正式には列車防護無線装置と呼ぶ。運転士が線路上で何らかの異常を見つけた場合、運行中に異音を検知、事故に遭遇などで周囲の列車に緊急事態であることを通知するときに使用する。この防護無線を使用(発報という)すると近隣で電波を受信した他の列車の防護無線装置が警報を発する。警報音はピピピピピピピピピ・・・とけたたましく、乗務員室の近くの客室にまで聞こえる。
この防護無線を受信した列車はたとえ発報元が全く無関係の路線であっても停車し、指令から運転再開の指示が入るまで動くことは許されない。非常ブレーキで停車することもあるが、常用ブレーキで停車する場合もある。
乗客に対しては「只今非常停止信号を受信しました。原因は調査中です。お急ぎの所お客様にはご迷惑をおかけいたします。」などと案内がなされる。この非常停止信号は危険を知らせる信号、列車を停止させる信号などと言い換えられることがある。
なお防護無線はATSやATCと異なり、鳴動することで乗務員に対して列車停止の指示を現示する装置である。各種自動システムとは連動しないので運転手が手動でブレーキをかける。またJRグループで導入している防護無線は、各無線機に用意された固有番号でどの車両から発報されたかは分かるが、その車両がどの列車に使われているかまではすぐに分からない。
防護無線の電波が届くエリアは発報点を中心に直径2km~4km程度とされているが、見通しの良い高架上や丘の上などではより遠くまで電波が届いてしまうことがある。実際1986年には常磐線綾瀬駅に停車中の常磐線各駅停車の車掌が誤って防護無線を扱った際、首都圏の10線区23本の列車がこれを受信して緊急停止した事がある。
近年だと2010年5月に東海道本線摂津富田駅付近を走行中の京都行普通電車が、踏切内に人が立ち入ってるのを発見して防護無線を発報した際、約10km南を走る片町線の複数の列車も防護無線を受信して緊急停車した。一部新聞報道では電離層に発生するスポラディックE層に防護無線の電波が反射したのが原因と書かれたが、スポラディックE層は1000km程度の距離の電波を反射するものであり、10km程度の電波は反射しない。その上防護無線用の周波数帯はスポラディックE層では反射しない。