概要
元来、DATは「デジタル・オーディオ・テープ」の略称で、文字通りデジタル音声を記録するテープ全般を指す言葉であった。現在では「DAT規格」を指す場合が多い。
- PCMプロセッサー - アナログVTRをDATとして用いる装置。
- DAT規格
- デジタルマイクロカセット - 通称NTカセット。ソニーから発売。
- デジタルコンパクトカセット(DCC) - フィリップスとソニーが策定
歴史
1985年に回転式(Rotary)ヘッドを用いる「R-DAT」と固定式(Stationary)ヘッドを用いる「S-DAT」が策定されたが、商品化されたのは前者である(ちなみにエヴァで碇シンジが持っているもののモデルはS-DAT)。
32/44.1/48kHzの3種類のサンプリング周波数、16ビットのリニアPCMを記録できる。但し44.1kHz/16bitはCD-DAと同一の規格であるため、著作権保護の兼ね合いから、当初は44.1kHzのデジタル入力による録音ができなかった。後に「SCMS」なるコピー防止フラグが搭載された(業務用機器は意図的にSCMSを無視するように作られていたという)。
規格
媒体
54✕73✕10.5mmのカートリッジにメタルテープが格納されるため、使い勝手はアナログコンパクトカセットに似る。テープの幅は3.8mmで、長さは収録可能時間により変わる。片面のみ収録可能。
記録方式
サンプリング周波数(kHz) | 量子(bit)・符号化 | チャンネル数 | テープ速度(mm/s) | 備考 |
32 | 16 線形 | 2 | 8.15 | |
44.1 | 16 線形 | 2 | 8.15 | CDと同等 |
48 | 16 線形 | 2 | 8.15 | |
32 | 12 非線形 | 2 | 4.075 | LPモード |
32 | 12 非線形 | 4 | 8.15 | |
44.1 | 16 線形 | 2 | 12.225 | ワイドトラック |
96 | 16 線形 | 2 | 16.3 | WIDE/HSモード |
48 | 24 線形 | 2 | 16.3 | HRモード |
※WIDEあるいはHSモードはパイオニア製の一部機種に、HRモードはティアック製の一部機種に搭載されている。
用途
早くから業務用として活用され始め、録音スタジオや放送用素材として普及した。
民生用途としては生録音をするマニアや、アナログの衛星放送にて行なわれた音楽放送(テレビ番組、PCMデジタル音声を用いたラジオ)の録音(エアチェック)にも利用されたという。ソニーの「DATウォークマン」など、ポータブルプレイヤーも発売された。
※BS/CSアナログ放送では音声がAモード、Bモードの2方式あり、どちらもDATに対応する。両者とも16bitのリニアPCMであるが、サンプリング周波数が異なる(A:32kHz、B:48kHz)。
現代
音楽用途ではミニディスクを経て各種オーディオプレイヤーに移行。2000年代に入りDATプレイヤーが相次いで生産・販売を終了し、テープ自体も2015年で製造されなくなった。
録音用途では、HDD録音やICレコーダーに取って代わられている。ハイレゾ録音に対応するICレコーダーもあるため、お株を奪われた形となった(DATでもハイレゾ録音が可能な機種が一部あったが)。