概要
長い黒髪に黒縁眼鏡で背の高い女性。DS研の客員教授を務めていた「裏世界」研究者で、同期の小桜はその手伝いだった。本編開始の三ヵ月前に行方不明になっている。
裏世界の調査の手を広げようと、小桜を探索のパートナーに誘ったものの固辞されたため、代わりの人材をあちこちでスカウトしていた。仁科鳥子、瀬戸茜理もその候補である。
小桜に言わせれば、
『寄ってくる人間を片っ端から魅了して、都合よく利用する』
『他者をたぶらかすことに長けたアルファ・フィメール』。
その言葉通り、実際に相対すれば、敵対または反発するような感情を抱く者、警戒していたり強く憎悪している者であっても、魅せられ、心酔し、取り込んでしまう力を有する。これは魅力や魅了、カリスマや暗示・催眠といった言葉で説明できる程度のものではなく、『ただそこにいるだけで、人を支配できる』という、異能とも呼ぶべき強烈な力である。
※ちなみに「アルファ・フィメール」とは、動物行動学の用語で、「第一位のメス」。動物の群れの中で、リーダーまたは支配者として群れの頭に立つメスの個体を意味する。
ファイル7で、瀬戸茜理に猫のストラップを手渡しており、彼女を「猫の忍者」の怪異に襲わせるよう仕向けていた。また、ファイル10においても市川夏妃に遠目で目撃されていたが、「うちあの人(冴月)、なんか嫌だったんすよね」「OBのセンパイとかとは全然違う怖さってか、気味悪かったんで」と、空魚に伝えている(ちなみに冴月は、夏妃本人とは面識はない)。
ファイル8にてコトリバコにまつわる一件で空魚の前に姿を現し、何らかの思惑で裏世界に近い存在となっていることが示唆されていた。
その際、空魚の耳元でとある言葉をささやき、空魚を恐怖させている。
ファイル11で、潤巳るなの引き起こした騒動の末、その姿を現すが―――
また、ファイル21、22では、空魚の前に再びその姿を現し、まるでナンパするかのようにアプローチしている。
この時にも、空魚は頭では抗い、敵意を示してはいたが、少し会話しただけで冴月に気を許しかけてしまっていた。鳥子の事もあり、強く警戒していたにもかかわらず、空魚は相対した冴月の事を「好きになりかけている」と自覚していた。
ファイル24に登場した辻も「なんかヤバそうだったから、こっちもあんまり近づかなかった」と、冴月を危険視していた。
アニメでは、原作初期の未登場回をアニメ化したために、ほとんど出番はなかった。
しかし、七話「果ての浜辺のリゾートナイト」で、裏世界からゲートで逃げる空魚と鳥子を見つめていたり、アニオリ回の十話「エレベーターで焼肉に行く方法」の、裏世界に続くエレベーターのゲートに出現したりしていた。
また、八話「猫の忍者に襲われる」、九話「サンヌキさんとカラテカさん」でも、茜理や夏妃の口から、交流・目撃した旨を語られている。
人物
以前に小桜と友人として交流していた頃には、小桜とともに普通の友人関係を築き、一緒に食事したり駄弁ったりしていた。小桜自身も「楽しかった時もあった」と言っており、ごく普通の友人として接していたことがうかがえる。
小桜は石神井の自宅に招いており、小桜邸前でも、一緒に写真を撮ってもいた。
しかし、小桜は同時に「あいつマジに人でなしだったからな」とも言っており、自分の望みや目的のためには、手段を選ばない一面も有していた様子。
他人を人とも思わず、自分の都合のためだけに利用し引っ掻き回し、必要なくなったら後始末もせずいなくなっていたらしい。
このような理由から、小桜自身は彼女に対し、愛憎入り混じった感情を抱いている。
実際、仁科鳥子と瀬戸茜理は、怖がりの為に裏世界内の探索が出来なかった小桜の代替として探し出した人材である。
上記にあるように、裏世界の探索のパートナーとするために、何人かの人材を探し出してはスカウトしていた。その眼鏡にかなったのが鳥子である。
※なので、劇中には描写は無いものの、鳥子と茜理以外にもパートナー候補はいたものと思われる。
鳥子に対しては、日本の学校生活になじめず、友人も出来ずにいた彼女の家庭教師になる事で、勉強以外の様々な事を教えていた。そのため、鳥子にとっては孤独から救ってくれた存在であり、特別な感情を冴月に抱いていた。物語の開始当初から、裏世界に単独で赴き冴月を探していたのも、この想いがあっての事である。
しかし冴月自身は、鳥子に対してはどのような感情を抱いていたかは不明。
潤巳るなとも、ネットの動画サイトのASMR動画からアプローチし、魅了し自分を崇拝させ、声の力を与え、彼女にカルト集団を作らせていた。
その事も、自分の都合と目的のためだけに行ったらしい。
DS研に在籍中は、裏世界へは直接的、および即物的で強引なアプローチを行っていたらしく、「怪奇現象の起こった現場や事故物件などを、裏世界への侵入に用いていた」と、汀は語っている。
また、そうした場所には「裏世界の生物やアーティファクト(品物)がこちら側に漏出していることが多い」とも仮説を立てていた。
多くのアーティファクトを持ち込んでいたが、辻は「(コトリバコなどの)一部のUBアーティファクトは、実は冴月が拾ってきたのではなく、UBL(裏世界)で自作したんじゃないか」という推測を述べている。
実際、彼女が持ち込んでいたアーティファクトには、最初から名前が付いているものも多く、その時点でおかしいと思われていた(そのため、辻は怪しいと思った品物は別にして保管している)。
黒革のカバーを付けたB5サイズのノートを有しており、それに様々な事を書き込んでいた。通常の人間では読めない、裏世界の文字で書かれているが、空魚の(裏世界にて変異した)目ならば読む事が出来る。
しかし、それを読むと……、
行方不明となった詳細は劇中で描かれておらず、具体的に何が起こったのかは不明(9巻時点)。しかし「裏世界に呑み込まれて、戻れなくなった」「それにともない、人外の存在に変貌した」事は確実らしい。
やがて、彼女と決定的に決別するべきと判断した空魚が、ある事を思いつき実行せんとするが、それに対しても抗い、空魚たちを危機に陥れようとする。
黒のワンピースを良く着ていたらしく、その姿で現れる事が多い。
余談
劇中で行っていた事は、言ってしまえば、
- 小桜、鳥子、茜理、るな。彼女たち全員にコナをかけ、なおかつ彼女らを捨てた。
- そして、別の女性(空魚)にも言い寄った。
……という、「浮気者のハーレムの長」とも言える行為である。
小桜の言う通り、人でなしと言われても致し方ないと言える。