草摩晶
そうまあきら
CV:石田彰
作中では故人。回想と第一話で透が聞いた「神様と十二支の話」で横顔が登場している。
古参使用人達からは子供の頃から溺愛されていたが、病弱で昔から医師に短命だと宣告されていた。
自分の命が短い悲しみからか、当時子供だった紅野から見ても儚げで浮世離れした美しさを醸し出していた。
一人っ子だったようで十代から周囲は晶の縁談相手を探し続けていたが、先方の写真と釣書(お見合いをする前にまず相手に見せる物)すら晶の目に触れさせず突き返し、草摩家当主の彼をめぐって様々な思惑が飛び交っていた。
傍仕えの使用人で彼の抱える寂しさに唯一気付き、涙を流して寄り添ってくれた楝と両想いになり、古参使用人達の猛反対を押し切って結婚する。
この時から古参使用人と楝の対立が始まり、元使用人の楝を当主夫人として認めないと追い出そうとした彼女たちに対し、古参に反発していた新参使用人が楝の直属使用人となって夫妻の後ろ盾となって派閥争いが始まってしまう。
跡取りの慊人の誕生で対立は解消されるどころか、慊人だけを古参使用人や物の怪憑きたちが崇め、晶も同様に慊人を溺愛したことで逆に深まる。
晶だけは一番愛しているのが楝だとゆるぎなかったのだが、慊人を出産前から嫉妬心で産まないと暴れたり、生まれたから一度も抱っこせずに慊人が「神」であることを全否定する言動から家族三人で揃った場面はいずれも壮絶な夫婦喧嘩、子を攻撃する母と庇う父、父にしがみついて怯える子という荒んだ家庭となっている。
慊人が産まれると「神」を慕う物の怪憑きたち以上に溺愛し、誰よりも夢中になる。
彼からすれば愛する楝との子で、草摩一族の「神」が自分たちの子として産まれたことを喜び、周囲も祝福していた。
しかし楝がかつて自分同様に寂しさを抱えていたことに気が付かず、自分の死後に古参使用人が楝を変わらず嫌っているのがまずいと危機感も抱かず、死ぬまで一日中慊人と一緒に過ごすだけである意味で元凶とも言える。
短命で何もできない無力な自分の存在価値を証明する「特別な子」と慊人に何度も言い聞かせ、
それが楝の嫉妬心を生んで楝と慊人の不仲の原因となってしまう。
しかし実際に晶が愛していたのは楝のみであり、余命幾許もない自分と楝の「特別な」関係を主張する存在として「特別な」慊人を愛しているに過ぎなかった。
慊人が生まれたことを楝に一番喜んでもらいたかったと伝えられなかった無念を口にし、最期に呼んだのは慊人ではなく楝の名前だった。
晶の最期は慊人のトラウマとなり、当主派の「晶さんは誰よりも慊人さんを愛している」「神として特別な存在だと証明することが、晶さんとの絆を証明する」という言葉に縋り、物の怪憑きとの絆の強さを誇示する言動に走っていくようになる。
また信じていた父に愛されていなかったショックから「信じられるのは絶対に自分を裏切れない物の怪憑きとの絆だけ」と物の怪憑きたちに執着する原因ともなってしまった。
彼自身は「ただ死ぬだけの男だった」と卑下しており、永遠や絆への憧れが強く、その夢を子供である慊人に託していた節が強い。
慊人に「特別な子」と言い聞かせ「(自分と違って)お前に約束されたのは永遠で、誰(物の怪憑き)もお前を置いていかないよ」という言葉に縋らせた結果、呆気なく訪れた永遠の終わりに慊人は唯一縋れる心の拠り所が失われる恐怖に陥ってしまう。