概要
踊り場姫コンチェルト(The revolving star & A watch maker)とは、岬鷺宮(みさきさぎのみや)による小説である。
静岡県浜松市にある高校の吹奏楽部を舞台として、真面目で堅い演奏ゆえに表現ができない梶浦康規と、天才的な音楽の才能を持ちながらも破滅的な指揮を振り続ける「踊り場姫」藤野楡との邂逅と変化を描いた青春吹奏楽ストーリーが繰り広げられる。
2016年7月23日に発行され、メディアワークス文庫より出版されている。
作品情報
題名 | 踊り場姫コンチェルト |
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作者 | 岬鷺宮 |
イラスト | mocha |
デザイン | 鈴木亨 |
媒体 | 小説 |
ジャンル | 青春 部活 音楽 |
出版社 | アスキー・メディアワークス |
レーベル | メディアワークス文庫 |
巻数 | 1巻 |
発売日 | 2016年7月23日 |
ストーリー
全国大会を目指し、県立伊佐美高校吹奏楽部に入部した梶浦康規。
真面目な演奏しか取りえがない康規が命じられたのは、天才的な音楽の才能を持ちながら、破滅的な指揮を振り続ける問題児「踊り場姫」藤野楡を、まともな指揮者に生まれ変わらせること。
周囲に関心がなく自分の思う指揮を振る楡には取りつく島もなく、演奏は空回りを続けるばかり。
どうすれば、彼女と周囲の歯車を噛み合わせ、美しいコンチェルトを奏でることができるのか……。
青春の踊り場にいる彼女と僕の、吹奏楽ストーリー。
(文庫本「踊り場姫コンチェルト」裏表紙より抜粋)
登場人物
伊佐美高校吹奏楽部
梶浦康規(かじうらこうき)
本作の主人公。トランペットを担当する1年生。
楽器の実力は高いものの、演奏が堅く四角四面であり「感情がこもってない」「機械っぽい」といった評価を下されている。
実家は祖父の代から続く時計屋で、小さな頃から時計の修理を見るのが好きだった。
自作の曲を作ってこっそりネット上にアップするという、誰にも言えない秘密を持っている。
藤野楡(ふじのにれ)
高校生にして天才的な音楽の才能を持つ、精緻に整った容姿と流れるような黒髪の2年生。
好きな音楽を聴いていると踊り始める癖を持ち、誰もいない夜の校舎の階段で踊るその美しい佇まいから「踊り場姫」の異名で呼ばれている。
高校生とは思えない天才的な作曲の才能を持っているものの、演奏の指揮が壊滅的なまでに自由奔放で、彼女の振った曲はことごとく滅茶苦茶なものとなる。
この状況を見かねた吹奏楽部の主要メンバーの意向により、彼女と正反対の特性を持ったトランペットパートの1年生・梶浦康規との練習を始めることとなる。
夏野伽耶(なつのかや)
康規とは幼稚園の同じ組になって以来の仲で、中学時代も同じ吹奏楽部に所属し、今でも家族ぐるみで仲良くしている。
その様子から、旧知の生徒からはしばしば「夫婦」とはやし立てられている。
薬師ヶ丘莉乃(やくしがおかりの)
トランペット担当。康規と同じ中学の先輩である2年生。
中学時代も吹奏楽部に所属しており、康規と一緒にトランペットを演奏していた。
短めの髪と明るい表情、高めのテンションが特徴で、吹奏楽部の2年生代表を務めるほどの高い実力を持っている。
康規の誰にも言えない秘密を知っている唯一の人物。また、藤野楡の幼馴染でもある。
金山大介(かなやまだいすけ)
チューバ担当。吹奏楽部の部長を務める3年生。
高い背に穏やかな顔、長めの茶髪の柔らかな雰囲気を持つ「優男」だが、その印象にそぐわず語られる言葉は端的でクレバー。
伊佐美高校吹奏楽部がコンクール全国大会に出場するための鍵を藤野楡に見出し、梶浦康規に彼女の練習指導をするように頼み込む。
香原(かはら)
トロンボーン担当。吹奏楽部の副部長を務める3年生。
クールでさばさばした印象の女子生徒で、編み込まれた黒髪と少し崩した制服の着こなしが特徴的。
浜松市内最大の進学塾「東邦予備校」に通う、学年トップクラスの成績の持ち主。3年生の金山大介、2年生の薬師ヶ丘莉乃と並んで「東邦の三賢者」と呼ばれている。
山名(やまな)
ホルン担当。2年生の男子生徒。
藤野楡が吹奏楽コンクールの指揮を振ることに懸念を示し、別の打開策を提案する。
錦戸(にしきど)
トロンボーン(※)担当。2年生の女子生徒。
山名と同様に、藤野楡が指揮を振ることに否定的。彼女をかばう梶浦康規と言い合いになる。
(※作中の261ページには「サックス」の記述がある)
作中に登場する楽曲
たなばた(The Seventh Night of July ~TANABATA~)/酒井格
(梶浦康規の中学2年生の時の吹奏楽コンクール自由曲。作中には回想として登場。
忘れ物を取りに夜の校舎に戻った梶浦康規が、ふいに見上げた夜空を見た時にこの曲を思い返している)
愛するデューク(Sir Duke)/スティービー・ワンダー 編曲:岩井直溥
(浜松駅前の『プロムナードコンサート』における伊佐美高校吹奏楽部の演奏曲として登場)
花の序曲/作曲者不詳
(伊佐美高校吹奏楽部のコンクール課題曲として登場。曲は架空の物である。
Andante(歩くような速さ)のテンポと、ひらひらと風に舞うような色鮮やかなメロディ、トリッキーな変拍子が特徴となっている)
曲名未定/藤野楡
(伊佐美高校吹奏楽部のコンクール自由曲として登場。藤野楡の自作によるABA形式(三部形式)の吹奏楽曲。
華やかなファンファーレ、シンプルなフレーズの予想外の噛み合いを効かせた絶妙なオーケストレーションの前半部、胸が締め付けられるような切なく甘やかなメロディの中間部、
そして勇壮で高度なバッキングのもとに中間部の美しいメロディを聴かせる「星空が広がった」ような雄大なクライマックスという構成で出来ている。
藤野楡自身が制作し、インターネット上の動画サイトにアップロードしたMIDI音源の動画は、1か月で21万再生という驚異的な再生回数を誇っている。
また、当初は曲名が無かったものの、梶浦康規と藤野楡の触れ合いを通じて、改めてこの曲に相応しい曲名がつけられる事になる)