概要
FW15Cは、イギリスのレーシングチーム「ウィリアムズ」とフランスの「ルノー」がタッグを組んだ1993年のF1マシン。
テクニカルディレクターはパトリック・ヘッド、チーフデザイナーはエイドリアン・ニューウェイと前年と同様であるものの、ドライバーはアラン・プロストとデイモン・ヒルのコンビに一新された。
前年型のFW14Bが(シーズン序盤限定の暫定型でありながら)他を圧倒するポテンシャルを誇ったため、シーズン中の投入は見送られたフルモデルチェンジモデルのFW15を1993年のレギュレーションに適合させたうえでパワーステアリング、パワーアシストブレーキ、アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)などのハイテク装備を追加したハイテクマシンである。
仕様の変遷(関連モデルを含む)
FW15:1992年レギュレーションに最適化(実戦未投入)
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FW15B:1992年時点での1993年(暫定)レギュレーションに最適化(実戦未投入)
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FW15C:1993年の(確定された)レギュレーションに最適化+各種ハイテク装備を追加
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FW15D:ハイテク装備の全面禁止を謳った1994年のレギュレーションに最適化され、ハイテク装備を全撤去したテストマシン(実戦未投入)
マシン
車体のデザインはFW14Bの基本コンセプトに沿いながら、パワーステアリング、パワーアシストブレーキ、アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)などのハイテク装備を追加した。
アクティブサスペンションはシステムが整理され、FW14Bではフロントサスペンションの接合部に張り出していたバルジがなくなった。
さらにアクティブサスの機能も改良され、センサーからサーキットのどこを走っているかを検知し、ピッチやライドハイト(車高)を全てコントロールしていた。ホイールロックが発生すると距離センサーが正確な値を計測できなくなるため、前述のABS(アンチロック・ブレーキ・システム)を搭載し、1993年シーズン用に改良を施した。
また、チームは無段変速トランスミッション (CVT) やローンチコントロールの開発も行っていた。CVTを採用すればエンジンをほぼ一定の回転数で使用する事ができるので、ルノーは吸気管・排気管の長さやバルブタイミングなどを最適化して開発することが容易に予想できた。デザイナーのエイドリアン・ニューウェイによれば、テスト走行で聴いたエンジン音は「ひたすら退屈」で、もし実用化されればF1の観客には不評だったに違いないと述べている。
結局、翌1994年シーズンに施行されたレギュレーション改訂により、ハイテク装置の多くが使用禁止となった。
1993年シーズン
前述の通り、この年のドライバーは前年休養していたアラン・プロストと、前年ブラバムからF1デビューを果たし、その後はウィリアムズのテストドライバーを担当していたデイモン・ヒルのコンビ。
ボディとリアウィングには1993年のサブスポンサーとして関わっていたSEGAのロゴとセガのキャラクターであるソニック・ザ・ヘッジホッグが描かれていた。
プロストは開幕戦から7戦連続を含む13回のポールポジション獲得、決勝レースではクラッチの扱いに苦慮して何度かエンジンストールを演じて順位を大幅に落とす場面が見られたものの、シーズン7勝を挙げて4度目(そして最後の)のドライバーズタイトルを獲得した。ヒルも第11戦での自身のF1初優勝から3連勝し、2年連続コンストラクターズタイトルを獲得した。
プロストはチャンピオンを獲得したものの、同年にチーム内外で起こった政治的トラブルに嫌気が差し、この年のシーズン終了をもって引退。同チームのエースドライバーがチャンピオン獲得後に引退する事態は前年のナイジェル・マンセルに続き2年連続となった。
なおこの年をもって、1985年以来9年間にわたってメインスポンサーを務めていたキヤノン、及びキャメルとの契約を終了し、赤・白・黄色・青の「キヤノンカラー」も見納めとなった。
関連タグ
アラン・プロスト デイモン・ヒル ウィリアムズF1 ルノー F1
前期型 FW14B
後継機 FW16