「バーカ。悪人はな、お天道様を見上げて死んじゃいけねぇんだよ!」
「・・・もっと・・・殺意(おもい)を!」
「俺にあるのは、この両手にしみ込んだ怒りと殺意だけだ!!!」
年齢 | 24歳 |
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身長 | 182cm |
誕生日 | 12月31日 |
血液型 | О型 |
CV | 江口拓也 |
概要
かつて関東一凶悪で、江戸を騒がせた大盗賊団「黒蜘蛛組」頭首の息子で元・若頭。
500人以上の人を斬った大罪人であるが、蟲退治に手を貸す代わりに斬首を逃れている。
一人称は「俺」。通称「斬撃のスペシャリスト」。
風貌
筋骨隆々とした大柄な体躯に、顔をはじめ全身に着けられた多くの傷。黒地に赤い炎の装飾が入った着物を常に崩して着ており、伸ばしたザンバラ髪を緑色(アニメ版では橙色)のバンダナのようなものでまとめている。
ボロボロに刃こぼれした刀を両腰に一本、後ろに一本、背中に一本、計4本携帯している。体中の傷は幼少期、父親から人斬りにしつけるため日々痛めつけられてできたもの。
盗賊時代は袴のみ着用し、裸の上半身に黒い外套を羽織っていた。刀は背中に4本、両腰に2本の計6本。
人物像
常に酒瓶を携帯し、まるで水のように呑みまくっている。明るく飄々とした性格で、「カカカ」という独特な笑い声をあげる。
月島仁兵衛のことは「兄ちゃん」、火鉢は「嬢ちゃん」、一乃谷天間は「坊ちゃん」、無涯は「無涯のダンナ」など、基本的に愛称のようなもので他人を呼ぶ。松ノ原小鳥のことは上司ながらも「小鳥ちゃん」と呼び、彼には過去に借りがあるらしく、頭が上がらないらしい。
何かとあれば「ぶっ殺す」や「ぶった斬る」と発言して仲間に止められているが、大雑把ながらも面倒見はいい。キレる場合それは大抵、仲間が危険にさらされた時や、理不尽な行いをする人間を目の前にした時である。また蟲退治の際はかなりまじめに仕事をしており、戦闘中も人命救助を最優先したり、人が虐げられるのを見て激怒するなど良心的。
市中組の中でも比較的常識人であり、仁兵衛や火鉢にツッコミを入れることもしばしば。しかしそれ以上に仁兵衛との関係で火鉢をからかったりしているため、仁兵衛とともによく爆破されている。
上記のように普段は明るくふるまっているが、経歴が経歴だけに仲間内でも一番闇が深い。自身のことを悪人として蔑むような場面が多々あり、人々から石を投げられても無抵抗を貫く。「悪人はお天道様を見上げて死んじゃいけない」と考え、「自分が死んだらうつ伏せにしてくれ」と仁兵衛たちと約束している。
寄生虫に操られた人々を躊躇する火鉢の代わりにを斬り刻むなど斬り、自ら汚れ役を買って出ることもしばしば。江戸に住む人々の多くから嫌われているが、ゴロツキのたまり場など日陰者の住処によく呑みに出かけており、そこの住人からは「恋川の旦那」と慕われている。
仁兵衛のことは当初はただの新入りとしか扱っていなかったものの、強盗に間違われ捕まった際、仁兵衛が自分を信じ脱獄の手助けをし、さらに疑いを晴らしてくれたことにより彼を認める。以降は度々けいこの相手をしている。よく落ち込む彼を叱咤激励して先輩として支えており、性格と実力により市中見廻り組の面々からも頼りにされている。
実は犬が苦手。
人斬りの始まり
漫画版では、少年期は心優しい性格から人斬りが出来なかったが、病に侵され死を望む母親を斬ったことで「死こそ救い」と考えるようになる。
他の団員にいたぶられ殺される前に、全ての人を苦しませず、ささやかな苦痛も知ることなく、穏やかに一瞬で眠らせるための強さを求めた結果、純粋なまでの殺意とそれに裏打ちされた強さを手に入れた。
アニメ版では、人斬りが出来ず微妙な立場にあった自分を唯一気にかけてくれた母親が何者かに殺害されたことによって人斬りに堕ちた。
当初殺害したのは父親だと思い込んでいたが、松ノ原小鳥から母親を殺害したのは蟲狩だと教えられ、蟲狩に対して並々ならぬ殺意を持っている。99人を斬り殺したことで「九十九斬り」の異名を持った。
戦闘能力
かつてそのあまりの強さとに滲み出る強烈な殺意により、捕まえるために火盗改・町奉行所の同心500人の命、そして与力の松ノ原小鳥・尾上影忠・白榊夢久ら3人の協力を要したほど。つまり500人斬りとはあくまで「捕まえる際の犠牲」であり、月島源十郎曰く「実際には2000人以上は斬っている」とのこと。
仁兵衛からは「すべてを斬る斬撃」と評されている。
それは決して大げさではなく、大岩・人体・甲冑・蟲の外殻・柱・壁・牢屋の格子・大砲の砲身・砲弾、その他ありとあらゆるものを細切れにできる。あまりに切れすぎて、落下を防ぐため柱に刀を突き刺したものの,柱が切れ続けてそのまま落下するという珍事が発生するほど。
刀はボロボロ、剣も我流だがそれらも一切関係なしのすさまじい切れ味である。戦闘中は常に二刀流だがこれは剣の腕などは関係なく、単純により多くの斬撃を繰り出せるからだろう。ちなみにアニメ版では三刀流も披露した(左手に2本持つ形式だったが)。
しかもさらに驚くべきは、手に持つ得物は何でもよいというところ。例を挙げると
- 手合わせ中に木刀で木刀を斬る
- 握り飯を包む竹の皮で刀が通らない蟲を細切れにする
など、原理もへったくれもないでたらめな芸当をいとも簡単にやってのける。これほどのレベルに達していながら終盤まで斬撃は飛ばせなかった。
この斬撃について本人曰く、「対象を固いものと思わず先入観を捨てて無駄な力を入れないこと」だと話している。そのため岩を「こんにゃく」、蟲を「ひややっこ」と称している。
しかし終盤において遭遇した常世の蟲に使える蟲人、大阪五人衆の毛利勝永から「自分と同じ太刀筋」と言われ、その本質が「思想(おもい)という刀で斬り裂く意志の剣」だと知らされる。
つまり彼の中に眠る「殺意」が強くなればなるほど切れ味がさらに増していく。当初は蟲奉行所に入ったことで当時の殺意が薄れていたものの、戦いが激しくなる中でかつての殺意が再び滲み出るようになり、その強さに磨きがかかっていった。
- 懺斬り(ざんぎり)
恋川の基本的な技。無数の斬撃を繰り出し目の前のものを細切れにする。相手の刀などを除き、ほぼ全ての触れたものを切り刻んでいる。
- 慈合斬り(じあいぎり)
懺斬りのさらに上をいく斬撃。紀州における真田十傑蟲・三好兄弟戦にて初使用。殺しを救済として人々を惨殺する三好兄弟との会話の中でかつての自分を思い出し、彼らへの怒りから覚醒した。斬ったそばから再生し、さらに再生力が5倍以上に高まった三好兄弟を再生のしようがないレベルの塵と化すまで切り刻み雲散霧消させるという極限まで切れ味と数を高めた技。
ちなみに当初は「慈合斬り」だったが紀州戦より後では「慈愛斬り」とされた。
- 悲愛一斬(ひあいひときり)
恋川には珍しい一撃の技。剣に更なる「殺意(おもい)」を込めて二本の刀を同時に振り下ろす。江戸にて真田十傑蟲・後藤又兵衛に仲間の技と同時に放ち、押し返したものの切れ味は確認できなかった。
その後大阪の最終決戦にて毛利勝永に使用。数十の巨大蟲を一太刀で屠り仁兵衛の天羽々斬剣を打ち消した毛利の斬撃を切り裂くという、一撃の威力をひたすら高めた技。
- 悲愛乱斬(ひあいらんぎり)
大阪での毛利勝永戦にて使用。戦いの中でさらに殺意が強まり、悲愛一斬より鋭さが増した連撃。
- 乱残穢(みだれざんえ)
大阪での毛利勝永戦にて使用。ついに殺意が斬撃を飛ばせるまでに強まった技。三本の刀を地面に突き刺し、刀を振り上げる動作のみに集中することで最短で斬撃を繰り出し、全方位からの攻撃に対応しながら斬撃を飛ばし四方を切り裂く。
過去(ネタバレ)
本編の2年前、強くなり過ぎた恋川があまりに人を斬りすぎたために、幕府から真剣に目をつけられた黒蜘蛛組は散り散りとなった。恋川も関八州の奥で、団の下っ端・松兵衛が地主を務める村の納屋に身を潜めていた。
そんな折、松兵衛が恋川のお世話(監視)係としてそばに置いたのが、松兵衛の娘・千鶴だった。妻とは別の女に産ませたが故父親から邪険に扱われる千鶴だったが、父親に一言「ありがとう」と言ってもらうため、不器用ながらも恋川の身の回りの世話をしていた。失敗ばかりでも常に笑顔で、自分のことを「春ちゃん」と呼ぶ千鶴のことを、恋川はうっとうしく思っていた。
一週間ほどたった後、千鶴に連れられ恋川は彼女のお気に入りの場所に連れてこられる。目印の布を巻き付けた松の木が生えた小さな丘。春になれば丘の上にたくさんの花が咲き乱れると言って、春になったらまた一緒に来ようと提案される。しかし恋川は自分が人斬りであることを打ち明け、自分の両手は血で汚れているとこぼす。
「だったら人斬りなんてやめればいいじゃん。」
千鶴の突然の言葉に驚き、そんなこと無理だと言い返す恋川。しかし千鶴は続ける。川に落ちそうになった時や重い荷物を持った時、いつも恋川が助けてくれたと。村にいる間、恋川の手はやさしいことをしていたと。
「春ちゃんいい奴だよねぇ。ホントは刀持つの向いてないよ!」
「どうかこの手が、穏やかでありますように。」
恋川の両手を握りながら、千鶴は彼に笑いかけた。
その日から恋川の中で何かが変わった。刀以外の使い道を示してくれた千鶴とともに、村の手伝いをしながら、二人で笑って過ごすようになっていった。
しかし自身の保身のため、松兵衛は千鶴を使い恋川を殺そうとする。山奥に恋川を誘い込んだ千鶴は、松兵衛から渡された短刀を投げ捨て、恋川に逃げるよう告げる。千鶴は松兵衛の悪事を知りながらも、父親だからと慕い続けていた。
恋川はそんな千鶴を見て、これからも二人でいるために村に残ることに決める。そのとき二人の後をつけていた松兵衛が、巨大蟲に襲われて二人のもとに逃げてきた。咄嗟に仕留める恋川だったが、逃がした一匹の蟲により、松兵衛をかばった千鶴が絶命してしまう。
最後まで父を案じながら息絶えた千鶴と、呆然とする恋川。その静寂を破ったのは、松兵衛の密告で恋川を捕えに来た同心たちだった。自らの保身のため千鶴の死すら利用してごまかす松兵衛。しかし恋川は千鶴を守れなかったことを悔い、同心たちに押さえつけられていた。ふと顔を上げると、松兵衛が千鶴の遺体に近寄り、笑いながらこう言った。
「(死んでくれて)ありがとう」
千鶴の願いを踏みにじった松兵衛。その瞬間恋川は激しい怒りに飲まれる。千鶴の祈りも忘れ、同心の刀を奪い取り、松兵衛もろともその場にいた全員を惨殺してしまう。その後恋川は千鶴の遺体を埋めようと、彼女のお気に入りの丘にやってくる。そこで目にしたものは自分を捕えに来た多くの同心たち、そして彼らに踏み荒らされた丘だった。
千鶴の大切なお気に入りの場所すらも壊され、恋川は怒りを爆発させる。多くの同心たちを切り刻むも、与力たちに押さえつけられあえなく捕らわれる。「千鶴を埋めてやってくれ」という恋川の弱々しい願いのみが弱々しいその場に残った。
江戸での処刑の日、恋川は磔の直前まで、千鶴のために何もできなかったことを悔いていた。すると突如、巨大蟲が現れ野次馬が襲われる。自分には関係ないと思いつつ、その手に残ったわずかな千鶴の温もりにより、恋川は蟲を切り伏せる。
再び押さえつけられた恋川に声をかけた人物が松乃原小鳥だった。蟲奉行所に協力するよう勧められ断る恋川。するとふと、松乃原が口にする。
「あの娘さん、あの後勝手に布のついた松の木の下に埋めたけど 良かったかい?」
こうして返しきれない恩のため、まだ自分の手が必要とされたため、恋川は蟲奉行所に入った。しかし彼は知った。愛ほど失ったときつらく苦しいものはないと。愛ほど報われないものはないと。
最終決戦(ネタバレ)
常世の蟲の本拠地。大阪城にて、恋川と毛利勝永は激突した。大切なものを失うほどに鋭さを増す意志の剣。そこに何の未来も見出すことのできない毛利は、戦いの中で恋川に問いかける。自分たちの剣に秘められた答えを。
激戦の中で切れ味を増していく両者の斬撃。毛利の主張する「愛」を否定し、己の剣にこもるのは「怒り」と「殺意」のみだと恋川は叫ぶ。極限まで高まった恋川の想いは、ついに剣を通して毛利の頭の中に響く。
「一番気に入らねぇのは・・・許せねぇのは、俺自身だ・・・!!!」
それはかつて、守りたいものを守れなかった自分自身に対してのどうしようもない怒り。無我夢中でやみくもにまき散らし、未来どころか現在すら見えないがらんどうの剣だった。彼の剣に何も込められていないことを知った毛利は失望。怒りにとらわれた恋川を容赦なく追い詰める。
腹をえぐられ、両腕を落とされ、心臓を貫かれる、致命傷を負った恋川は、どこか満足げな笑みを浮かべ倒れ行く。
薄れゆく彼の視界に移ったもの、それは重傷を負った状態で今にも自分のほうへ駆け寄らんとする仁兵衛の姿だった。恋川は最後の力を振り絞り、すがるように落ちてきた桜の花びらをくわえる。
・・・とどけ。届け。届け。
彼の最後の一振りは、毛利を、天守閣を、そして常世の蟲の巨大な繭を両断し、雲を払った。
そのままうつぶせに倒れ込み、「手間が省けた」と小さく笑う恋川。まもなく死ぬことを悟り、今までの人生を「ろくでもない」とあざ笑う。するとおもむろに、仁兵衛は恋川を仰向けにする。なぜかと問う恋川に仁兵衛ははっきりと告げる。
「・・・自分にとって恋川殿は、悪人なんかじゃありませんでしたから・・・!」
「恋川殿のその両手に何度も助けられ・・・守られてきましたから・・・!!!」
「・・・自分にとって、自分達にとって・・・大切な蟲奉行所の仲間でした!!」
恋川は気づいていないだけだった。すでに自分が「命を懸けて守るべき者たち」と巡り会っていたことに。最後の一振りに、殺意以外の想いが込められていたことに。
「…俺…は……青…空…を見上げ…ながら…死んで…いいのか…な…?」
「恋川殿・・・! 江戸で自分と出会ってくださり、本当にありがとうございます!!!!」
どこまでもまぶしくまっすぐなその姿に、恋川は千鶴の姿を重ねた。彼は千鶴が眠っているであろう青空を見上げながら、最後まで笑って息を引き取った。
最終決戦後(ネタバレ)
蟲がいなくなって七年、恋川の遺体は目印の布を巻き付けた松の木が生えた小さな丘に、千鶴とともに眠っている。彼の墓は松の木に寄り添うように、二本の刀が打ち立てられている。
今年の春もまた、一面の花に二人は囲まれている。
関連イラスト
盗賊時代