概説
【かちょう/ぶんちょう】とも訓む。
就寝時に蚊をはじめとする虫が寄り付かないようにする。
目の細かい大きな網布を縫い合わせ、天井から吊るした際に布団やベッドを覆って囲うようにしたもの。
発祥は定かではないが、古代エジプト王朝末期・クレオパトラの時代には存在して使用されていたという。
日本には中国を介して渡来し、長くは貴族をはじめとした身分の高い家でのみ使用されていたが、江戸時代には庶民にまで下って行商が売り歩くまでになった。
網の繊維は麻が多いが、昨今は化学繊維でも作られる。
主に麻を使ったものは「萌黄の蚊帳」と歌われ、行商が売り歩いたという。
軍事面でも衛生管理のために重宝され、大日本帝国軍も南方進出の際にはテントに持ち込んだとされる。
さらに現在は東南アジアをはじめとして、マラリアやデング熱など蚊を媒介して発生する伝染病の発症を予防するとして大いに注目されている。中には「最も蚊を原因とする病気を予防できる器具」と称賛する研究者もいるという。
ただ、蚊帳の内に入り込んできた蚊についてはどうしようもないため、蚊帳を張る際にはあらかじめ蚊が入ってきていないことを確認しておこう。
また目が細かすぎると羽虫も通さないが、今度は風を通しづらくなるため、蒸し暑くなることもある。
日本では田舎の夏の風物詩と認知されて久しく、あまり見かけなくなってしまったものの、現在「蚊取り線香や殺虫剤を利用しない新しい虫除け」として再注目され、通販市場を中心に販売されている。