ゼルグート級一等航宙戦闘艦
ぜるぐーときゅういっとうこうちゅうせんとうかん
概要
オリジナルのドメラーズⅢ世をリデザインしたもので、ゼルグート級と改められている他、当作中では3隻が建造され、デスラー専用、ゼーリック専用、ドメル専用として登場した。
2202ではこれらと別に追加で登場するが、この追加分の扱いは各メディアで異なる(後述)
2199版
『宇宙戦艦ヤマト2199』に登場する大ガミラス帝星の巨大戦艦。国家元帥ヘルム・ゼーリックの主導の下で建造され、大艦巨砲主義思想を色濃く反映させた艦級でもある。
それ故にガミラス艦艇で最大級の巨体を誇り、武装も最大口径490mm陽電子ビーム砲塔を7基28門も搭載している。同時に装甲も随一の厚さと固さを誇っており、ヤマトとの撃ち合いで十分に対抗しうる。その反面、重装甲が祟って機動性が落ちてしまったのが欠点でもある。
当級を専用艦として与えられるのは高官の者、或いは功績に相応しい者ばかりであり、1番艦『ゼルグートⅡ世』はゼーリック専用の艦として、2番艦『デウスーラⅠ世』はアベルト・デスラー専用の艦として、3番艦『ドメラーズⅢ世』はエルク・ドメル専用の艦として、それぞれ名称を付けられた。
(一見すると、Ⅰ世、Ⅱ世、Ⅲ世の順に並べたくなるが、ゼルグートⅡ世がネームシップである。ややこしい感じはするが)
2202版
本編
続編『宇宙戦艦ヤマト2202』でも装甲突入型ゼルグート級という名で登場し、設定上では4隻存在しておりその内の3隻が第1章にて登場している。なお「2199」では最新鋭艦とされていた筈の本級だが、3年後の2202では早くも旧式とされている。公式設定ではないが旧式扱いの理由として小林誠氏のツイッターにて、「2199に登場したゼルグート級よりも、前に建造された型式であるから」という裏設定が明かされた。つまり本当の意味での初期型ゼルグート級と言えよう(後付け設定であるため後から建造されたことになったゼルグートがネームシップであるのは少し不自然になってしまっているが)。
また装甲突入型は、敵領域に突入し占領した後に砲台と化して戦う事を目的としているらしい。前世でのお株を奪われたヤマトの未来やいかに。
2202に登場した3隻の正確な艦名は不詳であるが、地球側からは『ケルベロス』と呼称され、ナンバーで分けられる(ドイツ語読みで『Ⅰ:アイン』『Ⅱ:ツヴァイ』『Ⅲ:ドライ』。ただし作中でこの名称は登場せず設定のみ)。
特徴の1つ目として、どれもこれもが全面黒塗装であり、尚且つジレル人の遺跡を彷彿とさせる地球人類の想像の範疇を超えた珍妙奇天烈奇妙奇怪な模様を施されている。(この模様のモチーフはガミラスだけでなくガトランティスでも使われており古代アケーリアス文明との関連性を考察する向きもあったが、一見無関係なゲーム「World_of_Warships」で小林誠氏が手がけた戦艦紀伊オリジナル迷彩でも使われていたりと当作の世界観のみに収まる話でもなかったようだ。)
さらに2つ目の特徴として、火焔直撃砲対策として開発された、三層に重ねられた巨大な長方形の盾『ガミラス臣民の壁』を艦首前方に構えている。一方で盾を真正面に据え置いたことで、本艦の火力を最大限発揮できないデメリットが生じている。
第8浮遊大陸を占拠するガトランティス艦隊との激しい戦闘に投入されており、『ガミラス臣民の壁』は火焔直撃砲の貫通を許さなかった。が、2隻同時による火焔直撃砲には耐えられず貫通され盾と艦体諸共に消滅してしまった。
残る1隻は、第3章『純愛編』に登場。外見はケルベロスと同様の模様だが、模様部分が赤くなっているのが何よりの違いである。ガミラス反乱軍としてヤマトと戦闘を繰り広げる。
第6章では再生産されたと思われる本級が(画面上は10隻、画面外にも同程度居ると推定。)登場。盾、塗装含め外観上の仕様はケルベロスと同様である。最大の目標であった火炎直撃砲のメダルーサ級は第1章以来戦場に投入されることがなくなったが、「盾」のワープ妨害機能を買われてこの戦闘に投入された事が示唆されている。(わざわざ旧式を再生産したとしては過剰なほどの数がいるが。)
小説版
なお小説版では当艦の扱いは異なっている。小林誠氏のTwitter情報では旧式で前期型とも言える位置づけだったが、小説では地球との戦後に追加建造されていたものとされる。ただし旧式扱いとなっているのは変わらぬ設定であり、小説では戦後完成した時点で旧式として扱われていたとの事である。
スペック
2199版
- 艦型:ゼルグート級一等航宙戦闘艦
- 同型艦:『ゼルグートⅡ世』『デウスーラⅠ世』『ドメラーズⅢ世』
- 全長:730m
- 武装
- 490mm四連装陽電子ビーム砲×7基
- 330mm三連装陽電子ビーム砲×4基
- 艦首空間魚雷発射管×6門
- 艦尾空間魚雷発射管×7門
- 艦橋空間魚雷発射管×6門
- 艦長
- 座乗
主砲はガミラス艦艇の中で最大口径砲である490ミリビーム砲塔7基28門を搭載。さらに副砲にガミラスで広く使われている330ミリ陽電子ビーム砲塔を4基搭載し、合計40門と『2199』におけるガミラス艦艇でも特一等航宙戦闘艦『デウスーラⅡ世』とゲルバデス級戦闘航宙母艦『ダロルド』の同率一位、54門に次ぐ砲門数を誇る。
防御性能は本級の白眉で、ガミラス艦の中でも1、2を争う強固さを持っており、艦首部の正面装甲は通常の艦艇なら一撃で仕留められてしまう威力のヤマトの48サンチショックカノンをいとも容易く弾いている。側面装甲は艦首ほどには厚くないが、それでも上部甲板砲塔部を接射同然の至近距離で撃っても、ビーム砲と表面装甲しか破壊できない。さらには、舷側に集中砲火を浴びせても致命的な損傷には至らなかった。
航行性能において、このような重武装、重装甲を追及した分、その巨大さも相俟ってガミラス艦の中では珍しく機動性が犠牲になっているのが欠点と言えよう。だが艦隊旗艦という立場を考えた場合、そこまで機動性は求められないのかもしれない。
また特殊機能として、艦橋を切り離し独立戦闘指揮艦として運用する事が可能であり、こちらはかなり高い機動性を発揮し本体の劣悪な機動性をある程度だがカバーできる。最も劇中の独立戦闘指揮艦は、ドメラーズⅢ世にしてもゼルグートⅡ世にしても本体が撃沈に追い込まれる程の緊急事態に脱出艇としてしか使う局面がなかったが。
2202版
- 艦型:装甲突入型ゼルグート級一等航宙戦闘艦
- 艦名:『名称不明(ケルベロスⅠ~Ⅲ)』『反乱軍旗艦(名称不明)』
- 全長:730m
- 武装
- 490mm四連装陽電子ビーム砲×7基
- 330mm三連装陽電子ビーム砲×4基
- 艦首空間魚雷発射管×6門
- 艦尾空間魚雷発射管×7門
- 艦橋空間魚雷発射管×6門
- ガミラス臣民の壁×1基(反乱軍旗艦には未装備)
- 座乗
- 反乱軍旗艦:導師
主な性能はほぼ同一と思われるが、こちらの方が型式は古いとされる(ただし、小説版では後期に建造された事になっているが、旧式扱いは変わらず)。
『2199』登場艦との最大の違いは『ガミラス臣民の壁』と呼ばれる、対火焔直撃砲防御兵器が(設定から察するに後付けで)装備されている事である。この盾は巨大な3枚の長方体を重ねた様な形状で、波動防壁を張っているらしい。盾そのものにもエンジンが搭載されている。
その防御力は強固なもので、単発による火焔直撃砲を受け止める事は十分に可能である。しかし複数隻からの同時射撃までは考慮されていないようで、2隻からによる同時射撃には耐えきれず盾ごと破壊されてしまっている。また盾が巨大すぎる故に自艦の正面方向の射線を塞いでしまうため、自身の装甲を生かす為に敵を正面に睨んでの戦闘時には火力を完全に殺してしまい本来の大火力を発揮できないデメリットを持つ。しかも強固とはいえ、あくまで盾の正面からの攻撃でなければ対応できず、側面からの攻撃の場合は自前の艦首ほど厚くない装甲で受けなければならないため、劇中でも側方や斜め上方からの砲撃で装甲を破られている。(ゼルグート級の機動性の悪さ故に艦首の向きを変えて対応する等の芸当も困難である。) 第6章では盾が通常攻撃を『吸い寄せ』る場面があるが、この際も正面からであり側方からは砲撃されていない。
そしてこの盾には、副機能として強力な電波妨害に似た手段でワープを妨害することが可能であり、火焔直撃砲の特性である空間跳躍を利用した、圧倒的な射程の長さによるアウトレンジ攻撃を封じ込めている。
ただしこの機能の代償として、友軍艦艇のワープによる戦闘宙域への参加、および撤退を不可能にしてしまうため友軍艦艇はその影響を受けない様に遠く離れた宙域でワープアウトを行う必要がある。
(ワープ妨害機能が存在することが説明されたのは第6章の事であり、地球艦隊が戦闘宙域から遠い場所でワープを行っていた理由は劇中説明がないが、小林副監督のツイートで解説されている。)
ちなみに『盾』の運用は本艦でなければ出来ないのかに関しては不明である(『盾』とゼルグートは繋がっておらず、ゼルグートから何らかのエネルギーを供給しているのか、もしくはゼルグートはただ押すだけなのか、だとすれば『盾』のエンジンの出力だけで波動防壁を張れるのか不明。)。
なお反乱軍旗艦として登場したものは大盾を搭載しておらず正面へ砲撃が可能となっており、盾無しでもその防御力は明らかにオーバーキルともいえる程のショックカノンを叩き付けられながら原型をほぼ留める硬さを示した。
艦橋部独立戦闘指揮艦については、同型艦含め2202内では第3章までの現在全く使用場面がないため装甲突入型にも存在する機構なのかは不明である。ただし小説版では、ショックカノンを艦橋を中心にして暴風雨の如く受けたことが原因で機構が破損し、分離できなかったのではないかと説明されている。
経歴
ゼルグートⅡ世
ネームシップにして、真紅に染まった艦体が特徴的なゼーリック専用艦であり、バシブ・バンデベルを艦長としている。多数の護衛艦を引き連れてバラン星観艦式へ出発する場面で初登場。バラン星で観艦式(実際には観艦式を隠れ蓑としたガミラス政府へのクーデターの準備)を挙行中に、ヤマトの乱入を受け集結中の艦隊はゼーリックの酷い指揮振りと相まって大混乱に陥る。
さらに暗殺の手を逃れていたデスラーの生存という驚きの情報も飛び出して混乱に拍車が掛かる中ゼーリックはグレムト・ゲールにより射殺され、ゼルグートはゲールに掌握されつつその場の暫定的な総旗艦として一時的に機能していたが、ヤマトがバラン星のエネルギーコアを破壊した後はゲールが自分の乗艦ゲルガメッシュに移乗したため、当艦の指揮はバシブ・バンデベルに戻った。
しかし、クーデターに加担したバンデベルは本国への帰還を拒否して、ゼルグートⅡ世ごと反転し離脱。他の艦艇を引き連れて行方をくらましてしまった。
その後はTV本編では確認できずじまいであったが劇場版『星巡る方舟』で、ゼルグートⅡ世他数十隻の艦隊は本国へ帰還すれば極刑となるため帰還できず大マゼラン外縁にて彷徨い続けていた事が判明。そこにデスラー政権の崩壊という知らせが届き、混乱に乗じて帰国するまたとないチャンスと見たバンデベルだったが、そこにガトランティスのゴラン・ダガーム率いる艦隊が襲い掛かった。
重装甲かつ大火力を有するゼルグートⅡ世とはいえ、メガルーダの火焔直撃砲は射程圏外から攻撃してくる為に成す術もなく、艦隊は瞬時にゼルグートⅡ世以外の艦を撃沈されてしまった。そしてゼルグートⅡ世にもその牙が襲い掛かり、最も強固な筈の艦首装甲をも火焔直撃砲の前に容易く貫通されてしまう。それどころか艦尾まで一直線に大穴を空けられてしまい、各所がグズグズに溶かされた末に爆沈、宇宙の塵と化してしまったのである。残る独立指揮戦闘艦は爆沈寸前に分離し逃亡を図るも、火焔直撃砲の追撃を受けて消滅してしまった。
デウスーラ
詳細はデスラー艦にて
ケルベロス
ガミラスの保有していた第8遊大陸基地を奪還する為に、残存していた(小説版では追加建造された)ゼルグート級の内3隻(地球側の呼称は「ケルベロス:アイン、ツヴァイ、ドライ」)が第38辺境任務部隊に投入されている。3隻全てが巨大な『盾』を艦首前方に展開しており、これを以てメダルーサ級の放つ火焔直撃砲の被害を抑え込んでいたが、2隻からの同時射撃によって許容範囲を超えた為に、1隻(アイン、ツヴァイ、ドライのどれかは不明)が盾もろとも蒸発してしまう。
その直後古代進の『ゆうなぎ』が敵味方双方の射線に飛び込み塞ぐ危険行為を犯しながらも単艦で敵陣深く突撃し、1隻のメダルーサ級を魚雷の集中射撃で轟沈せしめた為、同時射撃のできなくなったガトランティスに対して優位に事を進めつつあった。それでも側面から強襲してくるガトランティス艦隊の攻撃で、1隻が左舷に被弾するものの持ちこたえた。
不自然なガトランティスの後退に乗じる形で突出し攻勢に出るが、そこで登場したカラクルム級戦闘艦の雷撃旋回砲による驚異的なビーム弾幕によって、1隻(アイン、ツヴァイ、ドライのどれかは不明)が艦体装甲を滅多打ちにされ爆沈の道を辿った。もう1隻(アイン、ツヴァイ、ドライのどれかは不明)は辛うじて持ちこたえ、アンドロメダの拡散波動砲による逆撃で事なきを得ている。
反乱軍旗艦
第3章『純愛編』の惑星シュトラバーゼにて登場。表面の基本塗装は漆黒であり、ケルベロスと同様に不思議な模様が刻まれている。ガミラス現政権に対して従う意思を持たぬ政治犯等が中心となる反乱者で構成される「反ガミラス統治崩壊解放軍」なる組織の旗艦(総旗艦かは明らかにされていない)。基本性能は他の同型艦と変わらないと見られるが、惑星間弾道弾のコントロール機能を有していた。
経歴 -シュトラバーゼへ到着-
ガミラス艦が惑星シュトラバーゼに立ち寄っているとの情報(実際はカーゼットらが故意に流したもの)を得て、ヤマトとランデブー中だったガミラス艦隊に襲い掛かる。その際、僚艦にクリピテラ級航宙駆逐艦9隻を率い、並びに惑星間弾道弾を10発近く用意していたが、その場に鉢合わせる事となったヤマトと戦闘となる。
ヤマトとの戦闘
ゼルグート級でヤマトに直接対決を挑んだのは本艦で2隻目である。しかし旧式扱いの本級では、改装後のヤマトに対し能力にやや水をあけられている事が劇中垣間見えており、(恐らく反乱軍側の練度に問題があるのも相まって)互いに正面切って激しい砲撃を見舞い合っておきながら、ヤマトには波動防壁で防がれてしまい全く傷を負わせることもできず、逆に一番厚い筈の艦首装甲表面に傷を付けられてしまう。
無論、その程度で参る本艦ではなく突撃を敢行、文字通りに鼻先同士でヤマトと激突。ヤマトは押し切られる形となり反乱軍旗艦に対して右横腹を晒す形となった。だがヤマトは横向きになった故に全砲門を反乱軍旗艦に向ける事が出来るようになり、臨時指揮を執っていた土方の咄嗟の判断によって至近距離から全火力が艦橋や甲板上に徹底して叩き込まれることとなる。
一方で反乱軍旗艦は、文字通り目と鼻の先にいる筈のヤマトに対し直撃すらさせることが出来ず、一方的に滅多打ちにされ甲板上は文字通り火の海となり、沈没の場面こそ描かれなかったものの乗艦していた導師ら反乱軍兵士も軒並み戦死したと思われる。
戦闘不能
結果としてヤマトへ大した傷を負わせることも無く退場した当艦だが(小説版では、すれ違った後に波動防壁の限界を超えて1発だけダメージを与えてはいる)、画面上で最低でも艦首に6発を始めとして、至近距離戦に移行してからは全砲門6斉射分(主、副砲の合計で90発)、さらに艦橋基部付近にも被弾痕を生じているなど計約100発ものショックカノンを受けているのが見て取れ、その耐久性能は相変わらず桁違いである事を改めて証明する形となった。
ただし演出のためにゼルグート級側の耐久に補正がかかっていた可能性も否めない。いわゆる逆・主人公補正である。事実、第一章でのケルベロスは、(装甲をハチの巣にされたとはいえ)威力では流石にショックカノンに及ばない筈の雷撃旋回砲により爆沈している。
余談
オリジナル版のドメラーズⅢでは、最新鋭艦として登場したもののいまいち影の薄い存在だった。しかし、2199制作の上でヤマトとタイマンでシリーズ中で最も激しい砲撃戦を展開した戦艦として逆にその名をファンや視聴者に強く印象付けるという真逆の結果を残した。
しかし、作中初戦闘となる15話では圧倒的な強力さを見せつけた本級であるが、2199から2202へとシリーズが進むにつれただ装甲が固いだけのかませ犬状態に扱いが落ちてしまっている感は否めない。(誤解のないよう言っておくと本級がガミラス屈指の強力な艦級であることは事実である。)
またその艦首の独特の形状から、視聴者などからはバリカンみたいと揶揄されることもある。が、そのネタ(と言ってもよいのか?)が2202小説版第2巻にて回収されたようで、斉藤始が
「バリカンみたいな艦首のくせに」
と悪態を付いている。