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恐怖の神殿

きょうふのしんでん

ゲームブック「ファイティングファンタジー」シリーズの第14弾。著者はイアン・リビングストン。
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「恐怖の神殿」とは、イギリスの出版社「ペンギン・ブックス」から出版されていたゲームブック「ファイティングファンタジー」シリーズの第14弾「TEMPLE OF TERROR」の日本語版タイトルである。出版社は社会思想社。


作品解説編集

 ダークウッドの森に住む善の魔法使い、ヤズトロモ。彼はほとんど塔で過ごし、外界の事は動物たちの使いから情報を得ている。

 そのうち、使いのカラスが偶然にも恐ろしい情報を運んできた。

 ダークウッドの森に住む、悪の闇エルフが、邪悪なる人間の魔法使い・マルボルダスに最後の試験を行おうとしているのだと。

 マルボルダス、下位エルフ語で「闇の子供」を意味するこの魔術師は、聞いた話によると赤子の時に捨てられ、闇エルフに拾われたらしい。そして徐々に成長し、今では邪悪の魔術のほとんどをマスターしているという。

 そして、行われる最終試験。それは……失われた都・ヴァトスへと赴き、そこに隠されている数種の龍の飾りを見つける事。

 最後の試験をクリアすれば、この龍の飾りは本物の龍となり、マルボルダスのしもべとなる。マルボルダスはこの龍たちと邪悪の軍勢を率い、アランシアを征服するために戦争を起こすだろう。

 ヤズトロモはこの情報を、近くにあるドワーフの町・ストーンブリッジを納めるジリブラン王へと伝えに赴いた。このドワーフ王もこの事を聞き、驚愕し恐怖する。

 偶然にもストーンブリッジにやってきた主人公=君は、ドワーフの鍛冶屋に剣を研いでもらっていたが、この事を耳に挟み、「マルボルダスよりも早く、ヴァトスに向かい、龍の飾りを破壊しなければならない」と聞き、立候補する。

 ヤズトロモに急かされ、君は休みもそこそこに新たな冒険を開始する。


 シリーズ14弾。

 久々にタイタンが舞台の、ファイティングファンタジーの一作。

 今回はポート・ブラックサンドやファングのある北方ではなく、より南……アランシアの南部にある「どくろ砂漠」が舞台である。

 前半部は、陸路で、もしくは船でダークウッドの森から続くナマズ川を下り、ポート・ブラックサンドに出てから船で海路を南下して、どくろ砂漠へと赴き、砂漠を横断する……という冒険を行わねばならない。

「砂漠」という、これまた今までにないタイタンはアランシアのフィールドで、水がいかに貴重か、砂漠に登場するモンスターの対処の仕方、そして砂漠の遊牧民(ノーマッド)との交流など、地味ながら今までにないシチュエーションの冒険を楽しむ事が出来る。


 後半部は、ヴァトスに到着した後、今度はその失われた廃墟の都市を、迷宮探検よろしく龍の飾りを探索しつつ、奥へと向かわねばならない。

 しかし、この探索には、少々厄介な存在が罠を仕掛けている。

 後述する「死の使者」がそれで、今までの迷宮探索の冒険では、情報収集のために赴いた場所を可能なら隅々まで調べて、手掛かりを求めていた。しかし今回は、「死の使者」というアンデッドの存在が仕掛ける罠により、知ってはならない事まで知ってしまい、より死が近づく可能性が高まる……というジレンマが存在するのだ。調べないわけにはいかないが、調べる必要もある。このスリルもまた、本作の魅力の一つである。


 また、「雪の魔女の洞窟」あたりからちょくちょく出て来た悪のエルフこと「闇エルフ」。

 これが、メインのヴィランを支える存在として登場している。


 本作では、主人公が魔法を使える。

 今回は、ヤズトロモが呪文を主人公に直接教える事で、使えるようになる。全十種の呪文のうち、四つまでを覚えて冒険に臨むというもの(可能なら全て教えたいが、時間が押しているために四つまでが限界という理由がある)。

 システム的には「バルサスの要塞」や、「サソリ沼の迷路」のようなシステムではなく、体力点を消費して呪文を放つ、「ソーサリー!」のアナランドの呪文に近い。

 10種中9種の呪文が、体力点を減らして使う事が出来るのだ(唯一、手から水を出す「水」の呪文のみが消費は無し)。そして、パラグラフに選択肢が出ている時のみ、呪文を使用できる。

 そのため、戦闘時には使う機会があるものの、ほとんどは剣を用いて状況を切り抜ける事が可能。むしろ非戦闘系の呪文の方が、かえって役に立つかもしれない(特に砂漠なので、ある呪文は必須)。

 とはいえ、呪文を用いる機会はほぼ前半部に集中しているため、好みで選んでも構わない。


 本作のラスボス的存在である「マルボルダス」は、作中では割とあっさりした退場をするものの、ワールドガイドである「タイタン」では、ザゴールやバルサスなどと同じくらいに、詳細な背景が設定されている。

 おそらくは悪漢としてより細かに設定し、色々と展開できるようにと考えていたのかもしれないが、本作中ではその設定のほとんどが示されず活用されてもおらず、いささか残念に感じられる。

 とはいえ、御大リビングストンが手掛けているだけあり、普通にまとまって、難易度もほどほど。展開も「ダークウッドの森からブラックサンドという、既知の場所を通る」「どくろ砂漠という、今までに無かったフィールド」「ひとひねり加えた、迷宮探索」と、工夫が見られるものに。

 地味ではあるが、タイタンの新たな冒険を楽しめる一作である事は間違いない。


主な登場人物編集

主人公=君編集

 毎度おなじみの主人公。ストーンブリッジに寄った際に、この話を聞き、立候補した。


ゲレス・ヤズトロモ編集

 同じく、毎度おなじみのダークウッドの森に住む善き魔法使い。

 今回主人公と顔を合わせ「どこかで会わなかったか?」と言っており、「運命の森」で既に顔を合わせているのか、それとも今回初めて会ったのか、どちらともとれるようにしている。

 今回の冒険の為に、彼自らが十個中四個の呪文を教えてくれる。


ガルゴ編集

 ポート・ブラックサンドから海路でどくろ砂漠に赴く際、乗せてもらう海賊船「ベラドンナ号」の船長。

 禿げ頭にスカーフを巻き、左耳から顎にかけて傷痕がある。海賊らしくかなりの荒くれ者。主人公を大砲の砲手の、臨時弾込め係として働かせる。


アブジュル編集

 どくろ砂漠の遊牧民。砂漠の中にテントを張り、行商人として雑貨を売っている。


リーシャ編集

 数多くの奴隷衛兵や信者を引き連れた、邪教の女神官。マルボルダスおよび闇エルフの協力者らしい。砂漠の隊商を狙い、信者や奴隷を率いて襲撃する。

 その身体は不死身で、通常の武器は通用しない。唯一、大砂蛇の牙のみが、彼女の身体を傷つける事が出来る。

 残忍であるが芸術愛好家で、ヴァトスにて毎年芸術家を招き、この場所で仕事をさせる。絵画を廊下の壁に描かせたり、壁掛けや木彫、銅版画などを飾り、作品の判定を行う。判定するのはリーシャ一人で、その決定は絶対。優勝したら金貨300枚を与え、敗れた者は闇の神々の生贄にする。

 奴隷衛兵や、盲目らしき筋骨たくましい召使(両目が白濁している)を使役している。


マーケグ編集

 画家。リーシャに呼ばれ、絵画を手掛けていた。自分の作品に絶対の自信を持ち、腕前もそれなりにある。


シッタ編集

 リーシャの元召使。ヴァトスから脱出しようとして捕まり、拷問者に焼きごての拷問を受けていた。


マルボルダス編集

 本作の悪漢。その名は下位エルフ語で「闇の子供」を意味する。

 赤子の時に雪の中で捨てられていたところを、闇エルフに拾われる。後の儀式により、彼らの神々からの贈り物とされ、育てられた。その際に名付けられた名はエーレン・ティンタセル。闇エルフ語で「嵐の子」を意味する。

 闇エルフの黒魔術を学び成長し、その才能の一端を見せた。後に9歳の時に一人でダークウッドの森の善き森エルフの村に赴き、邪悪な魔術による炎で全焼させた。

 マルボルダスの名は、その時に森エルフから名付けられたもので、後に本人もそれを用いる事に。

 成人するにあたり、最終試験として「ヴァトスにある龍の飾り全てを集めよ」という使命を果たそうとする。

 竜の飾りは、骨、水晶、銀、黒檀、金の計五種類。成功した暁には、それらに命が吹き込まれ巨大化。本物の竜となり、マルボルダスのしもべとなって世界に対する脅威となるらしい。


ヤズトロモが授ける呪文編集

本作では、以下の十種類の呪文のうち、四種類をヤズトロモから学び、劇中で用いることが出来る。ヤズトロモ曰く「わしに魔法を教えてもらえるのは名誉なことなんだぞ」。

  • 開門の術:鍵のかかった戸を開ける。消費体力点2。
  • 眠りの術:人間型生物を眠らせる。消費体力点1。
  • 魔の矢の術:いわゆるマジックミサイル。消費体力点2。
  • 言葉の術:言語を交わす生物と、どんな言葉でも意思疎通できる。消費体力点1。
  • 絵解きの術:ルーン文字などの魔法の記号が読めるようになる。消費体力点1。
  • 光の術:周囲を明るくする。魔法で作られた闇でも有効。消費体力点2。
  • 炎の術:炎を操って壁を作ったり、可燃物に点火して燃やせる。消費体力点1または2。
  • 飛躍の術:身体を浮かばせて障害物を飛び越えられる。消費体力点3。
  • 罠探しの術:行く手に待ち受ける危険な罠を警告してくれる。消費体力点2。
  • 水の術:両手をお椀の形にすると、その手の中に水が満たされる。消費体力点0。

登場モンスター編集

メッセンジャー・オブ・デス(死の使者)編集

アンデッドモンスター。外観はぼろぼろの死に装束を身に付けたゾンビに見え、両目と口は粘液で溢れている。そのため、言葉はごぼごぼと不気味に響く。

暗殺者として、邪悪な魔術師に召喚される。相手を殺すのに最適な能力を有し、その代償も犠牲者の命のみ。

最初に犠牲者の元に静かに出現し、肩を軽くたたき「死(デス)!」と囁き、そのまま去って行く。

そして犠牲者が行く先々に、目立つ場所に(ドアにペンキで描いたり、石に刻み付けたりなどして)一文字ずつアルファベットを記し続ける。最終的には、それらの文字全てを犠牲者が目にして、「DEATH」の綴りが完成すると再び出現。何もできない犠牲者から、生命を吸い取っていく。

これを避けるためには、アルファベットをなんとか読まずに済ませるか、もしくは最初の契約時……「デス!」とささやかれる瞬間に銀の短剣で攻撃し、契約を無効化して魔界に追い返すしかない。

サーペント・ガード(蛇衛兵)編集

表紙に描かれているモンスター。人間の上半身に蛇の頭部、下半身は長く伸びた大蛇の胴体と尾になっている。上半身は鎧で身を固め、剣と盾とで武装している。

蛇の頭部を持つ種族・カアスが作ったものと考えられている。かの種族は人間と蛇とを合成する実験をたびたび行っており、「盗賊都市」に登場した、頭部が蛇の人間の女性「蛇女王」もこの実験の結果らしい。

サンドスナッパー(砂咬み)編集

砂漠の砂中に潜む、ワニのような爬虫類のモンスター。

鱗に覆われた身体を、砂に埋めて獲物に近づき、いきなり噛みつく。それで獲物が死ななかったら、肩部分の鱗をかき分けて、先端に手が付いた二本の太い触手を伸ばして攻撃する。

体を覆う鱗は、剣の刃が通らないほどに分厚く頑丈なため、反撃するならばこの二本の触手を同時に攻撃し、二本とも打撃を与えるか切断するしかない。

ジャイアント・サンドウォーム(大砂蛇、大砂蟲)編集

砂中に潜む巨大なモンスター。成獣は20m、幼獣は約半分。頭部は歯が円環状に生える巨大な口を持つ。目を持たず、口周りの感覚器官で、臭いにより獲物を感知する。

砂漠の遊牧民は、この大砂蛇をクジラよろしく狩る。馬にまたがり銛を手にして追い詰め、その肉や皮、牙などを手に入れる。

肉は食用でそれなりに美味。皮は固く、天幕に最適。歯は象牙のような質感で、加工次第で頑丈な短剣の材料となる。

ナイト・ホラー(夜の恐怖)編集

ヴァトスのような廃墟を徘徊するアンデッド。見た目は一つ目で筋肉質のヒューマノイドだが、頭蓋骨は奇妙に歪み、体型もいびつ。通常は簡素な服を着て、棍棒やメイスなどの打撃系武器を装備している。しかし場合によっては、強力なアーティファクトを有していることもある(劇中に登場した個体は、稲妻を放つ錫杖を手にしていた)。

アイ・スティンガー(にらみ針)編集

大きな球状の身体に、無数の長い毒針と一つ目とを有したモンスター。地面から1mを浮かび、その一つ目で睨み付ける事で攻撃する。

この視線には強力な催眠能力を有しており、運試しで吉と出ないと、アイ・スティンガーの視線に魅入られ、近づいて毒針の麻痺毒を注入されてしまう。こうなった犠牲者は死にはしないが、麻痺したまま動けず、別のモンスター等に襲われてしまう。アイ・スティンガーはその食べ残しを漁っている。

視線に魅入られずに済んだ場合、接近して攻撃したら一撃で倒せる。ただし、この怪物の体内には、ねばついた強酸性の液体が満ちており、その発生するガスで浮遊している。そのため、攻撃されたら破裂し、周囲に酸をぶちまけて攻撃者にダメージを与える(体力点を2点を減らす)。

遠方から弓矢などで攻撃する必要があるが、改めて見つめられ魅入られる可能性もあるため危険。しかし、磨かれたオニキス(縞瑪瑙)や黒玉のようなものを見ると、アイ・スティンガーは混乱し、目を閉じてしまうため、その隙に逃走が可能となる。

変異オーク編集

ヴァトス内で遭遇する、両手に剣を握ったオーク。特殊な訓練を受けているために技量が髙く、二刀流で攻めて来る。

骸骨男編集

ヴァトスの神殿奥、リーシャの寝殿手前を守っていた。身体は人間と同じだが、頭部は完全な骸骨となっている(全身が骨のスケルトンとは異なる)。

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