概要
現地ではガンヌシーと呼ぶ。
龕のマジムンとも呼ばれる沖縄の山原地方に伝わる妖怪(マジムン)。
【龕】とは棺桶を乗せて担ぐための葬具で、龍の彫刻や仏画が描かれた朱塗りの神輿の様な物であり、沖縄では龕や棺桶が化けて人を誑かしたという話が数多くある。
例えば国頭郡今帰仁村運天のブンブン坂という場所ではこれが牛や馬に化け出現し、人に襲い掛かったとされる。
また、死人が出そうな家を往復して人の足音と荷物を担ぐ様な“ギーギー”という音を立てるといわれているほか、地羽ではこれが夜に人間に化けて人家を訪れ「子供が病気なので鶏を飼ってほしい」とやって来たので、不憫に思い鶏を購入して翌朝買った鶏を見ると、なんとそれは龕の角に飾る木彫りの鶏だったという話が伝わっており、それ以来、この地羽では夜に鶏を買ってくれと尋ねるものがいても絶対に購入してはならないとされているという。
そもそも龕自体が死体を運ぶための道具だった事から精霊が籠りやすいと考えられていた為、これ自体の扱いにも様々なタブーが存在しており、例えば葬式の時に赤い着物や帯を身に付けていると魂を奪われてしまうとか、龕を指差すと手が切れてしまうと言われている。
また、龕を使う際は保管場所である龕屋を宥めながら開け、仕舞う時は悪口を言いながら閉めなければ、龕の精がまた誰かを連れて行ってしまうとされている。
なお、当時、龕は村の共有物であった事から年に1回酒や食べ物を備えて供養したり、古くなって不要になった龕は僧侶や巫女(ユタ)によって十分に供養されていたらしい。