日本語の活用形はどういう構成?
はじめに
本題に入る前に簡易的に説明しておくが、ある単語が文を終えたり、他の文へと続いたりする際に、その語の置かれた位置に応じて形が変化することがある。その語形の変化と、変化の体系を指す言葉が、「文法における『活用』」である。さらに、活用の体系一つ一つのことを『活用形』といい、活用のある単語のことを「活用語」という。
さて、当記事では記事タイトルに「(日本語)」という文言のある通り、日本語の活用形に焦点をあてて取り上げる。
日本語の活用形とその配列
日本語の活用形は現代人の話し言葉に近い「口語」「現代日本語」と、古典の授業や日本国憲法で目にする「文語」「古典日本語」でそれぞれ6つの活用形が存在する。だから「口語の六活用形」「文語の六活用形」または単に「六活用形」とも表される。
活用形の置き形には順番があり、特別な理由で必要な場合を除いてそれに従う。テーブルを使った表で表すと下記のようになる。
現代日本語の横書きは当記事の解説文の通り左から右へ書くから、順番に挙げると未然形、連用形、…命令形という並びになる。縦書きの場合は上から下へ順番に未然形、連用形、…命令形となる。
活用形の詳細
※出典:スーパー大辞林
未然形
六活用形のうち一番目に置かれる。まだ起きていないことについて述べる時に使う。打ち消しや推量が続きやすい。文語では仮定の意味もこの活用形で表す。
連用形
六活用形のうち二番目に置かれる。その下の「用言に連ねる」形。分かりやすくいえば、動詞、形容詞、形容動詞に続ける語形のこと。
ほかに、文を一度中止してまた再開する用法や、転成名詞とするのにも用いられる。
終止形
六活用形のうち三番目に置かれる。基本的には文の終わりに、言い切りとして用いる。
口語形容動詞の場合、「逃げるなんて卑怯者だ」「とても好きだ」のように本来『だ』を語尾に伴って終わるのだが、特に会話では「卑怯者!」「超好き!」のように語尾が抜け落ちることもよくある。
文語形容動詞の活用形であるタリ活用の連用形「と」と連体形「たる」が、口語形容動詞においてなお用いられることがあり、学校文法では副詞と連体詞の組み合わせとして『トタル』と称されるが、これを活用とみなし「トタル活用」とした場合、用言で唯一、終止形がない活用形だということになる。
多くの辞典の見出しでは、動作性の名詞を除く動詞、形容詞、助動詞、活用連語のうち終止形が用いられることが多いものは、終止形を語義や活用形の詳しい解説の中核としているものが多い。余談だが、形容動詞は語幹のみで無語尾、動作性の名詞は無語尾ないし名詞形で見出しに用いられる。
連体形
六活用形のうち四番目に置かれる。主に体言に続ける際に用いる語形。
文語に限り、単独で用いて詠嘆的に、または係り助詞を受けて文を終えるのに用いられる。下にくる体言を省略して、名詞法とすることにも用いられた。
仮定形
口語の六活用形のうち五番目に置かれる。接続助詞の「ば」を伴い、仮定の意味を表す。
文語では仮定形ではなく後述の已然形を立てる。
已然形
文語の六活用形のうち五番目に置かれる。既に起きたことを述べる形。
命令形
六活用形のうち六番目に置かれる。ほかに命令したり、それで言い切る語形。
口語の形容詞と形容動詞には命令形が存在しない。トタルを活用とみなした場合命令形が存在する説もあるが、学説はまだ完全には定まっていない。
動詞における可能動詞と、一部の助動詞には命令形がない。
動詞の活用形
口語
活用の種類 | 動詞例 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
五段活用 | 書く | か | -か、-こ | -き | -く | -く | -け | -け | 多くの動詞がこれに該当 |
上一段活用 | 見る | み | み | み | みる | みる | みれ | みろ | |
下一段活用 | 食べる | た | -べ | -べ | -べる | -べる | -べれ | -べろ | |
カ行変格活用 | 来る | - | こ | き | くる | くる | くれ | こい | 「来る」のみ該当 |
サ行変格活用 | する | - | し、せ、さ | し | する | する | すれ | しろ | 「する」のみ該当 |
文語
活用の種類 | 動詞例 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
四段活用 | 思ふ | おも | -は | -ひ | -ふ | -ふ | -へ | -へ | 多くの動詞がこれに該当 |
上一段活用 | 見る | (み) | み | み | みる | みる | みれ | みよ | 一部の動詞のみ(現代語より少ない) |
下一段活用 | 蹴る | (け) | け | け | ける | ける | けれ | けよ | 「蹴る」のみ該当 |
上二段活用 | 落つ | お | -ち | -ち | -つ | -つる | -つれ | -ちよ | |
下二段活用 | 明く | あ | -け | -け | -く | -くる | -くれ | -けよ | |
カ行変格活用 | 来(く) | - | こ | き | く | くる | くれ | こ | 「来(く)」のみ該当 |
サ行変格活用 | す | - | せ | し | す | する | すれ | せよ | 「す」のみ該当 |
ナ行変格活用 | 死ぬ | し | -な | -に | -ぬ | -ぬる | -ぬれ | −ね | 「死ぬ」「去ぬ(いぬ)」のみ該当 |
ラ行変格活用 | あり | あ | -ら | -り | -り | -る | -れ | -れ | 「あり」「居り(おり)」「はべり」「いますがり」のみ該当。これのみ終止形がイ段 |
形容動詞
※当記事では省略する。詳しくは記事「形容動詞」を参照されたし。