概要
『長井戸の怪(ながいどのかい)』で知られる新潟県の佐渡郡相川町金泉村(現在の佐渡市)に伝わる怪異譚に登場する妖怪。
大御所著の妖怪図鑑ではこの名で紹介されており、『まんが日本昔ばなし』では「海の中の蛇の目傘」という題で紹介している。
伝承によればある雨の日に佐渡郡金泉村に住んでいた八蔵という男が、長井戸と呼ばれる海域に舟を出して釣りを楽しんでいた時に何気に海の中を見ると1本の美しい蛇の目傘が沈んでいた。
傘を手に入れようと考えた八蔵は服を脱いで海に潜ろうとすると、何処からともなく「しばらく待て」と声が聞こえて来た。不思議に思い周りを見渡すが誰もいない。空耳かと思いまた潜ろうとすると、今度はさっきよりも大きな声で「しばらく待て」と声がした。
気味が悪いと思った八蔵が佇んでいると、海中の傘がひとりでに開いた為、驚き急いで船をこいで逃げ出すと、傘は海上に浮かびあがり、髪を振り乱した女の姿に変化し、物凄い勢いで追いかけてくる。
八蔵は夢中で舟を漕ぎ、何とか命からがら陸へ逃げ切ると、背後から「惜しいことをした、逃がしてしまった」と声が聞こえて来た。
八蔵が体験したこの恐ろしい出来事は村中に広まり、中には自分も同じような体験をしたという者もちらほらとみうけられたという。
ある日村の力自慢の長吉という男がそんな噂を聞きつけ、自分がそいつを退治して見せると意気揚々と長井戸へ向かっていったが、一向に化け物は姿を現さない。さては自分の力に恐れをなしたかと長吉は得意気になっていると、まるでそれを見越したかの様に途端に雨が降り出し、海は大荒れとなり、その波の中から件の怪女が姿を現し襲い掛かって来た。
流石に長吉もこれには肝を冷やし、無我夢中で逃げることしかできなかった。そしてこの事が元で長吉は寝込んでしまい、それから間もなくして命を落としたという。