概要
椿白團治とは、『うちの師匠はしっぽがない』の登場人物である。
椿しららの師匠である、椿一門の総家元にして二代目・白團治。上方落語四天王のひとり。
母は現在の上方噺家協会会長・椿白仙(先代・椿白團治)であり、前の高座名を椿白輔。
芸は超一流だが「体は借金でできている」とすら言いかねない無限の借金を持つ、一種の破滅型天才芸人で、完全に人間としてダメな人。しかし、その破滅性もまた芸の肥やしにしてネタと言える。物語の序盤では刑務所にブチ込まれていた。(実は大日本帝国陸軍の軍人との恋の鞘当てをネタにして一世を風靡してしまったためで、いわゆる不敬罪による政治犯としての逮捕である)
まめだと出会った際には借金取りに追われて身ぐるみ剥がれネイキッドであったため、彼女からは「尻」と呼ばれている。(本来まめだにとってみれば、そんな呼び方などしてはいけない大師匠である)
また直弟子のしららからも上述の破滅型の生き様のため常に愛ある鉄拳制裁に沈められ、大師匠としての威厳などひとつもない……のだが、それすらも笑って許す器の持ち主(ただし威厳も無い)。しかし一度、高座に立ったなら歌舞伎座すらも満員御礼・止め札にしてみせる、押しも押されもせぬ威厳に満ちた大師匠としての姿を見せつけてくれる。
実はのちに大黒亭一門の出であり、先代・大黒亭家元の息子にして、本来ならば大黒亭の後継者であった事が明かされた。(つまり本来なら大黒亭の徒弟がいる場合には、文狐に代わり大黒亭を率いていかなくてはならない立場)が、実は大黒亭号は超破滅型芸人であった先代の遺言(と、様々なやらかし)によって廃亭号とされており、本人(先代家元・文鳥)もそれを望んで白團治に芸をつけていなかった。ゆえに大黒亭号は先代死去時に唯一残っていた先代直弟子の文狐だけが特例として名乗る事を許されていた亭号だった。そして、この事が、のちのち文狐とまめだの立場を難しいものにしていく事となってしまう。
四天王の試練篇では、四天王の一人としてまめだに試練を課す最初の壁として立った。が、同時にまめだに試練を課す事を提案する事で文狐とまめだを守ろうともしていた。
白輔を名乗っていた若い頃には、なりゆきで文狐や圓紫とツルんでイロイロとやらかし、上方(問題児)三人衆として業界の上層部を悩ませていた事もある。
余談
上述のように文狐から「一度舞台に上げれば歌舞伎座を満席立ち見にしてみせる」と称される白團治だが、実は歌舞伎座は東京の劇場なので本当に白團治が歌舞伎座を満席にしたけりゃ、わざわざ東京に行く必要がある。つまり上方の人間(特に、この当時の上方の芸人)が満席の規模の例えとして歌舞伎を挙げるのは不自然なのである(まぁ読者や視聴者に解りやすくするために、あえて矛盾に目を瞑ってそのたとえを持ち出した、という解釈はありだが)。
そして大阪にあったのは大阪歌舞伎座だが、これが出来たのは昭和7年なので、これまた時代設定に合わない。あるいは大阪松竹座も考えられるが、これは当時は洋風劇場にして映画館(平成9年に歌舞伎の実演劇場へと改修)であり、これまた設定に矛盾する。
なので、しいて当時の「(上方)歌舞伎座」に当たる劇場を挙げるとするなら、それは「道頓堀五座」と呼ばれる5つの劇場にあたり、特にそのうち「道頓堀中座」と呼ばれた劇場ならば矛盾は少ないと思われる。ちなみに、この中座は1999年に閉場となり、跡地には「中座くいだおれビル」が建っている。