概要
江戸川乱歩が1925年に発表した短編小説で、明智小五郎が登場する二番目の作品となる。倒叙形式の物語で、中盤までは主人公で真犯人である苦学生・蕗屋の犯罪計画が描かれ、終盤は明智が心理テストを利用して蕗屋を追い詰めていく様が描かれている。
登場人物
蕗屋誠一郎
物語の実質的な主人公。頭脳明晰で勤勉だが、学費を稼ぐために内職に時間を取られ学業や読書もままならない自らの境遇に強い不満を抱いていた。親友である斎藤の下宿先の大家である老婆が大金を貯めこんでいる事を知り、老婆を殺害して金を強奪する計画を立て実行。事件を担当した予審判事笠森の心理テストも余裕でクリアしたかに見えたが・・・。
斎藤勇
蕗屋の友人。下宿先の老婆が大金を貯めこんでいる事を知り、それを蕗屋に話してしまった事が事件の発生を招いた。蕗屋とは対照的に小心な性格で、老婆の死体を発見後に蕗屋が意図的に半分残した隠し金に手を付けたせいで逮捕され、不用意な供述を繰り返して自らを追い詰めてしまった。
笠森判事
若年ながら優秀な予審判事。心理学を齧っており、事件の容疑者と定めた斎藤と蕗屋に心理テストを施す。
「D坂の殺人事件」以降数々の事件を解決し世間で名を知られるようになった素人探偵。心理テストの結果を見て蕗屋こそが老婆殺しの真犯人と見定め、彼に対し心理テストを応用した策を施す。