概要
正式タイトルは「雑用付与術師が自分の最強に気付くまで ~迷惑をかけないようにしてきましたが、追放されたので好きに生きることにしました~。
略称は「雑付与」。
タイトルからして分かる通り「追放もの」系列の作品である。
しかし無能ゆえの追放ではなく、リーダーの自尊心に傷をつけるほどの活躍が引き金となっていたり、ざまぁ描写に頼らない展開で惹き付ける特殊な作品となっている。
あらすじ
人に迷惑をかけないこと、目立たないこと、そして出来れば役に立つこと。それが付与術師ヴィム=シュトラウスの信条だった。新進気鋭の冒険者パーティー、竜の翼《ドラハンフルーグ》のあらゆる雑務を一手に引き受け、雑魚の掃討を一人で担当し、大物との戦いでは皆が気持ちよく安全に戦えるよう、出来れば華を持たせられるようサポートに徹していた。
しかしある日、事件が起こる。階層主《ボス》との不意の遭遇によって竜の翼は壊滅的なダメージを受けたのである。
パーティーを守ろうとしたヴィム少年は空前絶後の火事場の馬鹿力(と本人は思っている)を発揮し、見事階層主の撃破に成功する。が、皆の無事に安堵したのも束の間、己の立場を守ろうとしたリーダーによりヴィム少年はパーティーを追放されるのであった。
途方に暮れるヴィム少年であったが、竜の翼《ドラハンフルーグ》というパーティーは彼の居場所ではなく、むしろ最強の戦士が世に放たれるまでの最後の楔であったことは、まだ知る由も無い。
登場人物
ヴィム=シュトラウス
少数精鋭のパーティ竜の翼(ドラハンフルーグ)に所属していた付与術師の青年。
青年ではあるが、童顔で冒険者にしては細身で小柄な体格をしている関係上、一部の人物たちからは少年呼ばわりされている。
嫌な時や追い詰められたとき、または良いことがあった時は気持ち悪い笑顔で「ふひひ…」と漏らす。
自信の無さゆえの必死な努力家であり、独学で迷宮の研究をしたり、毎日のルーティンとしてトレーニングに打ち込んだりしている。
付与術師はメリットがほとんどない必要とされない職業で、自分の価値の無さを全面的に自認しているものの、一方で自分を認めてもらいたいという承認欲求も強く、自分の体で人体実験を繰り返してまで付与術の可能性を探求するなど捨て身の一面もある。
ハイデマリー=リョーリフェルド
希少職である「賢者」の74代目であり、夜蜻蛉(ナキリベラ)の次期幹部候補。
ヴィムと同い年だが成長期が早く終わりすぎたため、小柄なヴィムよりもさらに頭一つほど小さい小柄な女性。
第一話以前からヴィムの異常性にいち早く気付き、病的な執着を見せてストーカー行為を行っていた。そのため一部の者からは(ストーカーの)スーちゃんというあだ名で呼ばれている。
実力は折り紙つきだが上記のストーカー行為が周囲に広まっている関係上、対人関係は壊滅的。
ヴィムが彼女の紹介で夜蜻蛉(ナキリベラ)の門を叩いたときは「ハイデマリーさんに友人!?」と驚かれた。
酒に弱く、麦酒(ビール)1杯で泥酔し眠ってしまう。
カミラ
夜蜻蛉(ナキリベラ)の団長、銀髪の長髪がトレードマークの美しい女性。
弱きを助け強きを挫くその人柄からか、彼女が率いるパーティは大所帯ながら諍い事が起こらない完全ホワイト企業である。
非常に高いリーダー資質と事務処理能力を有しているが、戦闘スタイルは身の丈もある大剣を巨大化させ振るうという攻撃力特化の脳筋。国内で最強クラスの実力を持っておりながらも向上心は依然強く、いくら鍛えても自分の殻が破れない、強さが頭打ちになったことに強い焦りと焦燥感を抱いていた。
そのため殻を破るきっかけをくれたヴィムに対して、感謝と強い期待を寄せている。
アーベル
夜蜻蛉(ナキリベラ)の盾部隊長を任されている青年。
ハイデマリーに友人が居たことに驚いた人物。
ヴィムの洗練された強化(バフ)、徹底したリスク管理と驚異的な戦闘力を尊敬しており、それは心酔していると言えるほど。
ヴィムの口調を真似たり後を尾けたりと、第二のストーカーになりつつあったところをハイデマリーに一喝され、改めた。
クロノス
少数精鋭のパーティ竜の翼(ドラハンフルーグ)のリーダー。
雑用係のヴィム以外は自身に好意的な女性メンバーで囲っているが、そのうえで反論を許さない圧力を掛けて強制的にイエスマンにしていたDV気質のパワハラ男。ブラック企業さながら、いじめのような手法でヴィムを支配していた。
ヴィムの追放理由も「97階層の階層主(ボス)へのトドメを持っていかれたことへの逆恨み」という実に子供じみたもの。
ニクラ
竜の翼(ドラハンフルーグ)の回復担当。
あらゆる怪我をたちどころに癒すことから、神の寵児とまで呼ばれていた神官。
ヴィムが言うには。クロノスの隣に相応しい冷静で物静かな女性らしい。
メーリス
竜の翼(ドラハンフルーグ)の魔術師。
クロノスと共に新人とは思えない鬼神のごとき強力な攻撃を繰り出すと評判だった。
元気な性格だがクロノスに好意を告げられずヴィムに愚痴を聞かせていたらしい。
ソフィーア
追放されたヴィムに代わり雇われた長耳族(エルフ)の女性。
無能だったと聞かされていた前任者が残したという大量の書類を押し付けられ、早々にクロノスに不信感を覚えたが、マップすら把握していないメンバーに探索のやり方を教えるなど、できる限りのサポートをし続けた。
劣悪な環境に気付いてもパーティを抜けなかったのは、目的があって竜の翼(ドラハンフルーグ)に近づいたからで、クロノスに惚れたわけではない。