天体の彗星
太陽系内の天体の種類の一つで、氷や塵でできたもの。軌道が太陽に近づくと溶けだして発生したコマ(大気のようなもの)や尾が大きく輝く。
多くが太陽系の周囲を周回しており、短いものでも数十年単位、長いものだと数百年単位で周回を繰り返している。
一過性の非周期型も存在し、実はこのタイプの方が観測された数では多い。
流星のように空を瞬時に横切ったりすぐに消えたりはしない。もちろん寿命も存在し、周回を繰り返す中で自身を構成する氷塵が一定まで融解しきると、自身の速度や太陽風の影響に耐えられなくなって砕け散る。また何かしらの原因で、周回軌道から外れることもあると考えられている。
1994年に観測された「シューメーカー・レヴィ第9彗星」は、木星に衝突したと考えられ、うちその破片の一つの衝突痕は地球一個分に相当するとまで言われている。
彗星は“凶つ星”か
占星術では東西を問わず、古くから彗星は凶運の星として恐れられてきた。
実際、歴史上の大事件の前後に彗星の飛来周期が重なることは多く、古くは王族や貴人の死の前兆、大乱や病魔の蔓延に関連付けられた。
インド・中国の占星術では彗星を『計都星(けいとせい)』、西洋では『ドラゴンズテイル』と呼び、その出現を恐れたという。
一方、彗星の出現は「地上への天からの警告」とも考えられ、地上の秩序が乱れ、天が何かしらの裁定を下そうとしている前触れとも解釈された。
著名な彗星
列車愛称の「彗星」
国鉄・JRグループが運行した夜行列車に付けられた愛称。天体の彗星にちなむ。寝台特急の「彗星」は1968年から2005年まで京阪神と日豊本線方面を結ぶ列車として運行された。
なお、20系・14系・14系15形・24系・24系25形・583系と国鉄が設計・新製したすべての寝台特急用車両が使用された列車である。
爆撃機の「彗星」
旧大日本帝国海軍の単発複座式艦上爆撃機。日本の航空機としては数少ない液冷エンジン『アツタ』を搭載していた。
海軍自らが次世代の艦上爆撃機を研究するための機体として開発し(性能がよければ実戦機として量産する事をこの時から考えていたようである)、零式艦上戦闘機並みの小柄な機体に胴体内爆弾庫、電動式の操作機構など当時の最新技術を多数盛り込んでいた。
昭和15年11月に完成した試作機は零戦をもしのぐスピードを発揮し、更に航続距離も要求値を超え操縦性なども良好だったため、まず二式艦上偵察機として採用した(当初は艦爆としては機体強度が不足していて改良が必要だったが通常飛行には問題なかったため。また海軍も高速偵察機の必要性を感じており、試作機が偵察機に改造されて空母蒼龍に配備されていた)後、九九式艦上爆撃機の後継として艦上爆撃機「彗星」の名で採用される事になった。
しかし、前述したようにこれは元々研究用の航空機であり、量産・実用性は全く考慮されていなかった。これを無視して量産してしまった結果、当時の工業力では高品質な生産が難しかった『アツタ』エンジンの不調や、電気系統の不作動、整備性の悪さなどが次々と露呈。遂には「複雑・繊細ニシテ実用機ニ非ズ」の烙印まで押されてしまった。
しかし本機に代われる機体などなく、海軍は量産を続けるしかなかった。三三型からは生産が伸び悩んだ『アツタ』エンジンから空冷の『金星』エンジンに換装したものの、戦局の悪化もあり特攻に用いられるのがほとんどだった。
とはいえ、比較的早くから二式艦偵を運用していた第三艦隊や沖縄戦での活躍で知られる芙蓉部隊では、豊富な予備部品と『アツタ』エンジンに熟知した整備兵を揃える事で高い稼働率を維持し、奮戦している。
ちなみに生産数は2157機と、海軍機では零戦や一式陸上攻撃機に次いで3位。
また一部は『戊型(ぼがた)』という号を冠し、夜間戦闘機に改造された。