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人間豹

にんげんひょう

江戸川乱歩の小説。『講談倶楽部』昭和9年1月号~10年5月号。

概要


半獣半人の怪人物・恩田が父と称する老紳士と協力し目を付けた好みの女性達を次々と殺戮して世間を恐怖のどん底に叩き落し、警察をもその狡知と人間離れした身体能力で翻弄し嘲笑う。

恩田を追う名探偵明智小五郎は恩田に化けてアジトを探ろうとするが逆に恩田親子の罠にはまり袋叩きにされそうになるわ、逆に自分に化けた明智のふりをして自宅にやってきた恩田に夫人の文代を拉致されるわ、恩田の雇ったチンピラに監禁されるわと終始恩田に劣勢を強いられる。

どうにか監禁場所から脱出した明智は土壇場で文代夫人を救出し、ついに恩田を追い詰めるがアドバルーンでまんまと逃げられてしまい、何故恩田の様な半獣半人の怪物が生まれたのか全く説明されずじまいと言う不完全燃焼なオチとなっている。
恩田の出自については人々は人獣交婚の子と噂したが憶測に過ぎず、その秘密を唯一握る恩田父が自害した今知るすべはないと地の文で語るに留められており、恩田が逃走に使用したアドバルーンが発見されるも本人は見つからず、一年経過後も目撃情報や同様の事件の発生がないのでとりあえずの解決としている。

人間離れした身体能力や終始明智を翻弄し続け生死不明で終わっている点などから乱歩作品最強怪人に推す声もあり、ラストで大空に消える際の哄笑は明智にとっても本人曰く一生のトラウマとなっている。一方で最初の犠牲者がやけくそになって檻を開けた本物の豹に襲われた際は善戦するも劣勢に陥っており、地の文でも本物の野獣には敵わないと書かれている。
頭脳面では女の子が絡むと感情的になる傾向があるがそれ以外の場面では冷静で知恵も回る。学者らしき父親譲りだろうか。
女装も披露しているが本人が赤ずきんの狼のように犠牲者を驚かせるために自ら明かすまでは見破られておらず、浮浪者に変装した際も警察や明智の目を掻い潜っている。
父子の絆はなかなか強く、父親は病的な豹マニアでありながら息子が豹に襲われた際には涙ながらに射殺している。息子は父親の言葉には素直で、愛豹を殺さざるを得なかった父親が許可するまでは自制している。なお、もう止めないから好きにしていいと言われた恩田が弘子に30分間何をしたのかは具体的には描かれていないが、乱歩作品屈指の酷い事をされたようでその後残された弘子は人間の形を失っていた。
ちなみに弘子は豹をけしかけたため、蘭子は明智が恩田の警告を容れずに事件から手を引かなかった報復として殺されており、恩田なりに道理は通しているのかも知れない。

自註自解によれば人が人に化ける作品は散々書いたので人が獣に化ける話という着想を得て練り上げる前に書き始め、毎月の執筆も盛り上がりを重視したため各回の出来不出来が激しい悪いくせが出たとの事で、読者からの評価も必ずしも高いものばかりではないが、恩田のピカレスク的魅力やスリリングな展開から熱烈なファンもおり、ラジオドラマや歌舞伎にもなっている。
「魔術師」で出会い、「吸血鬼」で絆を深めラストで結婚した(正確にはもうすぐ式を挙げると報道された)文代との新婚生活が描かれており時系列的には「吸血鬼」の後にあたる。
ちなみに版によっては文代は第一の犠牲者の弘子や第二の犠牲者江川蘭子とそっくりの容貌をしていると書かれているものもある。
クライマックスでは恩田に拉致された文代がクマの着ぐるみを着せられて、毛染め薬で虎に擬された豹と戦わされており、毛皮が破れて柔肌が覗く場面などは実に淫虐的な魅力に満ちている。

作中で登場したコールタール缶による自動車追跡装置がのちに少年探偵ものに再登場した際に振り返った際には漢字が難しいと判断されたのか「人間ヒョウ」と書かれている。
豹は乱歩の好きなモチーフであり、怪人二十面相も黄金の豹に化けている。

余談だが、連載完結の翌年に実際に上野動物園から黒豹が脱走する事件が起きている。作中で恩田父が豹恋しさに動物園から盗み出しており、この事件に着想を得たとする読者もいるが実際には小説の方が先である。

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