その名の通り、帽体の外殻は鋼鉄製である。例外は特殊繊維に樹脂を浸透させた『88式鉄帽』。
「鉄鉢(テッパチ)」「鉄兜(テツカブト)」と呼ぶことも。
旧日本軍の鉄帽
日本における本格的な戦闘用ヘルメットの鏑矢となったのは、1930年(昭和5年 皇紀2590年)頃に制式となった九〇式鉄帽である。
当初は「兵器」の一種であるとされ『鉄兜』と呼ばれていたが、昭和7年に「被服」の区分となって『九〇式鉄帽』となった。
1938年(昭和13年 皇紀2598年)頃には、小銃弾への耐久性を強化した後継の『九八式鉄帽』が制式となるが、他の旧日本軍の物品と同様に終戦までに置き換えるに至らず、双方が使用された。
陸軍と海軍の両方で使用され、陸軍のものは帽章が五方星。海軍のものは桜に錨、或いは単に錨の帽章がついた。
- 戦闘帽
鉄帽とほぼ同時に、鉄帽の中に被る戦闘帽(略帽、戦斗帽とも)が開発された。
戦闘帽は鉄帽を着用した際により安全で快適に着用できるほか、従来の軍帽(官帽型の制帽)に比べると見栄えは劣るものの実用性は比較にならないほど上であった。
- 構造・着用法
内装は3枚の革とそれを結ぶ紐で、頭形に合うように調整する。
顎紐は、左右耳の上と後頭部にループがあり、そこに長い顎紐を通す。
顎紐は、所謂「兜」と同じ結び方となる。長い顎紐は、たすき掛けで携行する際にも便利だったという。
類似品 戦後の利用
類似品に、民間の警防団などが使用していた『防空鉄帽』が存在した。
これは、軍用より材質や構造がやや劣るものであった。
一方で、旧日本軍の鉄帽は戦後も使用された。
警察では、銃器犯罪や暴動などに備えて、アメリカ製の『M1ヘルメット』などに混じって、旧日本軍の鉄帽が使用されていたという。
各都道府県警によって詳細は異なるものの内装や顎紐が変更されたほか帽体が濃紺に塗られ、正面には旭日章が描かれることが一般的であった。
これらの、いわゆる「鉄製の鉄帽」は平成初頭まで使用された。
警察予備隊・保安隊・自衛隊
日本の再軍備が決定されてからは、主にアメリカ製の装備品類が供与されていたが、これらの国産化が課題となり研究が進められた。
保安隊の頃には、神戸製鋼所で『M1ヘルメット』とほぼ同等品の鉄帽の製造が始まった。
自衛隊発足後は、『66式鉄帽』、『88式鉄帽』が開発された。
これらのヘルメットは、いずれも外国軍のものを参考にしたものであるが、伝統的に何も「鉄帽」と呼ばれている。