概要
主にスチロール樹脂素材で形成されたプラモデルのランナー・ゲート切断用に開発されたニッパーの一種。
これまでの模型用ニッパーは対象の切断を刃先より使用者の握力に依存していたのに対し、薄刃ニッパーは鋭利な刃先での切断に依存している。このため軽い力での対象の切断が可能で、切断時に発生する独特のスナップ音がほとんど発生せず、手首に来る負担もかかりにくい作りになっている。
また使用されているバネもそれまでメジャーだったトーション式ではなく、圧縮コイル式のものが使われているケースが多く、以前のニッパーとはほぼ別物と言ってもよいほど一線を画した代物となっている。
その特殊な製造工程故に値段は最低でも原価2000円を超えるが、これを持っている持っていないではプラモデル製作の進捗も雲泥の差が出る。
近年のプラモデルは細かいパーツ・ゲートも多く、特にバンダイ製のプラモはパーツを抉り易い「楔型ゲート」が使われているため、「持っていなければモデラーとして論外」と呼ばれるほど重要アイテムとなっている(ただしバンダイ製でも子供向けプラモだと手もぎ用の「タッチゲート」を採用している。もぎ取った跡は綺麗ではないが)。
少なくともこれを買う見返りはお値段以上が保証されるのは間違いない。
刃先が鋭利故に慎重な管理を要求されるのは言うまでもないが、強度については割と頑丈でスチロール樹脂やABS以上に硬いものやプラ板などの極端に面積が大きいものを切るなどのバカな行為さえしなければそう簡単には破損することはなく、基本的には長く使えるものばかりである。…アルティメットニッパーを除けば。
ただし刃先は金属で出来ているため、塩分を帯びている指先で直接触れるのは錆などの劣化につながりやすい(一般のニッパーにも言える事だが…)。なので出来ればゴッドハンドから発売されているニッパーメンテナンスセットで定期的にメンテナンスをする事も推奨される。
代表的な薄刃ニッパー
※ミネシマとゴッドハンド(およびエンジニア)以外はあくまでも模型メーカーでしかないので企画販売するだけのOEM商品である。
タミヤ
プラモ用ニッパーとしてはド定番。これを扱っていない模型店は無いと言っても過言ではないほど入手性が高く(流石にデパートや電気店の玩具コーナーでは1000円以下のニッパーしか扱っていない事も多いが)性能も安定している事から、初心者には真っ先にお勧めされる。
グレードアップ版の先細薄刃ニッパーも発売されたが、通常の薄刃ニッパーでも充分なスペックを誇る(と言うか切れ味だけなら通常版の方が高いと言う噂も)。
上述したバンダイ製楔型ゲートとは非常に相性が良く、皮肉にも(プラモデル産業で)競合相手なのに切断に最も適したニッパーとなっている。
ミネシマ
タミヤに次ぐ定番ブランド。2021年には片刃ニッパーの発売も開始した。
グッドスマイルカンパニー
バネに圧縮式の鉄製バネではなくプラスチックバネを使用している珍しい商品。黒(ミディアム)と黄色(ハード)の2種があるが、前者はほぼ使い物にならないのは有名な話。
タミヤよりも切断力が強く頑丈だが、その分切断面に巻き込む面積も大きくパーツがえぐれやすいデメリットも抱えている。その結果タミヤよりも慎重な取り回しを要求される曲者となっている。
ゴッドハンド
両刃使用のニッパーも発売してはいるものの、薄刃ニッパーはほとんど片刃形状。
もはやパーツを切り離すというより削ぐと表現した方が妥当とも言える切断力を誇る代わりに破損リスクも大きいアルティメットニッパーがあまりにも有名。
アルティメットニッパーの切断力を落とした代償に脆さをカバーしたブレードワンニッパーなども存在するが、こちらも他社製より切れ味で群を抜いているのは変わらない。近年名前を見かける事が多くなったコトブキニッパーという商品もここからの販売であり、言わばこれもブレードワン同様に亜種のような存在である。
なお、バンダイとはラブライブ!サンシャイン!!のFigure-riseBustシリーズと連動した限定版ブレードワンニッパーを発売するほど親密な関係だが、実は片刃構造という形状から垂直面での切断を要求されるゴッドハンド社製ニッパーとバンダイ社製プラモデルの楔型ゲートとの相性はあまり良くなかったりする(一応、公式で「片刃ニッパーで楔形ゲートを綺麗に切る方法」を発表しているが、ぶっちゃけ手間を掛けてまで片刃ニッパーに拘る必要は無い。逆に手間を惜しまない人ならカッターナイフややすりを使うし)。
バンダイ
ガンプラ用と称して(ネジザウルスで有名な)エンジニア、およびGSIクレオスと組んで二種類のニッパーを発売。タミヤのライバルになるかと思われたが、初版は(特に高い方は)精度が悪すぎて大顰蹙。はたして巻き返しなるか?なお天下のバンダイ故に入手性は高い。
余談だが『ポチっと発明ピカちんキット』用としてタッチゲート用ニッパーも存在する。刃が付いておらず引き千切る方式であり、子供が雰囲気を味わう程度のものでしかないが。
bonds
2020年に突如「ヌルっと切れるニッパー」を引っ提げて現れたダークホース。
安定した供給でアルティメットニッパー難民相手にシェアを伸ばした。
と言うか、アルティメットニッパー難民だった社員が始めた事業であり、元々はプラモとは無縁だった会社である。
実は中国製だが、日本で検品及び再研磨する事で品質を保っているとの事。
アルティメットニッパーと並び「左手用」があるのも利点(ゲート位置の問題から、片刃ニッパーは左右二種類あった方が綺麗に仕上げられる)。
その他
ハセガワや童友社も高額ニッパーを発売している(逆に廉価ニッパーは扱っていない)。