概要
ハーマフロダイト(hermaphrodite)は、ギリシャ神話の神ヘルマプロディートス(Ἑρμαφρόδιτος / Hermaphrodītos)に由来し、「両性具有」「雌雄同体」を意味する。
サブカルチャーにおいては、日本語圏で言う「ふたなり」とほぼ同じ使われ方をしている。
省略形の herm(ハーム)も futanari(ふたなり)の意味で、タグとしての用例が多い。アンドロギュノスも参照。
ヘルマプロディートスの神話物語
ギリシア神話において、ヘルマプロディートスは、ヘルメース神(Hermes)と愛と美を司るアプロディーテー女神(Aphrodite)のあいだに生まれた息子である。その名前は、ヘルメースとアプロディーテーの合成であるが、ヘルマプロディーテー(Hermaphrodite)が合成した場合の女性形で、男性形がヘルマプロディートスとなる。
彼は美少年で、泉の妖精(ニュンペー)のサルマキスが彼に恋したが、ヘルマプロディートスは彼女の望みを拒絶した。この後、少年がさる泉で水浴していた処、サルマキスが泉に入り込み、ちからづくで少年に襲いかかり、彼を犯した。サルマキスは恋に熱狂して、美少年を押さえ込みつつ、神々に、二人が永遠に一つのものとなることを祈った。神々はサルマキスの願いを叶え、ヘルマプロディートスとサルマキスは、一体の身体となり、男女両性具有存在となった。
ヘルマプロディートス自身は、本来、少年で男であるが、サルマキスと一体化することで、両性具有者となった。この故に、ヘルマプロディートスが「両性具有」の意味を持つようになった。これはオウィディウスの語る物語である。
しかし、彼の名が、父なるヘルメースと母なる愛と性の女神アプロディーテーの合成であることから、ヘルマプロディートスとは、元々「両性具有」の意味を持っていたと考えられる。
エローテスの一人としてのヘルマプロディートス
ヘルマプロディートスは、アプロディーテー女神に従う、エローテス(Erotes)の一人であったとされる。エローテスは、エロース(Eros)の複数形で、愛と性交に関わる有翼の集合神である。
サルマキスの泉の伝説
ニュンペー・サルマキスがヘルマプロディートスを襲い、二人が一体となった泉は、「サルマキスの泉」と呼ばれるが、伝説では、この泉の水を飲んだ男は、女性化(女体化)するとされた。
註
hermaphrodite は、ギリシア語として読むと、「ヘルマプロディーテー」となるが、一般にこのような言葉は使わない。フランス語での読み方である「エルマフロディット」は近現代の文学等で表記例があるが、雌雄同体や両性具有の意味では、英語読みした「ハーマフロダイト」が普通である。欧米では、古代ギリシア語を学ぶ人はかなり多くいるが、それでも、学術語や一般的な用語として、単語をギリシア語読みすることは稀である。
参考サイト
https://en.wikipedia.org/wiki/Hermaphroditus