火ノ礼
ひのれい
『火ノ丸相撲』の登場人物、潮火ノ丸×五條礼奈の男女カップリング。
同じ大太刀高校出身で、学年は一個差。(レイナが一学年上) 身長差はなんと10センチ以上。ヒールが履けないどころの話ではない。
当初は兄・五條佑真をカッコ悪い廻し姿の競技に引き込んだ火ノ丸を敵視していたレイナ。それが無くても低身長を露骨に馬鹿にしたり、火ノ丸の腕を汚いものを触るかのように指一つで摘まむようにして挙げるなど、レイナは当初火ノ丸のことを恋愛対象はおろか嫌悪の対象だった。(ある意味意識していたとも考えられるが)
火ノ丸も特に彼女に興味を向ける素振りはなく、相撲部のユーマの妹であることすら知らなかった。(どれだけ私に興味ないんだよ!byレイナ)
そんな彼らの関係が少しずつ変わったのは原作四巻から。関東新人戦で草薙久世草介に己の三年間を打ち砕かれ、独り雨に濡れ苦しむ火ノ丸に対して、レイナは素直に、ともすれば冷淡とも言える問いを投げかける。
「…何それ
そんなに辛いなら やめちゃえば? 相撲」
これが火ノ丸とレイナが交わした初めてのまともなコミュニケーションである。この問答の中で火ノ丸は己がなぜ苦しみながらも愚直な生き方を続けるのか、かつて母に同じことを問われたことを思い出す。一方、レイナは自分が火ノ丸や変わってしまった兄・ユーマのような、がむしゃらに頑張る人間たちに焦りを感じていたことを自覚した。
「相撲をやめる?
そんなに簡単にやめられたら苦労はしねぇ
体が小さえからって… 向いてねえからって…
この気持ちはどうにもならねぇよ…!」
その後、レイナは火ノ丸たち相撲部の奮闘を見続け、堀千鶴子がマネージャーとして加入する際に自分もマネージャーとして加入。さほど相撲知識があるわけでないが、部員たちを陰ながらサポートし、時に発破をかけ応援する立場に。名古屋合宿編の駿海の「百円玉の修行」ではやや視野が狭く不器用なタイプの火ノ丸に、思わぬ突破口を与えることなる。
駿海曰く二人はお似合いらしく、互いに対照的なタイプだからこそ火ノ丸とレイナはパートナーとして補え合える関係なのかもしれない。
第一部最終決戦の直前には、始めての問答を想起させる「相撲を楽しむ」ことについてレイナは火ノ丸に思い出させた。取り組みの最中には、「あんたの相撲が好きだよ」とレイナは告白までしている。(火ノ丸ではなく「火ノ丸相撲」に対してではあるが)
本作品自体、相撲という題材や廻し姿のビジュアルで一般層に敬遠される傾向が強い。そんな一般人の代表であったキャラ・レイナが、「第一印象や外面を超えた魅力」を最後に認めるというのは、単行本が他作より売れずともアニメ化できなくとも大相撲の不祥事があろうとも打ち切りを3年以上回避し続け辿り着いた第一部の最終編として象徴的である。第一部では特に火ノ丸とレイナが恋愛的に絡むような描写はないため、「火ノ丸とレイナ」でなく「火ノ丸相撲とレイナ」の恋物語とも言えるかもしれない。事実、そのシーンを含むエピソードは「鬼丸国綱と草薙剣、告白」である。
その後、第二部では遂にレイナと火ノ丸の直接的な恋模様が描かれる。少年誌では珍しく現実味を帯びた描写であり、かつそれが本来のテーマである「相撲」にも関わる。第一部は「仲間との物語」だったのに対し、第二部は「愛する人との物語」という色彩が強い。中でもラブホテルでの二人のエピソードは、ネタやエロ目的(ポルノとしての目的)ではない丁寧な性描写として評価が高い。気になった方は是非単行本で確認してほしい。