SCP-830-JP
ちょうらくいちやじょう
SCP-830-JPとは、シェアード・ワールドSCP_foundationの日本版に登場するオブジェクトの一つである。通称「凋落一夜城」。オブジェクトクラスはEuclidに指定されている。
SCP-830-JPは██県███山に8月30日の午後9時から翌日の3時の間にのみ出現する山城の亡霊である。出現するとその場にあったものは消失し、SCP-830-JP実体が消滅すると戻ってくる。現在の大きさは約150,000㎡であり、本丸だけでなく二の丸、三の丸、その他多数の櫓や砦で構成されている。この規模は山城にしてはかなり大きく、その巨大さからこの城が本来あった安土桃山時代の装備では正面突破は不可能だと見られている。
SCP-830-JP内には数千体もの鎧をまとった人型実体、つまりは侍がおり、城に近づく人間を刀や槍、鉄砲など安土桃山時代の武装で攻撃する。彼らに殺されてしまった人間は翌年のSCP-830-JP出現の際にSCP-830-JP内に人型実体として復活する。そのため犠牲者が増えるたび翌年の侍が増えるという厄介なシステムになっているが、幸い侍一人ひとりの耐久力は高くない。
このオブジェクトは保護を目的とする財団には珍しく、「何としても破壊しろ」という命令が出されている。なぜなら、この城は条件を満たさない限り際限なく大きくなり続けるという下手をすればKeterクラスレベルの危険性を秘めているのだ。増築を止める方法は二つあり、まず一つはある程度城を破壊すること。そしてもう一つは侍を統率する「城主」を討ち取ることである。
このどちらかを果たすと「落城」となりSCP-830-JPは消失する。しかし出現中に「落城」できなかった場合、翌年現れる城は先程述べたように前年より大きくなってしまう。
更にたちの悪いことに、SCP-830-JPを目撃してしまった人物は自分の周りにある最も殺傷力が高いものを持って城に突撃してしまう。無論ただの人間が武器を持った侍にかなうはずはないので大抵は大手門あたりで殺害されてしまうこととなる。そして殺された人は来年新たな侍として復活して…というふうにどんどん城を守る侍が増えていくという負の連鎖が続いてしまうのだ。
現在の日本支部の前身となった組織である蒐集院の文献によると、SCP-830-JPは「1500年代に落城した際の北畠氏の怨念によるもの」らしく、少なくとも1616年の江戸時代にはその存在が確認されていた。
当初は怨霊の類と思われていたため祈祷師に祈りを捧げていたが、効果がなかったため兵士を送り込んで制圧を図っていた。しかし約100年後には亡霊の練度が上がったため上記の方法が難しくなり、以降は暗殺という形で「城主」を討ち取ることで城の拡大を防いでいた。だがさらに約100年後にはこの方法も防がれつつあった。
その後蒐集院は財団と合併し、財団は半ば押しつけられる形でSCP-830-JPの管理を任せられることとなった。財団も最初のうちは兵士を送り込んでの制圧を図っていたが、ここで革新的な出来事が起こる。
時は1900年代、技術革新により新たな兵器が次々と誕生し、その流れは財団にも来ていた。
とあるSCPを収容するために高威力の焼夷弾が開発され、これをSCP-830-JPへの攻撃に応用できないかという話が上がったのだ。
早速試してみると防火設備もろくに整ってない城はみるみる炎上し、結果的に作戦は成功した。そのため以降の収容プロトコルでは焼夷弾を用いる方法が取られている。
…そんな風に何度も増築を防がれ何年も過ぎたある時、毎年のようにSCP-830-JPに対して爆撃を行い、焼け野原になった場所に一枚の立て札が出現した。今までこんなことはなかったため、急いで確認するとそこにはこう一言だけ書かれていた。
「止むべし」
…どうやらSCP-830-JP側は空襲に対してはなすすべがないらしい。まぁ増築もできず、手持ちの武器では空を飛ぶ飛行機に攻撃できないのだから無理はないが。
だがだからといって爆撃を止めればSCP-830-JPは拡大を続け、人類の脅威と間違いなくなるだろう。わざわざSCP側に合わせる道理は存在しないのだ。
よって収容プロトコルは未だ変更されておらず、今年も城は火の海に包まれるのでした。