒットマンや片岡の協力を得て見事に復讐を果たしたものの、当の片岡や花菱会の面子にとっては単なる捨て駒に過ぎなかった。
一連の責任を取る形で、大友との関係を形式上解消せざるを得なかったが、ようやく花菱会の下で自分の組を持つことができた(しかし、その後も最後まで大友とは密かに交流を続けていたことが示唆されている)。
しかし実際には、先述にもあるように花菱会の関東へ勢力を伸ばすきっかけとして利用されただけに過ぎず、片岡の策略により加藤の暗殺を自分が仕組んだことに仕立てられた挙句に、間も無く殆どの部下が片岡率いるマル暴の刑事に逮捕され、それから間もなく片岡に煽られた加藤の取り巻きに暗殺される。
石原とは同じく、前作とのギャップが大きく話題を呼んだキャラの1人であり、今回は前作では描かれなかった、男気あふれる一面や仲間思いな一面が大きく表れている。
また演者の中野英雄氏は今作への思い入れが強く、次回作の「アウトレイジ最終章」にも「双子の役で出たい」と希望したという(しかし残念ながらアウトレイジシリーズは「前作で死んだ人は次作には登場しない」という決まりがあり、再登場は叶わなかった)。
嶋(演:桐谷健太)
木村の舎弟で、バッティングセンターの店員を務めている。
村瀬組組員の子供に当たり、出所後に木村が引き取った。拳銃を所持している。
純真無垢な性格で、常に自分の親分である木村や大友に忠実であろうとする。
大友のボディガードとして行動を共にするが、結局大友は石原の差し金に襲撃されてしまう。木村からも叱られたことから罪悪感から小野と共に山王会の下へ自ら復讐に出るが、舟木らから激しいリンチの返り討ちを受けて死亡。遺体は2人仲良くゴミ処理場に打ち捨てられた。
態度の悪いバッティングセンターの来客や、食べかけのカレーライスを片付けようとするウェイトレスに怒鳴りつけたりするなど子供っぽく、自らの感情に流されやすい傾向があるが、どちらにも落ち度がある為山王会関係者のように理不尽な暴力は決して振るわないなど良識もある。
演者の桐谷からは『このシリーズでも珍しくピュアなキャラクター』と評されている。
小野(演:新井浩文)
嶋と同じく木村の舎弟で、バッティングセンターの店員。
村瀬組組員の子供に当たり、出所した木村に引き取られた。
嶋よりは比較的大人しい性格だが、態度の悪い客に怒鳴ったり、大友を乗せたエレベーターがなかなか来ず大声を上げたりするなど、時々感情を暴走させるが、嶋と同じく他のヤクザと違って理不尽な暴力は振るわない。
繁田が自分達のことを棚に上げて「ヤクザなんてゴミ以下」と言われた際は「デカだって似たようなもんだろ」と言い返した。
大友の潜伏先のホテルのレストランで食事をしていた最中に、石原の策略で大友が負傷したために、嶋と一緒に、山王会へ仕返しに行こうとする。
舟木たちから悲惨な目に遭わされても、最後まで屈しなかったが、最期には嶋と同じ運命をたどることになった。
木村は彼らに厳しく接しつつも実の息子のように可愛がっており、木村組設立後の事務所には彼らが仲良く映っている写真が木村の机の片隅で大友との兄弟盃と線香、そして彼らの好きだったタバコとともに、大事に飾られていいた。
大友も当初は2人を突き放したものの、彼らのおかげで一命を取り留めたため、木村に叱責される2人を庇った他、彼らの死をきっかけに当初乗り気でなかった山王会への復讐を決意することになった。
山王会本家
加藤稔(演:三浦友和)☆
山王会会長(詳しくは、前作のページも参照)。
前作において、先代会長・関内を殺害し、(その犯行を池元組若頭・小沢を犯人に仕立て上げた上で)山王会本家若頭から会長の座にのし上がる。
石原など有力な部下たちのおかげで徐々に実力を延ばし、政治や経済の世界にも大きな影響力を持つまでに組織を巨大化させるが、その反面極端な実力主義・拝金主義のせいで、どれほど組に貢献したのかに拘らず、業績や建前ばかりが重視されて、一部のベテランの幹部・組員にとって不利な環境を作る。
また、先述のように世間体ばかりを気にする保身的な性格に加え、会の集まりやパーティーでも酒や料理を少したりとも振る舞わないなど、自分が一度無駄だと思ったものを一切排除する一面などから一部の古参組員から反感を買い、これが全ての引き金となる。
花菱会の面子に自分が会のトップに上り詰めるまでの経緯を突き付けられると、それを石原の仕業と吹き込まれて疑心暗鬼に陥ってしまったことがあだとなって、舟木の声の録音データの流出で自身の秘密がバレ、(人格の問題から元々それほど人望がなかったことも災いして)組内での信頼がガタ落ちとなった上、取り巻きの組員が次々と花菱の差し金で始末されたことで完全に立場を失い、引退に追い込まれる。
その後は仕事もせずパチンコ店に入り浸っていたところを遊客にまぎれた大友と店員になりすました李によって口を塞がれ、静かに刺し殺された。
石原秀人(演:加瀬亮)☆
山王会若頭であり、元大友組の構成員(詳しくは、前作のページも参照)。
同じく、前作において、親分の大友を裏切り、加藤派に寝返りを打ち本家の金庫番の座に就く。株の売買などの合法的な商法を含めた様々な手段で利益を生み出した成果により、本家若頭に抜擢され加藤の有能な補佐役となる。
様々なビジネスで山王会に貢献する一方で実力に見合わないと判断した者、加藤や自分の意にそぐわない言動を取る者には一切容赦しなかったり、例えベテランだろうと下にいる幹部や組員を見下すなど、立場を鼻にかけた言動を取る。
加藤同様実際の人望はゼロに等しく、後に襲撃された際は、部下は誰一人として石原を守ろうとせず、我先にと逃げ出そうとするような有様であった。
前回のクールなインテリヤクザのイメージとは異なり、感情的になるシーンが比較的増えている。演じた加瀬亮氏は前作の石原を「ネチネチした蛇みたいな男」、今作の石原は「常に吠えている子犬」と称した。
その本性は姑息な小心者であり、まさに加瀬氏の言う通り「弱い犬ほどよく吠える」を体現した男。
大友が生きていた事実が発覚した際には、元上司である彼の恐ろしさを熟知しているが故に片岡を殴り倒すほど激しく取り乱し、その後も執拗に大友の命を狙い、小野達を死に至らしめる遠因を作る。その一方で陰て大友を「チンピラ」呼ばわりする暴挙に出る。
実は前作においても、自身の横領が露見仕掛けた際に眼鏡を振り落とすほど動揺し、村瀬組の組員を暴行するシーンがある。
最終的には布施を中心とする花菱会のメンバーが自身の出世までの経緯を上手いこと利用したことから、加藤より不信感を抱かれるようになる。
大友と木村が和解している事実を知らず、加藤に騙されるがまま、大友を始末するために木村のもとへ向かうが、逆に部下を全員射殺され連行されてしまう。大友と再会し、恐怖から小便を漏らして震えながら命乞いをするなど、前作のクールなイメージが崩壊するほどの醜態をさらしたが許される訳もなく、大友により椅子に縛り付けられ、ピッチングマシーンの前に置かれて顔面にボールをを受けて死亡した。
加瀬氏は石原の殺され方については「笑えばいいのか怖がればいいのか分からない」とコメントした。
舟木昌志(演:田中哲司)
山王会幹部。
生前の関内のボディーガードを務めていた一人で、彼の死の真相を知っており、加藤たち二人に打ち明けると、彼らの部下として出世を果たした。
山王界きっての武闘派(大友組で言うならば椎名桔平演ずる水野や阿部に該当)。加藤たちの数少ない忠臣の1人でもあり、彼らに逆らう者には容赦なく制裁を加える。
大友が襲われた仕返しに乗り込んできた嶋と小野を残酷に殺害したが、大友と木村からの復讐に遭うことになる。最初は木村から殴られても笑みを浮かべ報復を仄めかしていたが、工具のドリルで顔を貫かれる組員の姿を見せられて屈服し、加藤の関内暗殺を暴露した(なお、このときの告白は録音され外部へ流れ出、加藤派が没落する決定打となった)。
加藤の元に彼の血痕が付いた袋が届いたということ以外、その後の行方については作中では明記されていないが、少なくとも加藤の引退時には、一応表向きは死亡扱いとなっている。
富田(演:中尾彬)
山王会幹部。
古参の幹部の一人で、加藤と石原にタメ口で話している場面もある。新体制に変わってから実績が上がらないことを理由に、石原から粗雑な扱いを受けている。長年組のために力を捧げてきたのにもかかわらず、若者が幹部として台頭する組の現状を快く思っていない。
先代会長・関内のボディガードだった舟木が関内を守れなかったにもかかわらず、処分されず出世した事に疑問を持ち、加藤と舟木が共謀して関内を殺害したのではないかと推測している。
加藤を引退させ新しい会長になるよう煽る片岡や同じく新体制に不満を持つ白山たちの後押しもあって、兄弟分の花菱会若頭の西野に相談して協力を要請するが、弱気な態度を取ったことから、花菱会に見限られた上に、白山と五味にも裏切られ、加藤たち本人に計略が漏れてしまう。
目に涙を浮かべての悲痛な命乞いも届かず、舟木に容赦なく始末された。
今作で一番可哀想な人。
白山広(演:名高達男)
山王会幹部。
古参の幹部の一人で、富田の兄弟分。彼と同じ新体制になって以降、幹部会で石原から富田共々罵倒されるなど粗雑な扱いを受けている上に、自分よりキャリアの浅い石原が上役に居る事に不満に思っている。
ややとぼけた一面があるものの、富田に加藤への謀反を促すような発言をする一方で、片岡の煽りに対しては「ヤクザの筋が通らない」と批判するシーンにもあるように、自己保身となると頭が非常に冴えわたる狡猾さを持ち合わせている。
富田の内通が発覚すると、手のひらを返したように彼を見殺しにし、表向きは加藤と石原に媚びへつらうが、その後も内心では加藤たちに対する不満は変わらなかった。(ただし、富田に一応は謝罪していたり、後に富田の話題が出た時には苦い表情を浮かべるなど、富田を裏切らざるを得なかった事には多少は罪悪感は感じていたようである。)
その後、石原から八つ当たり同然に処分されそうになると、遂に加藤達を見限り花菱会の協力を経て反加藤派の中心人物となり、彼が組を締め出されてからは新たな会長となったが、本意ならずも結局は花菱会の言いなりに過ぎず、最終的には花菱会に勢力を完全に奪われてしまう。
少しずつ勢力を伸ばしつつあった木村が花菱会に利用されていることをハッキリと見抜いているものの、抗争に巻き込まれることを恐れてとりあえずその場の成り行きを見守ることにしている
ちなみに、山本を殺害した犯人として検挙されたチンピラは彼の手下であり、彼らに対する粗雑な扱いを暗示したシーンになっている。
五味英二郎(演:光石研)
山王会幹部。
古参の幹部の一人で、富田、白山の兄弟分。
富田や白山と同じく加藤たちからの粗雑な扱いを不満に思いつつも、白山に比べて主体性がない上に流されやすく無責任な行動が多い。
冨田の死後は、白山の後追いをする形で行動しており、加藤の関内先代会長暗殺の事実が発覚すると、その行いに激怒した組員と寄ってたかって恫喝した。加藤が組を締め出された後は、山王会自体が実質上花菱会の傘下に加わる形にはなったが石原の後任として本家の若頭の座に就く。
関内(演:北村総一郎)☆
初代山王会会長。
前作のラストで、笑いながら加藤に射殺された。本作でも、一部にその遺影が映っているシーンがある(ただし、前作で死亡しているため今回は台詞なしで遺影のみの出番)。
花菱会
布施(演:神山繁)
花菱会会長。山王会前会長の関内とは兄弟の盃を交わした仲であり、加藤が会長に就任した現在の山王会の現状に内心で嫌気がさしている。
軽妙な喋り方や初対面の人物に対する愛想の良さから一見気さくで優しい人物のように見えるが、その本性は、自分の利益のためなら汚い手段に出ることも厭わないマキャベリストタイプの極悪人。大友・木村の山王会への復讐に身元が割れてないヒットマンを協力させる。関東への勢力拡大を狙っており、富田に力を貸そうとしたのもその一環にすぎない。また非常に口が巧く、石原の過去につけ込んで言葉巧みに加藤を追い詰めていき、遂には加藤・石原一派の壊滅に追いやり、最後は大友や木村の活躍をダシに、山王会も自分の配下に組み込む形で関東進出に成功する。
時期は不明だが、花菱会の関東進出後に花菱会会長の座を娘婿の野村和夫(演:大杉漣)に譲り引退する。が、それが原因となって次作での抗争に繋がってしまうこととなる……
演じた神山氏は2017年に亡くなり、本作が最後の映画出演となった。神山氏が演じた布施会長の引退後の動向は次作でも語られていないため不明。
西野一雄(演:西田敏行)
花菱会若頭。
計算高い性格で組織の為に知略を働かせる頭脳派ヤクザだが、怒れば相手を激しく怒鳴りつける一面もあり、話し合いが一向に進まない事に苛立った大友を威嚇するシーンにもある様に、会長の布施に敬意を払わない人間には容赦がない。
山王会の冨田とは兄弟分に当たり、山王会内部でのスキャンダルの情報を握っていたが、彼の勢いの弱さを知るとすぐに見限った。しかしながら彼の兄弟分であった白山と五味には後で力を貸し、2人を言葉巧みになだめすかして自分の配下に置いて花菱会の進出に利用し、名目上は一連の出来事の責任を負う形で、山王会をも手玉にとって花菱会の勢力拡張を成し遂げるも、次回作ではとある大きな壁にぶつかることとなった。
演者の西田氏は、罵詈雑言合戦の撮影は楽しかったと感想を述べた。
なお、『笑ってはいけない熱血教師』では本作のBD・DVD発売告知映像が(オンエア限定で)流されたが、オチとして田中にタイキックを宣告した。
「オイコラ田中ァ!ワリャタイキックじゃボケェ!」
中田勝久(演:塩見三省)
花菱会若頭補佐。
その強面に違わない生粋の武闘派で、怒ると同じ組の者までも震え上がらせる。『帰ろう』と言い出した大友を、西野と共に恫喝して一触即発状態に陥ったため、木村に指を噛みちぎらせて、謝罪に追い込ませた(実は、相手を脅しつけて怖がらせる事で、自分の思い通りに動かす打算的な手段でもある。)。
表面上は善意で誘ったことになっていたが、自分の親分の敵である大友と木村が離反する可能性を考慮してか一連の事柄にケリをつける名目で、自分の組を持たせる代わりに大友との関係を絶たせるため、「大友出すんが嫌なら、お前腹切るなりなんなりせんかい!」と恫喝するなど、最後まで手駒としてしか見ていなかった。
たけしは今作が悪役初挑戦となる塩見氏の演技を出演者の中で一番面白いと評しており、塩見氏も「道具(ヤクザ用語で拳銃のこと)貸せ!」という台詞について「こんな台詞今まで言ったことない」と嬉しそうに語ったという。
城(演:高橋克典)
花菱会組員。
やり手のヒットマンで、警察にも身柄が未だに特定されていない。大友や木村に協力して、加藤の取り巻きを静かに華麗に葬り去る(口が裂けても「いつもの特命係長」だと言ってはいけない)。
非常に大人しい性格という設定の為、本編では(比喩では無く)本当に台詞が無いが、その代わりなのかDVDの特典でナビゲートキャラクターで登場した際には打って変わって饒舌になっている。
また、高橋氏がたけしに「出してほしい」と逆オファーして出演したようで、「セリフが無い役しかない」と言われても「なくてもいい」と答えるほど熱意があった模様。
張グループ
大友が身を寄せている在日コリアンのフィクサー。日韓を股にかけて活動している。かつて戦後の上野の闇市を十代の若さで仕切っていた過去を持ち、同じ上野出身の大友とは昔馴染みの関係。ちなみに演者の金田氏は俳優ではなく、たけしの友達であり本業は在日コリアン向け新聞社「統一日報」の経営者(ちなみに本作での設定と同じく、本人も金時鐘という韓国名を持つ在日コリアン)である(これぞまさしく友情出演?)。
あまりの貫禄(ヤクザの組長の役が多い白竜が子分役でも何の違和感もない)から、演者の金田時男氏が何者なのか良く知られていなかった頃には「本物が出演したのではないか?」と思った人も少なくなかった模様。
出所後に大友を匿っており、社会復帰の支援や自身の組織への加入を勧めていた。大友が山王会への復讐のために大阪の花菱会へ向かう際は大友を通じて木村にも「(花菱会に)利用されるなよ」と言伝をしていた。
今作において、最後まで大友と木村の味方であった唯一の人物であるが、次回作では大友たち共々予想だにしない出来事に巻き込まれる結果となる。
李(演:白竜)
張の側近。大友が出所した際に、車で迎えに来た大柄な男。彼が加藤に復讐する際、パチンコ店の店員に扮して手を貸した。今作での出番はこの2回程度で、本格的な活躍は次回作となる。
警察
片岡(演:小日向文世)☆
組織犯罪対策課に所属する刑事。また、大友の大学時代のサークルの後輩でもある(詳しくは、前作のページも参照)。
前回のラストで出世を果たすも、今回ではより一層欲深い一面が強調されている。前回のように、暴力団とは秘密裏で関係を持ちつつも、本作では結果的に追い込むことを狙っているのを口実に暴力団の世界に立ち入って、更なる自分の手柄による出世を目的として、様々な陰謀を張り巡らせる。そのため、たとえその過程でどれほど死者が出ても、自分の手柄しか考えていない一面が描かれている。
手柄を立てて更に出世することを目当てに山王会潰しを企て、冨田とその手下を扇動して謀反を起こそうとさせるもあえなく失敗。しかし、今度は山王会への復讐を誓っている木村とそして関西のライバル勢力である花菱会の面子と共謀する。乗り気でない大友を巻き込むため山王会の事務所に拳銃を撃ち込み、大友の襲撃と嶋・小野の死の遠因を作り、ようやく大友が復讐を決意したため、見事に山王会を追いやった。
しかし、それだけで満足せず更なる昇進を狙って、今度は加藤の手下だった組員を煽って木村を殺害させ、それを大友の仕業に見せかける一方で、大友には花菱会の陰謀だと吹き込んだ上で、再び山王会と花菱会の抗争を勃発させるきっかけを作り、葬儀の場で花菱会の面子を葬り去ることを計画する。しかしその計略を見破った大友により、自分が渡した拳銃で射殺されるという、文字通り自業自得な最期を遂げた。
自らの名誉と利益のために他人を利用しては裏切るのを繰り返した報いを受けたといっても過言ではないだろう。
また、舞台挨拶にて「一番悪い奴は誰か?」と質問された出演者はほぼ全員が片岡の名を挙げた。
繁田(演:松重豊)
片岡の後輩のコワモテ刑事。
厳つい容貌にもよらず謹厳実直な性格で、(片岡の指示で渋々とではあるが)調書の偽造を行ったり、大友をはじめとするヤクザ連中を必要悪と見做せず、彼らの人間性など考慮もせず十把一絡げに「ゴミ以下」と手酷く罵倒するなど、「清廉潔白な正義の味方」とは決して言えない部分もあるものの、人の道を踏み外した外道揃いの作中において珍しく「(一般論的に)まともな感性」を持っており、「全員悪人」を謳う本シリーズの主要な登場人物の中では、おそらく最も善人の側に近い人物でもある(あくまで「近い」だけで清廉潔白とは言えないが)。
先輩である片岡に対しては強く反発できないでいるものの、自分の出世のためには手段を選ばず、ヤクザと癒着することもいとわない片岡の方法には疑問を感じており、時々片岡を諌めるシーンが散見される。
片岡と違い、「まともな」警官らしい正義感を持つが故か、ヤクザに対してはかなり辛辣な態度を崩さず、反省した大友のことも信用していない節もあった。
また、「ヤクザなんてゴミ以下」と言った際、小野に「デカだって似たようなもんだろ」と至極真っ当な指摘をされた際は八つ当たりしたものの、結局言い返す事は出来ず、自身の立場へのジレンマは常に感じていた模様。
その後も内心では片岡の言動に不快に感じつつも行動を共にしていたが、終盤には木村が死亡しても大友を利用し続ける彼の厚かましい態度についていけなくなり、木村の葬儀の場で今までの不満と怒りを爆発させ彼を見限る。
その際、片岡から「俺と一緒なら出世できたのに」と皮肉られても、「一生ヒラでいいっすよ!」とだけ言い残している。
山本
前回のラストで片岡が後任の刑事として紹介した刑事。しかしながら、調子に乗った言動をするようになったために加藤と石原の逆鱗に触れ、彼らの手によってあっけなく始末される。
プロローグのシーンで、海中に沈んだ自動車の中で、政治家の愛人であったホステスと共に遺体となって発見された。
彼の死は表向きには「ヤクザの女を寝取り、それが原因で殺された」という事になっており、この事に繁田は片岡に対して文句を言うが片岡は気にもしなかった。
階級や肩書きは不明だが、繁田は「山本さん」と敬称付きで呼んでいた。
スタッフ
監督・脚本・編集 | 北野武 |
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音楽 | 鈴木慶一 |
撮影 | 柳島克己 |
照明 | 高屋齋 |
美術 | 磯田典宏 |
録音 | 久連石由文 |
キャスティング | 吉川威史 |
助監督 | 稲葉博文 |
製作担当 | 里吉優也 |
衣装 | 黒澤和子 |
大友衣装 | 山本耀司 |
装飾 | 柴田博英 |
メイク | 宮内三千代 |
編集 | 太田義則 |
記録 | 吉田久美子 |
音響効果 | 柴崎憲治 |
プロデューサー | 森昌行、吉田多喜男 |
ライン・プロデューサー | 小宮慎二、加倉井誠人 |
アソシエイト・プロデューサー | 川城和美、松本篤信、大西良二、久松猛朗 |
製作 | 「アウトレイジ ビヨンド」製作委員会(バンダイビジュアル、テレビ東京、オムニバス・ジャパン、ワーナー・ブラザース映画、オフィス北野) |
配給 | ワーナー・ブラザース映画、オフィス北野 |
(Wikiより転載)
余談
本作に出演した新井浩文が後に逮捕された事は周知の通りだが、後にたけしは天皇(現在の上皇)即位30周年記念式典で過去に園遊会に招待された際「あなたの監督した映画を見ています」と声をかけられたことに触れ、「天皇陛下のご覧になった映画が不届き者を2人も出した『アウトレイジ』でないことを祈るばかりです」と(次回作に出演した後、同じ様に逮捕されたピエール瀧も含めつつ)やらかした新井を皮肉りながらネタにした事がある。
関連タグ
相模原障害者施設殺傷事件:この事件の初公判の日、後に死刑判決を受ける被告が自身の小指を噛みちぎるパフォーマンス(本人曰く「言葉だけでは謝罪の気持ちが伝わらないと思った」)を行ったが、これは上記の木村(演:中野英雄)の演技に影響されたものだという。