会社概要
「The 3DO Company(3DO社)」は、1991年にエレクトロニック・アーツの創業者の一人、トリップ・ホーキンスがゲーム機開発を目的に設立した企業である。32bitマルチメディア端末の統一規格「3DO」を各社にライセンス提供し、規格に基づいたゲーム機を各社に作らせるビジネスモデルを採っていた。
更に64bit規格「M2」も開発していたが、これが日の目を見る前に業績が悪化したため、
1995年に3DO・M2の両規格の権利を松下電器産業(現社名:Panasonic)に売却した。
その後3DO社はセガサターンやプレイステーション、パソコン用のゲームソフトを開発、販売していたが、
3DO社のゲームソフト
マイトアンドマジックシリーズ
3DO規格
北米で1993年10月4日に、日本では1994年3月に松下電器産業から「3DO REAL」が発売された。これが最初に発売された3DO規格マシンであり、史上初のスプライトや動画再生能力を持つ32Bitゲーム機として話題を集めた。
単に「3DO」と言った場合、基本的にはこの「3DO REAL」のことを指す。
同年10月1日に、日本では三洋電機からも「3DO TRY」が発売された。
海外では同年に「Goldstar(LG電子)」も「3DO ALIVE」をリリースしている。
他にも、パソコンにISA拡張ボードとCD-ROMドライブを接続することで3DOとして使えるようにする「3DO Blaster」というシステムも「クリエイティブテクノロジー」社から発売された。
3DO社の方針もあってかあくまで情報家電という位置づけで販売され、メーカーもインタラクティブ・マルチプレイヤーと称していた。他社のゲーム機と違ってソフトメーカーからのロイヤリティ収入が見込めないため、原価以上に販売価格を設定せざるを得ず他のゲーム機と比べて明らかに高価だった。
ヨーロッパ輸出の際には情報家電という位置づけが却って不利に働いた。EUにおいては「情報家電」にはゲーム機よりも更に高い関税が課せられるため、余計に価格が跳ね上がったという。
また、相次いで発売された初期のゲームソフトも輸入物が多く、日本人に馴染みにくい内容だったため普及が伸び悩んだ。その結果、本来本機のコンセプトだった筈の「ゲームに留まらない情報家電」への展開がなされず、『単に高いゲーム機』『洋ゲー主流で取っ付きにくいマシン』というイメージが定着してしまった。
更には「ゲームに留まらない」という方向性が災いし殆どのゲーム雑誌からは他のゲーム機と同格には取り上げられず、別枠で便宜的に紹介されるだけだったために一般層への認知度は一向に広がらなかった。
約半年後の11月には「セガサターン」、12月には「プレイステーション」と次々に国産32ビット機が展開され、未だに洋物ゲームが主流だった3DOは早くも追い抜かれてしまう。
しかし、同年11月に大手国内ゲームメーカー・カプコンからそれまで国内の家庭用ゲームソフトとしては発売されていなかった同社のアーケード用ヒットタイトル「スーパーストリートファイターIIX」がリリースされ、これを機に一気に国内消費者を意識したラインナップへと転換を図り、同時に高額だった本体も設計を見直した廉価版「3DO REAL II」を投入するなど盛んに攻勢を仕掛けた。
更に1995年にはオリジナルタイトル「Dの食卓」がヒットしハードの普及率も一時上向きになったものの、これ以降は知名度の高いキラーソフトを継続的に送り出すことができず再び失速、国産機の世界展開開始に比例して3DO社の業績が悪化し始める。
同年末に3DO社から松下電器が事業を受け継いで展開するが、規格提唱者が撤退したことでサードパーティーからは敬遠されてしまい、「魅力あるソフトの減少=ハードの普及不振」という悪循環に陥ってしまった。
この状態により、既に確固たるユーザー層を積み上げてしのぎを削り合う状態になったセガサターンとプレイステーションの勢いに追いつくことができず、更に1996年6月には任天堂の「NINTENDO64」が発売されたことでユーザーの興味はほぼ完全にこれらの3機種に絞られてしまい、ユーザーを3DOに振り返らせる術を失ってしまった。結局同年末頃までには淘汰され店頭から消えていった。
CPUにPowerPCを使用した後継機「Panasonic M2」も開発されていたが、一部のメーカーにアーケードゲーム基板として採用されたのみで家庭用ゲーム機としては発売されなかった。
なお、1995年にコナミからメタルギアシリーズ第三作目の3DO用ソフト『メタルギア3(仮)』(後のメタルギアソリッド)が発売される予定だった。しかし、阪神淡路大震災で当時のコナミ神戸本社が被災し発売延期になり、更に松下電器がゲーム事業から撤退したため、3年後にプレイステーション用ソフトに変更されて発売された。
3DO端末
- 3DO REAL(FZ-1)
松下電器より1994年3月20日に発売。価格は54,800円(発表時は79,800円だったが値下げされた)
- 3DO TRY(IMP-21J)
三洋電機より1994年10月1日に発売。価格は54,800円(1995年夏頃からオープン価格)
- 3DO REAL II(FZ-10)
松下電器より1994年11月11日に発売。価格は44,800円(1995年夏頃からオープン価格)
CDドライブをトレイ式からトップローディング式へ変更し、倍速CD-ROMの駆動回路や電子回路の集積化などコストダウンを図って値下げしたモデル。
3DO REAL(FZ-1)に実装されているLSI
- ARM60 CPU(VY86C06020FC-2)
※下記FZ-10と同様にP60ARMが実装されているものもある。
- MADAM(6SC700HF101)
- CLIO(6SC800HF103)
3DO REAL II(FZ-10)に実装されているLSI
- ARM60 CPU(P60ARM)
- MADAM(6SC700HF101)
- CLIO(6SC800HF103)
仕様・主要諸元
CPU | 32ビットRISCプロセッサ ARM60(12.5MHz) |
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メモリ | メイン2MB,VRAM 1MB,SRAM 32KB(バッテリーバックアップ) |
バス速度 | 50MB/秒 |
描画速度 | 6400万ピクセル/秒 |
解像度 | 640ドット×480ライン |
カラー機能 | 最大1,670色、32,000色同時発色 |
ポリゴン機能 | テクスチャマッピング、グーローシェーディング |
サウンド | DSP |
CD-ROMドライブ | 倍速 |
対応CD-ROM規格 | 3DO用CD・CD-DA・ビデオCD・CD-G・フォトCD |
毎秒30フレームのフルスクリーン・フルカラー動画再生機能(シネパック) | |
ビデオCDの再生にはビデオCDアダプターが必要(高精細静止画不可) |
周辺機器
3DOコントロールパッド(Panasonic FZ-J91X/FZ-J92X)
標準のコントローラー。パッド上部に別のパッドを接続するためのコネクタを備えており、デイジーチェーンで8台まで接続できるという珍しい仕様になっている。また、パッド下部にステレオヘッドホン端子や音量ボリュームを備えているタイプもある。
3DOマウス(Panasonic FZ-JM1)
3DO専用のマウス。マウス対応のソフトでのみ使用可能。
デジタルスティックコントローラー
アーケードゲーム仕様のコントローラー。(Panasonic FZ-JS1)
6ボタンコントロールパッド(Panasonic FZ-JJ1XP)
スーパーファミコン用コントローラー「カプコンパッドソルジャー」の3DO版。
メモリーユニット(Panasonic FZ-EM256)
ゲームのセーブデータを保存しておくための外部補助記憶装置。容量は256KBで、本体内蔵メモリーの8倍の容量である。
カタログスペックだけは高性能だが、肝心のUIがゲームソフトから直接アクセス出来ず、専用ディスクが必要というお粗末な仕様で、ライバル機のセガサターン用フロッピーディスクドライブ同様に普及しなかった。
ビデオCDアダプタ(Panasonic FZ-FV1A)
ビデオCDを再生するのに必要なアダプタ。COMPACT DISC DIGITAL VIDEO、VIDEO CD、3DO DIGITAL VIDEO対応。Panasonic 3DO REAL(FZ-1)専用。ビデオCDアダプター用電源(Panasonic FZ-AA103)
上記FZ-FV1Aの電源。
ビデオCDアダプタ(Panasonic FZ-FV10)
FZ-10専用ビデオCDアダプタ