概要
ファイル11『ささやきボイスは自己責任』から登場した女子高校生。
その制服はセーラー服とカーディガン。
髪は大分長く、三つ編みを頭の横で丸く結んだ後に、後ろに流した髪形をしている。
いわゆる「自己責任系」のネットロアを動画サイトでばらまくYouTuber。市川夏妃が「サンヌキカノ」の怪異に悩まされるようになったのは、彼女の怪談動画を見てかららしく、空魚と小桜は「不特定多数に怪異を伝染させる」意図を有しているのではないかと推測していた。
その声に「人を操る力」を持ち、この声により多くの信者を擁し、カルトめいた集団を作り上げた。声質や発声については、空魚いわく「訓練を受けたものではなく、芝居がかったところのない、素人の声」。
しかし、YouTubeのチャンネルを開いて声を聴いた時に、空魚は「ぞくぞくっと耳から首筋、背中へと、冷たい痺れが背骨に沿って何かが流れ込んできたような感覚」を覚えている。
閏間冴月に心酔し崇拝、ハンドルネームも彼女の名前に由来している(空魚は本名を「聞いたけど忘れた」)。知識量や人生経験などは高校生の平均的なそれだが、自身の『声』の力を有してからは全能感に浸り、冴月を除く自分以外は格下の存在と見下している。そのため、他者に対しては嘲り見下すような口調で接している。
しかし、思慮や思考などは基本的に普通かつ平凡な高校生のそれであるため、単純な一面も有している。
行動
配信は中学のころから行っていたが、あまり人気は無かった。しかしある時、ASMR動画を漁っていた際に、冴月のものと思しき動画『ブルーワールド』を聞く。その動画に『神』を感じ取り、気が付いたら自身の声の能力を手に入れたらしい。そして、冴月を崇拝しだしたのもこの時から。
※『ブルーワールド』は、再度のアクセスはできず、この後に消えてしまっている。
以後、会った事の無い冴月に接触したいがために、実話怪談「山の牧場」「地下のまる穴」をベースにした施設を飯能の山中に作り出した。この施設には、あえて裏世界の怪異に接触させて変異させた、様々な能力を有した第四種接触者も閉じ込めており、るな自身、およびカルト集団の戦力や道具として確保している。
後述の「ありがとう女」も、その一人。
この第四種とカルト集団を率いて、空魚と小桜を拉致。DS研を襲撃した。
なお、彼女は自身を含め、裏世界の第四種接触により会得した能力、およびその能力者を『ギフテッド』と呼称する。
また、アクセスした動画から、裏世界の事も『ブルーワールド』と呼称している。
※以降は作中のネタバレ有注意
拉致と襲撃
ファイル11『ささやきボイスは自己責任』にて、空魚と小桜を自身のカルト信者たちを用いて拉致し、「山の牧場」に二人を監禁。声の力を用いて小桜から情報を引き出し、自身の配下の第四種の力を用いてDS研を襲撃する。
DS研のアーティファクト保管庫から「閏間冴月のノート」を持ち出す。しかし鳥子に相談された汀により、空魚と小桜は救出され、更に空魚の目の力で信者も無力化される。
だが、アーティファクトの『鏡石』から、閏間冴月が出現。
鳥子と小桜より先に進み出たるなは、冴月に『るなはあなたのしもべです』『ブルーワールドに連れて行ってください』と懇願する。
しかし、危険を感知し阻んだ「ありがとう女」……るなの母親の両目を、冴月は潰し殺害。更にるなの顔にも手をかけ、その口を裂いてしまった。
空魚と鳥子により、そのまま裏世界から運び出され、助け出される。
襲撃の後
この後、ファイル12『あの牧場の件』にて、信者たちはDS研の医療施設に送られ、空魚の目と鳥子の手により、『声』による信仰心を抜かれ元に戻る。
ではあっても、喪失感に泣き出したり、洗脳された時の異常状態を記憶していたりと、ただでは済まない状態だったが。小桜曰く「(るなの声による洗脳は)強力だが引っこ抜くだけで解除できるんだから後始末は楽だ。普通の洗脳だったらデプログラムの時間がかかる。それに比べればまだマシ」
ファイル20『Tは寺生まれのT』にて再登場。DS研医療施設内の特別あつらえの病室にて、軟禁状態にされていた。
その際、動画やゲームなどは許されたが、ネットの使用は不許可(書き込みや音声配信などから、悪影響を与えないため)だったため、退屈を覚えていた。
冴月により裂かれた口元には、治療を受けて傷はふさがったものの、傷跡が刻まれてしまっている。
なお、傷跡に関しては「冴月さまにみずから記していただいた聖痕」と、筆談で述べている。この時も鳥子に対し「冴月さまの手にふれられた事をうらやんでいる」「同じ顔になればにあいますよ」などと煽っていた。
ではあっても、母親を殺された事には返答を濁していた。
また、この時には空魚に対し、「(空魚は)おこってるのがすてき」「(空魚と)ともだちになりたい」と、本気なのか嘘なのか分からない事を伝えている。
この後に「寺生まれのTさん」の怪異がDS研を襲撃。その際に、収容されていた第四種たちを部屋から逃がした『Tさん』にるなも襲われたが、声を用い『帰れ』と命じ追っ払う。そして、第四種たちへ励ます言葉をかける事で、懐かれてしまった(話しかけても通じているか分からないため、歌を歌って聞かせていた)。
曰く「同じブルーワールドのギフテッド同士、なんとなく意思が通じちゃうんですよね」
空魚はこの時にるなを目で見て、「喉元にわだかまっている燐光がちらつく」のを見ている(銀色の光が、喉を中心に背骨に沿って上下に伸び、脳と脊髄がるなの体内で生き物のように揺らめいている)。
空魚からの依頼と、冴月との決別
「Tさん」の件が終わった後、ファイル22『トイレット・ペーパームーン』にて、閏間冴月に対処するため、空魚の提案で協力を依頼された。
この時も、冴月の事を崇拝していると言ったものの、空魚に「母親を冴月に殺され、むちゃくちゃ怒っている」事を見抜かれ指摘される。更に『残る一生、DS研に居たいか否か』を空魚に訊ねられ、「居たくない」と返答。
しかしこの時、「『声』で、何をするかわからないから、閉じ込められている。だれも閉じ込めたくはない」と空魚に言われ、
「ここの人たちも私を放り出す」「私なんか要らないから厄介払いしたい」と怒りをあらわにする。
が、「声を使わないと約束するなら、何もせず解放する」と言われ、協力する事に。
その約束通り、ファイル24『月の葬送』で葬式に参加。その時に、裏世界の深部にまで初めて足を踏み入れる。
葬式の会場で、こっくりさんを行い、その際に『声』を使って冴月を探すように言われ、実行。
その際に、冴月に会えたことを嬉しく思うと言った後、「なぜお母さんを殺したのか」という質問をして、「もういらない(から殺した)」と返答されて激怒。自身の『声』を用いて直接冴月を葬ろうとするも、冴月の姿を直視したため嘔吐しつつ昏倒してしまった。
身元引受と、トーチライトの訓練参加
再びDS研の医療施設に収容され、回復はした。
しかしこの時、自分が多くの人々の人生をめちゃくちゃにした事を改めて実感させられ、さらに母親も殺され、自分も同じく積み上げてきたものを無意味にさせられた事を思い知らされ、ふさぎ込んでしまう(ファイル24)。
その後、ファイル25で「夜中、自室の病室にいきなり現れた空魚」を迎え入れ、膝枕をして彼女の愚痴を聞いていた。
そして、ファイル29にて、自身が作った『山の牧場』を使って、トーチライトの実践訓練キャンプを行った際に参加する。
この打ち合わせ時に初顔合わせした辻が、今後の身元引受人として引き取る事になった。辻からも「君は人との約束を守ろうという意思がある」と気に入られ、決定する。
なお、るな本人は、当初は身元引受人として小桜を希望しており、辻に対しては「あなたの事嫌いかもしれないです」と言っている。
『山の牧場』に赴いた際、辻になぜこの施設を作ったのかを聞かれるが、
「気づいたら作ってた」
「なぜ作ろうとしたかは思い出せない」
「誰かに命じられて作ったわけではない。洗脳した人たちにも思いつく者はいなかった」
と返答する。
更に、「信者たちは、自分の動画の元リスナー」とも明かしている。
また、この時に空魚を煽るが、逆に言い返されて言い負かされる(空魚の方は、言い負かしたとは意識していなかった)。
なお、るな自身も
『冴月のいる場所に行く(裏世界に行く)という発想が無く、此方の世界に召喚しなきゃと思っていた』
『山の牧場はそのための建物で、リノベをしていた』
『リノベは、具体的にはお化け屋敷の飾りつけ』
と語っていた。
この時に、トーチライトのキルハウス(訓練用のステージ)を作る際、トルソーの位置を僅かに変えただけで、恐ろし気な雰囲気を作り出していた。
これは空魚達も見事と感じ、辻からは「インテリアコーディネーターの才能がある」と評価されている。
訓練が終わった後、辻の魔術が中間領域に対抗手段になるかの実験で、彼女の魔術やお祓いの影響を受けて鼻血を出してしまう。この後で辻から、
「(るなは)既存の呪術やおまじないを引っ張っておらず、自分のセンスであのリノベを行っていた」
「それは付け入る隙が無い。(他の魔術系統などの)権威を持ち出されても動じない、独自のドメインを構築できている」
と、この件でも評価された。
しかし、訓練が終わり就寝後。
辻に呼び出された空魚と鳥子は、
中間領域になった場所に誘き出された、るなの姿を目の当たりにする。
そこで彼女は、虚ろな状態で。端材のようなものを用い『家の間取り図」を形作り、自分の家族の過去を語っていた。
その間取りは、過去の空魚の家に酷似。
過去には両親と祖母と生活していたが、父親が出て行き、占い関係の書籍を多く読んでいた母親の影響からそれに関係する人間が出入りするように。配信を始めたのもこの頃だったが、そのうちに母親が家ごと財産を喜捨してしまった。
が、冴月により『声』の力を得て、母親も言う事を聞かせられるようになり、現在に至った……と。
空魚に間取り図を壊され、正気に戻るが。空魚に対し『自分は詰んでいる』と、己の事を語り出す。
「自分の行いを後悔し、配信もできず、ここを作った切っ掛けも思い出せず、やりたかったこともうまくいかない。『なんとなく』で、また人を不幸にしてしまうなら、殺してもらった方が良い」
さらに、
「空魚に対しても、自分を怒らず、攻めず、外に出してもくれて、信用してくれた。他の皆も優しくしてくれて、居心地が悪い」
ここから、「誰も自分に関心がない」と言い放ち、
「私、なんにもない。だから他者から関心を持ってもらいたい」「義務感で優しくされても惨めなだけ」と吐露。
そこから、空魚達に自分を殺させようともするが、空魚の言葉と、辻とともに『気付いたある点』で、『るな自身に声の力を用いる』事を提案され、実行する。
それにより、るなに憑りついていたある怪異が退治され、るな自身も涙をこぼすのだった。
※この時にるなは、(空魚を)膝枕した事を思わず口にしてしまい、それを聞いた鳥子は空魚に詰め寄っている。
関係者
- ありがとう女
ファイル11『ささやきボイスは自己責任』に登場。
鳥子の透き通った左手を、何者かが隠し撮りしてネットに上げたらしい画像のプリントアウトを持っていた40代の女性。透明な指を持つ鳥子を探していたらしく、画像を「ありがとうございます」と書かれた紙製ファイルに入れていたことから空魚が命名した。
ファイルは他にも、「ごめんなさい」「夢 DREAM」「!!!悪魔!!!」といったものがあり、それらのファイルも持ち歩いていた。
「るな様」を崇拝し、彼女に操られていたが、実はるなの実母。
以前より占いや開運といった事に興味を持っていたらしく、自宅の本棚にはそういった書籍が多かった。
夫とるなの祖母(自身の母か、夫の方かは不明)、るなとともに生活していたが、夫に(恐らくは離婚し)出ていかれた後、オカルト方面に傾倒。その関係者とおぼしき人間を多く自宅に招くように。
そして、自宅及び財産を喜捨したため、るなを家にいられなくしてしまった。
しかしその時には、るなは声の力を授かっていたため、娘に操られるようになっていた。
るなの部下として動いていたが、声に操られた状態でも娘に対する愛情はあったらしく、冴月に近づくるなを助けようと動いていた。
しかし何の力も有していないため、当然ながら冴月に両目を潰され、そのまま倒れ死亡する。
るなからは「今更母親面するな」と言われていたため、あまり母娘関係はよろしくないものと推測される。しかしるな自身も娘として母への愛情は残っており、改めて冴月と相対した時に、るなは「勝手に人の母親を殺すな」と憤っていた。
- 第四種たち(ギフテッド)
るなが、カルトを作り上げた際。意図的に『ブルーワールド(裏世界)』に接触させ、超常的な力を身に付けさせた人間たち。
普段は『山の牧場』の中の、独房に閉じ込められている。
劇中には2番から5番まで登場しており、それぞれの番号が振られた独房に入れられていた。
- 2番
「巨頭オ」のように、キノコを思わせる、肥大した頭部を持つ。頭部の表面には細かい毛が生えており、顔は判然としない。
その頭部を左右に激しく揺らし、鳥子の手のように『ゲート』を開く能力を有する。
- 3番
四つん這いで、爬虫類の様にはいつくばっている。手足の指先は、箒のように細かく分かれて広がっている。頭部は梅干しのようにしわが寄り、こぶし大にまで縮んでいる。
その無数の指を用い、相手を絡めとる能力を持つ。
- 4番
いわゆる「見ない方が良い」怪異を再現した第四種。『山の牧場』の屋上に立ち、地面へと飛び降りる事を何度も繰り返し、その様子を見た人間の精神に干渉。『山の牧場』を制圧に赴いたトーチライトの社員も、この能力に当てられ一時的におかしくさせた。
- 5番
カルト信者たちから「5番は殺し過ぎる」とまで言われていた第四種。空魚も、拉致された時に監禁された部屋の扉の外で、その唸り声を聞いている。
見た目は『真っ黒な人影』で、両目がほぼ縦になるほどつり上がっている(空魚いわく『ディフォルメされた狐のよう』)。口は哄笑しているかのように開いており、吠えまくっている。
視線をあわせただけで、強い害意と悪意を空魚は感じていた。
武装したトーチライトの前に出現し、彼らの銃撃を受けるが、中々死なず、1mの所まで迫られた。
今際の際には、意味の通る言葉を発し、そのまま死亡する。