フジツボ
ふじつぼ
概要
石の表面などの基体にくっつける水生動物。昔は貝のような容姿で軟体動物と誤解されたが、実はエビやミジンコなどと同じくれっきとした甲殻類(節足動物)である。
日本において「フジツボ」と名付けるものは、鞘甲亜綱・蔓脚下綱・無柄目におけるフジツボ亜目の種類だけである。しかし海外におけるとフジツボ(英名:barnacle)は蔓脚下綱そのものの総称であり、すなわちエボシガイ、カメノテやフクロムシなどをもフジツボであるとされる(広義のフジツボ、蔓脚類)。
一部の種類は他の海洋生物(クジラ、ウミガメ、カニ、カブトガニなど)の体表にくっつけることもある。
漢字表記「藤壺」「富士壺」の示す通り、火山ないし壺から触手が出てくるような姿をしている。この触手は「蔓脚」という脚であり、それを使って水流のプランクトンを濾過し、中身に運んで食べている。
外からは想像しにくいが、中身の本体は仰向けの姿勢をしており、殻から出している部分は蔓脚とそれを繋げた後半身である。
いわゆる普通のフジツボ(フジツボ亜目)は殻をもつ本体部でそのまんま基体に張り付いているが、仲間であるエボシガイやカメノテ(有柄目)は柔らかい柄で基体にくっつける。フクロムシの雌は寄生生活を極め、ほぼ全ての器官を退化させて肉の袋のような姿に成り果てる。
生活環
フジツボは雌雄同体であるが、繫殖には別の個体との交尾が必要である。フジツボの成体は自由に移動できず、代わりに長いペニスで付近の個体と交尾する。このペニスは体長の何倍よりも長く伸ばし、体の割に動物界最長のペニスである。しかもこのペニスは、水流の強さに応じて太さを変化させる能力をもつ。
幼生はプランクトンとして自由生活を送り、ある程度まで成長すると触角で合適な表面に付着し、殻を構成する成分を分泌してフジツボの姿になる。
人間との関わり
真ん中の穴(特に死んだ個体は空いている)に加えて高密度で集まることが多く、そこから蓮コラに連想させ、不気味を感じさせることも少なくない。
加えてその外殻部分はかなり固く部位によっては鋭くなっている箇所もあるので、素肌を晒した人間が足場を歩く際に怪我をする危険性もある。
船底に付着し、水の抵抗を増やして航速を落とすという害もあるため、船底に薬品を塗ってフジツボの固着を防いでいる所も多い。
また、一部の種類(カメノテなど)は魚介類として食用とされることもある。
ちなみに、このフジツボで身体を切る怪我をした人間がその後に身体の不調を感じて医者に診てもらうと、その人間の体内でフジツボが生育していたという怪談もとい都市伝説があるが、無論嘘っぱちである。