これは我が八咫烏の故郷 山内が
その〝金烏〟の翼下で
滅びゆくまでを綴った記録である
概要
八咫烏シリーズは、阿部智里 による和製ファンタジー小説のシリーズ作品、およびその総称。シリーズ累計発行部数は200万部以上を突破。
作者は『烏に単は似合わない』で、早稲田大学在学中に松本清張賞を史上最年少で受賞、デビューしている。
2018年には松崎夏未による作画の漫画『烏に単は似合わない』が『コミックDAYS』(講談社)に連載。2020年8月25日発売の『イブニング』(講談社)18号より、第二作『烏は主を選ばない』が連載開始し、後に『コミックDAYS』に移籍。
NHKにて、2024年4月6日から『烏は主を選ばない』とのタイトルでアニメ化された。
作風
圧倒的なスケール感と細部に渡る異常なまでの想像力で描かれる大河ドラマのような和風異世界ファンタジーでありながら、緻密に構築されたミステリとしての側面も持っている。
ラストで全てを覆すどんでん返しは最早このシリーズの様式美である。また、1巻と2巻、5巻と6巻など対になることで一つの視点では描かれず「見えなかった部分」が後から描かれることもあり、読み進めるごとに世界がガラリと姿を変えていくのも特徴。
それをあっと驚くミステリと受け取るか、後味悪く肩透かしを食らうかは読み手の受け取り方によるかもしれない。(作者曰く、一巻を好きになってもらえるのは至難の業らしい)
一作目は本シリーズのプロローグでしかなく、物語としての輪郭を表すのは二作目以降になる。
宝石箱のように絢爛豪華な世界ではあるが、その中身は朝廷の権力闘争をはじめ、地下街なるアウトローの根城、階級差による価値観と意識の違いなど、どこもかしこも陰謀が渦巻いており、泥池を覆い隠す蓮の花のような構造をしている。そんな世界で描かれる人間ドラマとクセの強いキャラクター達が魅力の一つ。
一、二作目以降は人食い猿との戦いの火蓋が切られ、人間界によって侵食されていく異世界の存亡と根幹が主軸となっていく。
それまでも煩悶や葛藤などのエピソードはあったが、主人公の変貌や幸せから絶望までの落差、主要人物の死、仲間内での不和や対立など、容赦のなさが巻を経るたびにヒートアップする(地獄のココが楽園とかそんなことはない)。特に第二部は登場人物に思い入れがある読者ほどダメージを受ける展開が続くため、要注意。
そして同時に、本作は「忠誠とは何か」の物語でもある。ここでの忠誠とは相手の幸せを思う気持ちである。
群像劇として、視点人物の価値観や知識、思い込みが文章に大いに反映されているため「地の文に書かれていることが正しいとは限らない(あくまで視点人物の主観に過ぎない)」ことを念頭に置く必要がある。また登場人物の心情や事件の真相が明言されていなかったり、善悪の基準も一定ではないため、読者によって解釈が別れる部分が非常に多い。
世界観
日本神話にも登場する三本足の伝説の烏、八咫烏(やたがらす)。人の姿に転身できる八咫烏の一族を中心として物語が進行する。
彼らは人間界とは隔絶された山の中にある異世界、山内(やまうち)と呼ばれる場所に住み、平安時代のような暮らしを営んでいる。
用語
以下は公式ホームページより引用。
・山内(やまうち)
山神によって開かれたと伝えられる異世界。この地を統治する族長一家が「宗家(そうけ)」、その長が「金烏(きんう)」と呼称される。
東・西・南・北の有力貴族の四家によって東領、西領、南領、北領がそれぞれ治められている。
・八咫烏(やたがらす)
山内の世界の住人たち。卵で生まれ鳥の姿に転身も出来るが、通常は人間と同じ姿で生活を営む。
貴族階級(特に中央に住まう)を指して「宮烏(みやがらす)」、
町中に住み商業などを営む者を「里烏(さとがらす)」、
地方で農産業などに従事する庶民を「山烏(やまがらす)」、という。
3本目の足を縛られると、人の姿の八咫烏を乗せたり荷物を運ぶ「馬」になってしまう。切られると二度と人の姿に転身は出来ない。
・招陽宮(しょうようぐう)
族長一家の皇太子、次の金烏となる「日嗣の御子(ひつぎのみこ)」若宮の住まい。
政治の場である朝廷の中心地「紫宸殿(ししんでん)」ともつながっている。
・桜花宮(おうかぐう)
日嗣の御子の后たちが住まう後宮に準じる宮殿。有力貴族の娘たちが入内前に后候補としてここへ移り住むことを「登殿(とうでん)」という。ここで妻として見初められた者が、その後「桜の君(さくらのきみ)」として桜花宮を統括する。
・谷間(たにあい)
遊郭や賭場なども認められた裏社会。表社会とは異なるものの独自のルールが確立された自治組織で、幹部の住処に「地下街(ちががい)」がある。
・山内衆(やまうちしゅう)
宗家の近衛隊。養成所で上級武官候補として厳しい訓練がほどこされ、優秀な成績を収めた者だけが護衛の資格を与えられる。
・勁草院(けいそういん)
山内衆の養成所。15歳から17歳の男子に「入峰(にゅうぶ)」が認められ、「荳兒(とうじ)」「草牙(そうが)」「貞木(ていぼく)」と進級していく。
・羽林天軍(うりんてんぐん)
北家当主が大将軍として君臨する、中央鎮護のために編まれた軍。別名「羽の林(はねのはやし)」。
登場人物
第一部
【主要人物】
雪哉(ゆきや)
第二作目以降から登場。本シリーズの主人公の一人みたいなもの。
北家の地方貴族(垂氷郷郷長家)の次男。父など周りからはぼんくら呼ばわりされているが、育ての母親の梓をはじめ、故郷と家族のために優秀であることを隠し、ぼんくらを装うしたたかな計算高さを見せる賢さを持つ。
故郷垂氷郷にて故郷に尽くして生きることを望んでいたが、山内の平和を守るため奈月彦に忠誠を誓い、忠臣として成長していく。
本シリーズの主人公の一人みたいなもの。若宮、日嗣の御子で「真の金烏」。
大事な儀式をすっぽかしたり、遊びまわっている事から朝廷から“うつけ”と呼ばれるが、政治策略に長けた人物。
澄尾(すみお)
若宮の護衛として仕える山内衆の青年。西領有明郷出身の山烏。
若宮とは幼馴染であり若宮が信頼を置く人物の一人。
【宗家】
捺美彦(なつみひこ)
金烏代。長束と奈月彦、藤波の宮の父親で、大紫の御前と十六夜の夫。
大紫の御前(おおむらさきのおまえ)
金烏の皇后「赤烏」。南家出身者。政敵である若宮の謀殺を企む。女だてらに大変な策略家。
長束(なつか)
奈月彦の腹違いの兄。今上陛下と正室・大紫の御前の長子で正当な後継者であったが奈月彦の方に真の金烏の素質があったため日嗣の御子の座から降りる。
院号は「明鏡院(めいきょういん)」。
藤波(ふじなみ)
内親王。捺美彦と十六夜の娘で若宮・奈月彦の妹。藤波と呼ばれる。
あせびの母・浮雲が藤波の羽母であったのであせびとは面識があり「おねえさま」と慕っている。
【宗家に従う人々】
滝本(たきもと)
宗家に仕える女房。藤波の筆頭女房。「追憶の烏」にて一部主役。
松韻(しょういん)
捺美彦の秘書官の落女。松韻という名は男名であり、元皇后付きの女官であるため今上陛下の秘書官ではあるが実際には大紫の御前に忠誠を誓っている。
敦房(あつふさ)
南領・南大宮家出身。長束の側仕え。
路近(ろこん・みちちか)
長束の護衛。南橘家当主の子。弟に公近がいる。勁草院卒業生で勁草院を首席で卒業した経歴を持つ。
大柄な茂丸よりもさらに大きい巨躯。
【東家とその周辺】
第一作目の主役を務めるメインヒロイン。
春殿の姫。珍しい茶色の巻き毛と瞳を持つ東家の二の姫。可愛いらしく音楽の才に長け愛くるしい面差しを持った美少女。
腹違いの姉に代わりに登殿するが、大貴族に相応しい教養はおろか世間一般の常識にも欠け、後宮では物笑いの対象となる。幼い頃に若宮と出会った事があり、その頃から思いを寄せている。
遥人(はるひと)
東家当主。人の良さそうな笑みを浮かべながらのらりくらりと最後まで曖昧な態度をとり続け最終的には決定権を自分で握れるように仕向けるのが得意で計算高いため“腹黒”と言われている。
双葉(ふたば)
東家当主の娘。もともとは双葉が登殿予定であったがあばたが出来てしまい、あせびが登殿することに。
青嗣(あおつぐ)
東家の者で正室が既にいる。
浮雲(うきぐも)
あせびの母。あせびとは異なり黒髪が美しかったことで有名。捺美彦の時代の桜花宮春殿の姫。今上陛下に寵愛されていた。
うこぎ
東家の女房。あせびに仕える。経験豊かで四十路。元浮雲の女房。
怜(れい)
「はるのとこやみ」で登場した、倫の双子の兄。共に東本家で下男として働く。
倫(りん)
「はるのとこやみ」で登場した、怜の双子の弟。浮雲に恋をするが…
【南家とその周辺】
浜木綿(はまゆう)
夏殿の姫。
目鼻立ちのはっきりした気の強そうな美人。女性にしては背が高い。
男勝りな口調で話す、さっぱりとした気性の持ち主。
融(とおる)
煒(ひかる)
元南家当主で融の兄。「なつのゆうばえ」で登場。
夕虹(ゆうにじ)
煒の妻。「なつのゆうばえ」で登場。
撫子(なでしこ)
南家当主・融の娘。 目元のはっきりした、はきはきとした少女。漫画版でも登場している。
苧麻(からむし)
桜花宮登殿の際の浜木綿の女房。
早桃(さもも)
元は宗家の藤波の女房であるが浜木綿の登殿に合わせ夏殿に配属になり浜木綿の女房として仕える。
そばかすが特徴的。宮烏の出ではない。桜花宮で浜木綿に仕えている際にあせびと仲良くなる。
弟がいる。
【西家とその周辺】
真赭の薄(ますほのすすき)
西家の姫。若宮の母である十六夜と父親が兄妹で、若宮とは従姉弟同士。
薔薇色の肌と赤味がかった髪を持つ、絶世の美女ともいうべき佳麗の人。
派手好みできらびやかな衣服や装飾を好むが、うこぎからは悪趣味と言われていた。気が強く気位が高いが馬鹿ではなく知識もある。
顕(あきら)
西家当主。赤茶色の口髭をもつ。
顕彦(あきひこ)
西家の嫡男であり次期当主。真赭の薄、明留とは同母。「あきのあやぎぬ」時点で19名の側室がいる。
十六夜(いざよい)
明留(あける)
真赭の薄の弟。
幼い頃は腕白でよく外で遊んでは衣に穴を開けて帰ってくるので姉に泣きついて衣を繕ってもらっていた。
空棺の烏で本格的に登場。
千早(ちはや)
元は南風(はえ)郷出身の山烏。勁草院での雪哉、茂丸、明留の同窓。結(ゆい)という目の見えない義理の妹がいる。
菊野(きくの)
真赭の薄の元ねえやであり、彼女のことを「愛する主」として敬愛している。
【北家とその周辺】
白珠(しらたま)
冬殿の姫。色白で小顔、垂れ目。髪は一本一本が細い黒髪で綺麗に切りそろえられている。
下男の一巳とは幼馴染。
玄哉(げんや)
北家当主であり、羽林天軍(うりんてんぐん)を取り仕切る大将軍。白珠、雪哉は孫にあたる。
根っからの文官である他三家とは違い、己は武人あるという誇りを持っており、煮え切らないやり方を好まない。
六つの花(むつのはな)
北家当主・玄哉と花街の美女との子。美人の娘を授かるために玄哉が宮烏でない花街一の美女を妻にし産まれたが美人の容姿は遺伝しなかった。
喜栄(きえい)
北家当主の直系の孫。いずれ北家当主の座を引き継ぐことが決まっている健康的な肌色の青年。
雪正とは叔父・甥関係、雪哉とは従兄弟関係にあたる。中央にある朝廷に勤める官人、宮仕えをする事になった同郷の雪哉に親切にしてくれる。
一巳(かずみ)
北家の屋敷に仕える庭師の息子。北領出身の山烏(やまがらす)。
特別顔立ちが整っているわけではないが優しげな情の深そうな目をした若者。十二の頃に庭の手入れのため父親に連れられて北家に行った際に初めて白珠の姿を見て一目惚れをした。
茶の花(ちゃのはな)
白珠の女房。老婆。
【垂氷郷(たるひごう)】
雪正(ゆきまさ)
ぼんくらを演じる次男・雪哉を家族の中で唯一、ぼんくらだと思い込んだままどうしようもない次男に頭を悩ませている。
梓(あずさ)
雪正の妻で雪馬、雪雉の母。雪哉は自分の子ではないが自分の息子のように他の息子達とわけ隔てなく育てた。北家当主夫妻に娘のように可愛がられ、当主の娘である雪哉の母とは姉妹同然のように育った。
雪馬(ゆきま)
雪哉の腹違いの兄。北領垂氷郷郷長家長男、次期郷長。大変優秀な青年。年齢は雪哉より一歳上。
雪哉が自分より優秀であることに気が付いており、弟がぼんくらとして見られる事を嫌う。比較的端正な顔立ち。
雪雉(ゆきち)
雪哉の腹違いの弟。北領垂氷郷郷長三男。雪哉より五歳年下。雪哉は“チー坊”と呼ぶ。雪雉もまた雪哉をぼんくらだとは思っておらず、能力を隠していることをわかっていて兄としてよく慕っている。
冬木(ふゆき)(雪哉の産みの母)
「ふゆきにおもう」で登場。体が弱く長く生きられない事から父の玄哉が不憫に思い、好いている者の元に嫁がせる事にしたところ一目惚れであった雪正を指名し正室となった。無理をして子を作り雪哉を産むが、体がもたずそのまま亡くなった。
【仙人蓋(せんにんがい)関係者】
小梅(こうめ)
猿に襲われた栖合でたった一人生き残った少女。大きな猫目につややかな栗色の髪を持つ美少女。
宮烏に憧れを持っており、梓曰く、お調子者で誤解を受けやすい性格をしているが悪い子ではない。
また、雪哉に好意を持っていた。
治平(じへい)
小梅の父親。借金ばかり作っている小心者。
【谷間(たにあい)関係】
鵄(とび)
地下街(ちかがい)の頭領。谷間を治める親分達の中で最も力がある。
朔(さく)
地下街の王「朔王(さくおう)」と呼ばれた男。数十年前改革を起こして谷間を自治した。
銀髪の痩せた老爺。鵄らから「おやっさん」と呼ばれている。
くれ葉(くれは)
谷間の遊郭の遊女。辺りで一番の売れっ妓で、お忍びで通う宮烏までいる。飴色になるまで使い込んだ、鼈甲の花かんざしのようだと喩えられている。
【勁草院(けいそういん)関係】
茂丸(しげまる)
雪哉と同室の友人で雪哉が親友と認める人物。大柄な体型を持つ平民。弟、妹にみよしがいる。
雪哉が呼び始めた「茂さん」呼びが皆にも浸透し皆のまとめ役と目されている。
市柳(いちりゅう)
雪哉の一年上の同室の先輩。風巻(しまき)郷出身、郷長の三男坊で地方貴族。
雪哉とは同じ北領で幼馴染のような間柄だが因縁のある間柄。自分の同室の後輩として挨拶された際に絶叫している。
治真(はるま)
雪哉の二つ下の学年で後輩。雪哉を尊敬しており、同じく小柄ではあるが優秀な雪哉の例もあると見た郷長にそのまま入峰を推薦される。「追憶の烏」では雪哉の忠臣となっている。
桔苹(きっぺい)
雪哉の同期。勉強会仲間。東領の平民出身。
久弥(ひさや)
雪哉の同期。勉強会仲間。平民出身。お調子者。
辰都(たつと)
雪哉の同期。勉強会仲間。平民出身。
定守(さだもり)
雪哉の同期。北領出身。雪哉は貞木(ていぼく)まで面識がなかったが定守の方は一方的に雪哉をライバル意識していた。
公近(きみちか)
雪哉の先輩。
南橘家当主安近の息子で路近の弟。他人への侮りを隠そうともしていない態度であり、あまり関わり合いになりたくない感じの男。
【人間界】
葛野志帆(かどのしほ)
都内で祖母と二人暮らしの小柄な高校一年生。両親が交通事故で他界、叔父の修一に誘われ祖母、母の故郷の山内村(さんだいむら)の祭を見に村へ行くが山神の人身御供として生贄にされ山神を育てる母『玉依姫』となることになった。
久乃(ひさの)
志帆の祖母。山内村出身。厳格で責任感が強く、頑固な性格。
十九の頃に山内村に嫁ぎ、長男の修一と長女の裕美子を産む。三十七年前、夫が裕美子を生贄にしようとしていることを知り、娘を連れて逃げ出す。
【人外(猿など)】
椿(つばき)
宝の君。山神であるが実のところ半身であり山神の荒魂。『椿』の名は志帆が名付けた。
オオキミ
猿一族の長。大猿。黒髪の雌猿。元は猿の神。
谷村潤(たにむらまさる)・潤天(じゅんてん)
人間界で暮らす大天狗。銀縁の丸眼鏡をかけた三十代ぐらいの気のよさそうなおしゃれな男性。煙草を吸う。
人間界では東京住まいでいくつもの会社を経営している社長。奈月彦とは馴染みであり外界(人間界)の道具などを八咫烏らへ売る商売をしている。
原(はら?げん?)
潤天の部下の烏天狗。
第二部(最新刊までのネタバレ注意!)
【主要人物】
安原はじめ(やすはらはじめ)
たばこ屋カネイの店主。祖父の遺産を受け継いだため荒山の権利者である。
十歳になる前に祖父の安原作助に引き取られた安原作助の四番目の養子で、他の兄姉とは親子ほど年が離れている。安原作助のめちゃくちゃな旅に付き合わされた過去がある。
頼斗(よりと)
北家系列の北小路家の長子。尊敬している父の話から雪哉に憧れ、挨拶に行った際、雪哉の部下だった治真に山内衆になることを勧められ、勁草院を首席で卒業。山内衆になった最初の命令で留学を命じられ、三年間外界で過ごす。留学から帰ってきて半月後に安原はじめの案内役として任命される。
外界で一番おいしかったものはハンバーガー。
幽霊(ゆうれい)
自らをかつて殺された幽霊だと自称する、安原はじめを山内に連れて行った人物。
その目的は自分や自分の両親、大切な人達が殺されたことへの復讐だと安原はじめに語っている。
怖気をふるうような美女。
雪斎(せっさい)
第一部の雪哉と同一人物。尊称である博陸侯と呼ばれることが多い。出家しており、独身。
楽園の烏(およそ2015年)より十年以上前に外界に留学経験あり。その際は北山雪哉と名乗る。
「楽園の烏」の容姿は安原はじめ曰く、年齢不詳の感がある。
治真(はるま)
第一部に引き続き登場。雪斎の補佐をしている。副官として非常に優秀。
トビ
現在の地下街の長である。谷間が襲われた際に先代の鵄から名前を継いだ。曰く、どんな悪たれでも言うことは聞くからある意味立派な頭目であるらしい。
紫苑の宮(しおんのみや)
奈月彦の子。姫宮。奈月彦に似た、黒髪で大きな目。誕生したはじめは一度も笑わなかったが雪哉を見て初めて笑った。その後は雪哉に懐き、親しくなっていく。「追憶の烏」以降、行方が不明。
葵(あおい)、澄生(すみき)
茜の双子の姉妹。茜と違い、紫苑の宮の遊び相手を務められないほどに病弱で、地方の医者の家に預けているらしい。雪哉や治真は茜の顔は知っているが葵のことはあまり知らない。
後に落女となり、名前を男として澄生と名乗り、紫苑の宮や若宮に瓜二つの顔で、雪斎の前に現れる。
茜(あかね)
葵の双子の姉妹の片割れ。紫苑の宮より年少。浅黒い肌をした少女。至って健康で、ややお転婆。
刊行作品
第一部
第一作目【烏に単は似合わない 】
シリーズの原点。「桜花宮」を舞台に、四人の姫君による妃選びとそれに伴う陰謀が描かれる。
第二作目【烏は主を選ばない 】
「烏に単は似合わない」の若宮サイドで展開する、対になる作品。若宮と、主人公の雪哉が中心。
第三作目【黄金の烏(きんのからす)】
八咫烏を喰らう「猿」という異形の化け物が登場。以降は「猿」との戦いが軸になっていく。
第四作目【空棺の烏(くうかんのからす)】
雪哉含む生まれも育ちも異なる青年らの訓練所・勁草院での暮らしと人間模様を描く。
第五作目【玉依姫(たまよりひめ)】
舞台は現代日本。女子高生、志帆と山神の視点から語られる、所謂シリーズのエピソード0。
第六作目【弥栄の烏(いやさかのからす)】
第一部の完結編であり最終章。「猿」との大戦と、その結末。
幕間
烏の山
公式ホームページに掲載。これまでとは違うダークでホラーな要素が強まっている。
外伝作品
外伝と名は打ってあるが、第二部の「追憶の烏」で重要なキーワードになるため、第二部より先に読むことを推奨する。
【烏百花(からすひゃっか)-蛍の章-】
・しのぶひと
真赭の薄の短編。「わらうひと」と繋がっている。
・すみのさくら
・まつばちりて
大紫の御前に仕える落女、松韻の生い立ちと「烏は主を選ばない」その後の物語。
・ふゆきにおもう
雪哉の生みの母である冬木と、彼女に仕え後に雪哉の育ての母となる梓の話。
・ゆきやのせみ
訳あって食い逃げの容疑を着せられた若宮と、その潔白を証明する雪哉の話。
・わらうひと
真赭の薄の短編。「しのぶひと」と繋がっている。
【烏百花(からすひゃっか)-白百合の章-】
・かれのおとない
北領の平民の家に生まれたみよしと、優しい一番上の兄・茂丸の、「弥栄の烏」のその後の話。
・ふゆのことら
北領風巻郷の郷長一族の末っ子で「風巻の虎」と名乗り遊び暮らす市柳と、雪哉の過去の話。
・ちはやのだんまり
西家の御曹司の明留の優秀な近衛・千早の最愛の妹、結との交際を認めてほしいという若者が現れる話。
・あきのあやぎぬ
西本家の次期当主だが、「十八人の妻がいる」顕彦へ側室入りを決意した環が主人公の物語。
・おにびさく
貴族の必需品である「鬼火灯籠」を生業としている登喜司が主人公の話。
・なつのゆうばえ
南家で皇后になるべく育てられた大紫の御前の過去と、彼女を取り巻く異様な環境の物語。
・はるのとこやみ
楽人見習いの双子の兄弟。あせびの母、浮雲に恋した弟、倫を心配する兄、伶の話。
・きんかんをにる
若宮と、紫苑の宮が金柑を煮る話。第二部に入る前の平和な一幕。
・さわべりのきじん
未収録作品。金烏の治める山内で母とふたりで暮らす澄尾と、ある貴人の出会いを描く。
・きらをきそう
未収録作品。「綺羅絵」という版画を描くふたりの絵師にきた依頼と貴族の正室選びが関係した話。
その他
【八咫烏シリーズファンブック】
電子書籍のみの配信。キャラクターの相関図や作者へのインタビュー、読者からの質問とその答えなど。
第二部
第七作目【楽園の烏】
20年の月日を経た山内。謎の美女に誘われ、山内に訪れた安原はじめが主人公となっている。
第八作目【追憶の烏】
「楽園の烏」までの20年間に、雪哉含む登場人物たちに一体何があったのかが描かれる。
第九作目【烏の緑羽】
長束から始まり、路近、清賢、翠寛の過去が明かされる。今まで忠誠を向ける側から書かれることが多かったが、本作は忠誠を向けられる側の話と言っていい。
第十作目【望月の烏】
新たな金烏、凪彦の妃選びが始まる。時系列は楽園の烏の前。
漫画(コミカライズ版)
阿部智里(原作・監修)・松崎夏未(漫画)
・『烏に単は似合わない』講談社〈イブニングKC〉、全4巻
阿部智里(原作・監修)・松崎夏未(漫画)
・『烏は主を選ばない』講談社〈イブニングKC〉、既刊3巻
テレビアニメ
『烏は主人を選ばない』とのタイトルで、スタジオぴえろの手によりアニメ化。2024年4月6日から9月21日まで、NHK総合にて放送された。範囲は3巻『黄金の烏』まで。
関連イラスト
関連動画
第1弾PV
関連タグ
和風ファンタジー 異世界ファンタジー 八咫烏 異世界 宮廷物語