烏は主を選ばない
からすはあるじをえらばない
ある皇子が言った。
金烏が生まれると、日照りが起こる。
金烏が生まれると、大水が起こる。
金烏が生まれると、大きな乱があって、たくさんの八咫烏が死ぬ。
皇子が嘆いて言った。
何故、金烏なんてものが生まれるのか。
それを聞いた金烏が、答えて言った。
ある時には、日照りが起こる。
ある時には、大水が起こる。
ある時には、大きな乱があって、たくさんの八咫烏が死ぬ。
だから、金烏が生まれるのだ。
-「青烏坊夜話」より第一夜「金烏のはなし」より-
「烏は主を選ばない」とは、阿部智里の小説。
「烏に単は似合わない」に続く、【八咫烏シリーズ】の第2作目。
本作は「烏に単は似合わない」の対になっており、「烏に単は似合わない」でほぼ出てこなかった若宮サイドについてが描かれており、時系列は同じになっている。
ジャンルも一作目同様、宮廷物語と和風ファンタジーを合わせた内容に、陰謀渦巻く朝廷での権力闘争が主なミステリーとなっている。
本作もコミックDAYSにて、コミカライズが連載されている。単行本は既刊3巻まで刊行されている。
スタジオぴえろの手によってアニメ化され2024年4月6日からNHK総合にて放送された。
前作同様、人間の代わりに「八咫烏」の一族が住まう異世界。
日本の平安王朝に近い舞台設定であり、朝廷や貴族・豪族の身分制度、服装や植生、四季の存在から月日の概念も同様で、移動手段と烏に変身すること以外は日本の中世と共通している。
宗家とそれに仕えている四家(東家・西家・南家・北家)はある事情から、兄宮派と若宮派で派閥が対立。次代の金烏について朝廷で争っており、若宮を廃太子させようとしている者が多数存在している状態にある。
招陽宮…族長一家の皇太子、次の金烏となる「日嗣の御子」である若宮の住まい。
紫宸殿…政治の場である朝廷の中心地。招陽宮とも繋がっている。
谷間…遊郭や賭場が認められた裏社会。表社会とは異なる独自のルールが確立された自治組織でもある。
山内衆…宗家の近衛隊。優秀な成績を収めた物だけが護衛の資格を与えられる。
優秀で人望の厚い兄宮を退け、「日嗣の御子」の座に就いた若宮に急遽仕えることになった、北の領地・垂氷出身の雪哉。
しかし朝廷は大貴族の権力闘争から一触即発の事態に陥っており、周囲は兄を次の金烏にと推す強力な派閥と敵だらけ、若宮の命を狙う過激派も次々に現れる。
雪哉は御身を狙う陰謀に孤立無援の宮廷で巻き込まれていく。
同時に本作は、「忠誠」とは何か、の物語である。
雪哉…北家の地方貴族(垂氷郷郷長家)の次男。周りからはぼんくら呼ばわりされており、故郷と家族に尽くして生きることを望んでいたが、訳あって若宮の側仕えになる。
若宮(奈月彦)…次代の日嗣の御子で、「真の金烏」。遊びまわっている事から朝廷から“うつけ”と呼ばれる。
澄尾…若宮の護衛である山内衆の青年。若宮とは幼馴染であり、信頼を置く人物の一人。
長束…奈月彦の腹違いの異母兄。政変で「日嗣の御子」の座を追われたものの、未だに周りからの尊敬を集めている宗家の長子。
敦房…南領出身の長束の側仕え。 貴族らしい面立ちをした官人。
路近…長束の護衛。見たものを慄かせるような恐ろしげな容貌をしている。
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コメント
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今年の三月くらいに手に取って、なんとなく一巻を読み終えた後に、面白かったので2~4巻まで一気買いして、寝る間も惜しんで2日で読み終えた、それが私と「八咫烏シリーズ」との始まりでした。その後、私の脳内が雪哉と若宮で爆発したことは言うまでもありません。雪哉が可愛いやらゲスいやら賢いやらで、大変なところに来てしまったなというのが本音です。若宮は若宮で、清々しいくらい自由人!その上、公式イケメン!こんなにおいしい要素が盛り込まれているのに、支部ではまだまだ未開発ジャンルなようで、もう好きに自分で書くしかないと思いました。もっと盛り上げたい! 今回、長束様が雪哉のことをどう若宮に伝えたのかな~と原作部分の下りで気になったので、そこを埋めようとしてたら雪哉は出てこなくなりました…。若宮&長束の兄弟っぽい距離の取り方って普通の兄弟とは違って、独特だろうなというのが個人的意見ですが、二人きりなら気安い雰囲気であってもいいのかな?というところです。2,770文字pixiv小説作品