カタナで斬り裂くのは己の過去
時間を操作するスタイリッシュ斬撃アクション
ゲーム概要
askiisoft製作、Devolver Digital販売のインディーズソフト。
2019年4月18日よりニンテンドースイッチおよびPC用に配信されている。
「HotlineMiami」の影響を強く受けた2D横スクロールアクションゲームであり、記憶喪失の暗殺者「ドラゴン」を操って、荒廃した近未来世界でカタナを武器に駆け抜けていく。
ディフォルメされた可愛らしくも繊細で美しいドット絵と、それにもかかわらず容赦ないバイオレンス描写、そして「予知」という形で繰り返される主人公の死と巻き戻しによるリスタートシステムと、それに密接に関わったミステリアスなストーリー、何よりも繰り返しに伴うプレイヤーの上達がもたらすスタイリッシュなアクションが魅力的。
いわゆる「死に覚えゲー」なのだが、その絶妙な難易度と格好良さから、配信直後より人気を博している。
アップデートによりスピードランモードとハードモードが追加された。無料DLCも開発中とのこと。(2020年2月現在)
ゲームシステム
「ドラゴン」として依頼された場所へ赴き、障害を尽く斬り捨てて皆殺しにすることで次のエリアへ向かう、いわゆる面クリア型の構成となっている。
ボスを除けば主人公も敵も全員一撃で死ぬため、いかに相手の攻撃を掻い潜って一方的に斬殺するかが攻略のポイントとなる。
基本的には横スクロールアクションらしく「ジャンプ」「攻撃」「ダッシュ(回避)」「アイテム」の四つが基本動作となる。
そしてこれに加えてコンバットドラッグ「クロノス」の効果が、本作システム最大の特徴であり、またストーリーにも大きく関わっていく。
他、ステージによってはステルスアクションを要求されたり、バイクによるカーチェイス、トロッコアクションなども待ち受けている。
また本作はマルチルートを採用しており、ゲーム中の細かな選択肢による分岐が数多く存在する。
敵が立ち話をしている事も多々あるため、余裕があるなら立ち止まって耳を傾けてみるのも良いかもしれない。
攻撃
カタナによる攻撃はある程度の間合いがあり、また十字キー入力と組み合わせる事によって斬撃方向を変化させる事ができるため、床下から床ごと上に立つ敵を斬り捨ててエントリー、機動隊を飛び越えて頭上から斬り伏せるなど、スタイリッシュなアクションを披露できる。
また銃撃にタイミングよく攻撃を重ねると、文字通り打ち返す事ができ、狙撃へのカウンター、機関銃の連射を全て反射しながら突撃して斬り伏せるなど、上手く決まると痛快である。
ダッシュ
ダッシュには無敵時間があり、銃弾や敵、レーザートラップなどをすり抜ける事ができる攻略の要である。ガードを固めた敵をダッシュですり抜けて背後から斬りつけるなど、攻撃にも転用できるため使いこなせるようにしていきたい。
アイテム
ステージ中に落ちているアイテムを拾うことで、これを投擲武器として用いる事ができる。
ドラゴンは銃弾を打ち返す以外に遠距離攻撃を持たないため、この投擲武器をどう使っていくかが攻略の重要なポイントの一つでもある。
瓶などは命中すると音を立てて近くの敵の注意を引くため、これを駆使して敵を一箇所に集め、その隙に床下を突っ切って背後から登場、全員を一瞬で切り捨てるなどといったアクションが可能。
ナイフや包丁の他、火炎瓶や有線リモコン爆弾、時には拳銃も登場する。無論、ドラゴンにかかれば拳銃も必殺武器である。
クロノス
本作における最大の特徴は「クロノス」の効果だろう。
これはドラゴンに投与されているコンバットドラッグであり、「加速」と「予知」の2つの力をもたらしてくれる。
「加速」については、いわゆるスローモーションであり、発動中はゲージが継続する限り全ての動作が遅くなるというもの。
あくまで体感時間の加速であるため、もちろんドラゴンの動作も遅くなるのだが、銃弾の打ち返しや攻撃回避、難所を突破するタイミングを図るためには重宝する。
使用は必須ではなく、慣れてくれば銃弾の一発二発くらいならクロノスを用いずとも打ち返せるようになってくるだろう。
また「予知」は、そのものずばりコンティニューの事である。
オートセーブ式の本作では、ステージ攻略中に死亡するとそのエリアの最初まで、文字通り巻き戻されて再スタートとなる。
これは全てドラゴンが自らの死を予知したためで、プレイヤーはひたすら死の未来を繰り返し予知し、巻き戻し、攻略できるルートを構築していく、文字通りの「死に覚え」ゲーになる。
このコンティニューがとてもテンポよく行われ、またこまめにオートセーブされるため長いステージを頭からやり直す必要もなく、死に覚えに伴うストレスは極めて少ない。
ただしこのクロノスによる予知は、現在から一定時間先の未来までが限界である(より正確に言えば使用者が記憶し続けられない)。
そのため本作のゲームプレイ部分は基本的にドラゴンがステージを攻略するための予知であり、実際のドラゴンの行動はステージクリア後の監視カメラ映像でチェックできるといった演出がなされている。
そしてこのクロノスによる予知能力は、本作のストーリーにも密接に関わってくる。
ストーリー
終戦から7年を経た、近未来都市ニューメッカ。
地区ごとに住人の社会的地位が異なるこの荒廃した格差社会の影を、一人の殺し屋が駆け抜けていた。
黒い浴衣にカタナを携えた彼の名はドラゴン。
鍛え抜いた武術に加え、クロノスというドラッグの力で予知能力を得たドラゴンは、依頼に従って行く手を阻む者を次々に斬り殺していく。
しかしやがて彼はクロノスと、それに纏わる自分の失われた記憶へと立ち向かわざるを得なくなっていく……。
登場キャラクター
ドラゴン
本作の主人公。記憶喪失の殺し屋で、凄腕の武術の達人。
手にしたカタナと、クロノスの力で敵を皆殺しにする事から、いつしか「ドラゴン」と呼ばれるようになった。
淡々と仕事をこなしていたはずが、悪夢と幻覚に悩まされ、やがてクロノスと自分の過去の謎に迫る陰謀へ巻き込まれていく事になる。
作中では選択肢を決定する時以外にセリフを喋る事はないが、その内容を見る限りなかなか荒っぽい性格のようだ。
会話の経過時間によって選択肢が変化するため、あんまりボタンを連打しすぎると、人の話を聞かず「いいから早くクスリをくれ!」と連呼する危ない奴になってしまう。
黒いバスローブ(浴衣)にチョンマゲというスタイルは作中でもかなりインパクトがあるらしく、しょっちゅう突っ込まれたり、警察にもドラゴンの特徴として認識されている。
また部屋はかなり汚いが、日本風の鎧兜や旗指し物、時代劇のポスターなどを飾っており、ビデオ屋には戦前のサムライ映画を注文するなど、なかなかのOTAKUである。
先の戦争に従軍したと言い、記念メダルを大事に持ち歩いているが、帰還兵にしては異様に若い。
ちなみに劇中のBGMは基本的に彼の聞いているカセットテープウォークマンによるもの。
少女
本作のヒロイン。ドラゴンの隣室に住んでいるという幼い少女。
ある日、仕事帰りのドラゴンとたまたま出会ったことをきっかけに、どういうわけか彼に懐いてつきまといだす。
ついには親友だというぬいぐるみ「ベヒモス」の兄弟、「リヴァイアサン」がドラゴンの家にあると主張して、家に押しかけてくるようになる。
荒廃した地区に住んでいることもあって家庭環境は悲惨なようだが、明るく元気で、茶目っ気のある純粋な性格をしている。
セラピスト
ドラゴンのカウンセリングを担当し、治療と称してドラッグの投与と、暗殺依頼の斡旋を行う男。
眼鏡をかけた神経質そうな風貌で、その治療室の内装を見るにニューメッカでも上層部に属している事が窺える。
ドラゴンの悪夢や幻覚について親身に話を聞いてくれるが、意に沿わない行動を取られると途端に激高して取り乱し、余裕をなくしていくなど、やはり見た目通りの性格なようだ。
デスクには家族の写真を置いていて、いつかドラゴンと会う事もあるだろうと言うが……。
V
ドラゴンの「ファン」を名乗る巨漢の男。スタジオ51を拠点としている。ロシア人。
青く染めたアフロヘアをしており、少女いわく「ダサい髪型のおじさん」。
スナッフ・フィルムの撮影が趣味で、人を無惨に殺して楽しんでいる危険人物。
クロノスを求めてドラゴンにも接近してくるが、対立し、殺し合うことになる。
彼もまた「死を先読みする」かの如き能力を発動させ、これを不完全に再現したコンバットドラッグによるものだと語るが……。
Mrキスフェイス
Vの部下で、紫色のマスクに白スーツを纏った伊達男。
長柄の両手斧を武器にしており、これを自在に操ってドラゴンと対峙する。
ユキ
Vの傍に現れる謎の美女。くノ一。
白い着物にカタナを携え、花吹雪と共に瞬間的に転移することができる。
Vの背後にいる何者かに仕えているようだが……。
ダウッド・ベイ
廃工場の隠れ家に監禁されていた政府の科学者。
何者かによって拷問を受けていたためドラゴンが救出ミッションを行うが、脱出直前Vによって首輪爆弾を起動され爆死してしまう。
ジョシュ・ローズ
マーダワー・ホテルに君臨する、ニューメッカ市民の尊敬を集めているIT系億万長者にして慈善家。
裏では物資とコンバットドラッグの密輸に関与しており、そのためにドラゴンの標的とされる。
エレクトロヘッド
クラブ・ネオンで活躍するカリスマ的なDJ。ドラッグ密売に関わったため、ドラゴンの標的となる。
セラピストからは「病的な嘘つきであるから決して会話するな」と警告されるが……。
ファ・ユアン
反体制派として機密を漏洩した罪でミュチュアル=ニル刑務所に収監されている囚人。
翌日の裁判で証言を行うため、迅速に処分することがドラゴンの任務となる。
オマール・アル=カシム
兵站コンサルト会社ネオテックの創設者にしてCEO。
ニューメッカ政府と密接な関係にあり、軍事研究や開発に関与していることからドラゴンの標的となる。
レオン・フォン・アルフェンスレーヴェン
クロノスの開発者とされる謎の科学者。
第三地区の食肉工場スローターハウスを、強力な警備を配置した要塞にして隠れ潜んでいる。
潜入したドラゴンにモニターを通してメッセージを送り、「NULL」の適正を試すと称して様々なトラップを仕掛けてくる。
黒い長髪の優男の姿をしているが、施設最深部で対面する事になるその正体は……。
ドラゴン?
ドラゴンの前に現れる、もう一人の「ドラゴン」。
長い金髪を縛り黒いスーツを纏った男で、カタナを武器にしている点以外は主人公のドラゴンと大きく異なる。
しかし彼もまたドラゴン同様、クロノスによると思われる「予知」と「加速」能力を有している。
政府に対して敵愾心を抱いており、復讐のために行動しているようだが、目的は不明。
ヘッドハンター
金髪のドラゴンの仲間と思われる、謎の人物。口調からすると女性のようだ。
軍装に身を包み、ベレー帽を被ってガスマスクを装着しており、素顔が明らかになるのはわずか1シーンのみ。
普段はチャイナタウンのカジノをアジトにしており、襲撃してきたドラゴンとは複数に渡って対決することになる。
レーザーガンを武器に用いており、やはりクロノスによる「予知」と「加速」によってドラゴンを追い詰めていく。
その口からはアル=カシムに従って人殺しを請け負うかわりに、クロノスを受け取っていた事が語られる。
正式名は不明で、海外ファンの間では他に「NULLソルジャー」「レーザーガール」「レイザーチック(剃刀ヒヨコ、おっかないカワイコちゃんの意)」などとも呼ばれている。
喜劇&悲劇
ドラゴンの前に幾度となく現れる、金と銀の仮面をつけた白衣の男たち。
彼ら曰く、近い将来にドラゴンは「死」と「生」の究極の選択を迫られる事になるというが……。
受付嬢
本作のヒロイン?
幸か不幸かドラゴンと度々遭遇してしまう受付の女性。
なかなか良い性格をしており、どうやらオタクでカードゲーム好きらしい。
会話選択肢によってはドラゴンと意気投合することもある。
ストロングテリー
ドラゴンとストロングテリーが戦ったらどっちが勝つ?
用語
戦争
7年前に終結した、ニューメッカ軍と卑人たちによる戦争。
密林で繰り広げられた泥沼の戦いであったらしいが、ニューメッカ軍が優勢だったようだ。
しかし軍部の残虐行為に反発した第一地区の住人が反戦運動を起こし、講和してしまった。
その影響からか、街には軍や政府に不満を抱く帰還兵が多く、ニューメッカの治安は悪化している。
卑人
原語では「クロマグ(Cromag)」とされる異民族。
ドラゴンの衣装が「卑人みたいな格好」と呼ばれ、過去の回想シーンなどでも卑人側が有色人種である事から、アジア系人種の事ではないかと思われる。
ニューメッカには中華街やBAR「北斗百裂拳」が存在し、アニメやコスプレ、ゲーム、サムライ映画などが普通に流行しているため、現在の地位はさほど低くないようだ。
クロノス
7年前の戦争でニューメッカ軍が開発したコンバット・ドラッグ。
投与することにより「加速」と「予知』の能力を獲得することができる。
しかし何らかの中毒作用があり、クスリが切れた者は幻覚や悪夢に悩まされるようになる。
現在はその存在が抹消されており、再現と復活を目論む勢力と、隠蔽しようとする勢力の暗闘が繰り広げられている。
NULL
戦争中にニューメッカ政府軍として活躍したと言われる特殊部隊。
非人道的作戦に多く関与したが、終戦と同時にその存在は隠蔽されたという。
Ex対X-サクラの逆襲2
ネット配信されているカードゲームアニメ。
シンジュ・サカモトという黒い着物にカタナ、ちょんまげを結ったキャラクターが登場するらしい。
表記揺れ
「Katana ZERO」「カタナゼロ」などが存在する。
本項目についてはゲームタイトル画面の「KATANA ZERO」を採用した。