SCP-014-JP-EX-1
きみのそのかおがみたくて
アイテム番号:SCP-014-JP-EX
オブジェクトクラス:Explained
メタタイトルは「君のその顔が見たくて」
SCP-014-JP-EX-1とはP-D/U漂着イベントにおける、別世界からの"漂着者"と酷似した状況にある非異常性オブジェクト、その中で財団によって最初に確保された個体である。
10代とみられるコーカソイド系の女児で、200█年「東京都の路上にて身元不明で国籍不明のコスプレイヤーと思しき女児が発見された」との情報に興味を抱いた財団エージェントがSCP-014-JP-EX-1に接触。時折ドイツ語が入り混じった意味不明の言語を話していたため、当初統合失調症等の精神疾患の疑いを持たれたが、着用している衣服及び所持していた杖がいずれも非常に精巧に作られていたことを不審に感じた財団エージェントにより、一時的に収容された。
というのも、財団は本家・支部を問わずこれまで似たようなオブジェクトと接触・収容しており、その中には実際に別世界からの"漂着者"だったり、そうでなくとも何らかの異常性を持った人物だった例がほとんどだったのだ。
実際に彼女が喋っていたのはどうやら複数の言語を複合した言葉であるとわかり、財団はなんとか意思疎通を図るため翻訳装置を作り上げる。それを用いたインタビューにおいて彼女が『王国の第一皇女だった』『魔法が存在している』『私は炎を司る魔法の使い手だ』と述べた事から、実証実験が行われた。
その結果、彼女は二時間かけて"魔法陣"を完成させ、"Mein Leben war sinnlos"と唱えたが、火炎らしきものは何も生じなかった。
また、詠唱自体はドイツ語であり、意味は"私の人生は無意味だった"
他にもドイツ語で"私は犬だ"だの"私は無能な人間だ"だのといった「魔法の呪文」も唱えていた。
…彼女自身は詠唱だと信じて疑わなかったらしい。
その後インタビューなどを続けた結果、彼女は痛々しいまでに動揺しながら最近みた『夢』について語り出した。
なんでも彼女の14歳の誕生日の日、両親と家臣たちは誕生日を祝い、そして「王国をあげて今日のためにサプライズを用意した」と言う。
彼女が喜びながら外に出た瞬間、城はハリボテのセットの如くパタンと倒れ、知らない誰かが「ドッキリ大成功」というプラカードを掲げて出てくる。
そして、その場にいた自分以外の全員が、下らない悪戯にかかった馬鹿を見るような目で自分を指さしてゲラゲラと笑い出した…
…そんな悪夢を見たのだと。
そこで財団職員は、どんな王国だったのかを彼女に問い、その特徴を聞き出すことに成功する。
この時のインタビューでは彼女のそれまでの強気で王族らしい威厳に満ちた口調は、弱弱しく、不安に押し潰されそうな小さな女の子の口調となっており、最後には泣き出してしまった。
そして最悪なことに、その特徴を持った『王国』はそう時間を掛けず見つかることとなる。
廃遊園地として、だが。
どうやら彼女は異常存在などではなく、前述の供述や行動はとある資産家の人物(SCP-014-JP-EX-A)によって養育された結果らしいと判明。異常性物品が関与している可能性が高くないと見積もられ、警視庁公安部特事課との合同捜査の末SCP-014-JP-EX-Aの男性を拘束し、尋問。
彼は政府にパイプを持つらしいが、世界規模の組織である財団にたかが一国へのパイプなどというあまりにか細い糸が脅しになる訳もなく、あっという間に尋問は拷問に変わる。即座に屈した彼が言うには、
『仲間内で面白いことをしようと色々話してたんだが、ある日新しく入ってきた奴が人間を”飼育”したら面白いんじゃないかと提案したんだ。そしてその飼育した人間に今まで飼育していたことをバラすとどんな顔をするか、とね。面白いことに飢えていた私たちはそれに飛びついたわけだ、本当に凄いこと考える奴がいるもんだと感心したよ』
『商売柄今まで人が嘆き苦しみ絶望する姿を多く見ていたが、純粋な子供が絶望する姿を見るのが最も面白かったんだ。そして最高のお膳立てをしてその顔を見られた。大変だったがその苦労に見合うだけの価値はあったと思うよ』
つまり、10年かけて幼稚園児ぐらいの年齢から子供を『魔法使いの王国の皇女である』などと養育し、ある時突然全てをバラして社会に放ったのである。理由は上記の通り。
挙句『どうせ児童虐待にしかならんだろう、さっさと警察にでもなんでも引き渡せ』と半笑いで開き直る始末。どうするよこのクソ野郎。
とはいえ日本国だけに限らず、「児童をその後の日常生活に甚大な支障が生じる様な教育を施して放逐する」などという今回のような「遊び」は、人道に唾とクソを吐き掛ける様な行いであると同時に、金と手間ばかりかかることからどこの司法もまず想定していない。ということで該当する罪が児童虐待くらいしか無いのも事実。
供述からSCP-014-JP-EXを引き起こしている人物、つまり共犯者が他にもいることが分かり、同時に異常性が発見される可能性が低いと判断されたためこのSCP自体のオブジェクトクラスはExplained―背景にある法則を見破って普通のものになったか、問題が完全になくなったもはやSCPとは呼べないオブジェクト—に分類され、以後の主な捜査を公安部特事課に委託している。ただし、この外道の所業を提案した人物に限っては現在も財団からマークされている(後述)。
他に同様の10代の男女三人が保護されており、うち一人は全身にくまなく刺青が施されておりどこかの部族の様な人相になってしまっており、除去手術の後警察病院にて療養中。残る二人は現実復帰プロトコル実施の後里親に引き取られた。
そしてEX-1にあたる少女は......現実復帰プロトコルの実施後財団職員として雇用され、201█年現在フィールドエージェントとして勤務中。
こんな感じ...かも知れない。
自分にとって真実だった世界が嘘だったと教えられ、絶望するも、直後に嘘になったはずの魔法(異常存在)が世界には掃いて捨てる(捨てたい)ほどある事を知れた事は救いであると信じたい。
ちなみに、捜査及び少年少女の保護、そして犯人一味の処分は秘密裏に行われている。というのも、一般に知れた場合本当に異世界から漂流者が来た際の対処が難しくなる上、これメディアに流したら共犯者連中が証拠隠滅で子供たちを殺す危険性あるよね?、となったため。少なくとも、公安部特事課、そして財団が彼らを生かしておく可能性は非常に低いと思われる。たかが児童虐待と侮って悪趣味な遊びに手を出した結果、舞台設定として使った馬鹿げたファンタジーと日々ガチバトルしている連中に捕捉されたのだからたまったものではないだろう。
定期的な生け贄が必要なオブジェクトなんざいくらでもあるし、そのためのDクラスだって畑から取れるわけじゃ無いのでそっち方面に回される可能性もある。そういったオブジェクトの特性上さぞ苦痛や恐怖、絶望に満ち満ちた死を迎える事だろう。
「なんでこんなことをするのか?君のその顔が見たくて」
なお、当のクソ金持ち共を唆した何者かが居る事が示唆されているが、この人物、SCP-014-JP-EX-αは年間100件ほど起きているガチの漂着イベントの存在を認知している可能性がある。
こんな悪趣味な事をやらせたのも財団の行なっているそういった出来事への対処に対する妨害工作の可能性があるため、現在財団はこの何者かを追っている。
…尤も、こういった分かりやすい目的のある悪役が居てくれた方が、一連の出来事が全て「悪趣味な人間の悪意だけで起こされたなんの生産性もない行為だった」と片付けられてしまうより余程マシな気がしてしまうのだが。
SCP-014-JP-J:元ネタ。こちらはただの厨二病の女の子。一部のtaleで何度か共演している。
アギレラ/夏木花:境遇が似ている。ただアギレラの場合半ばなし崩し的に組織から放り出された(というより組織自体が内外の事情で瓦解してしまった)が、こちらの場合その「放流」までがドス黒い悪意で意図されたシナリオであった。
トゥルーマン・ショー:「自分の境遇を(トゥルーマンのように)理解するには彼女はまだ若すぎた」とも言われる。