「千鳥と小烏丸、まだ幼い二羽の鳥よ……」
概要
折神家の当主で、警視庁特別刀剣類管理局の局長を務める女性。20年前の相模湾岸で発生した大災厄(通称:相模湾岸大災厄)において大荒魂を討伐する特務隊の隊長を務めており、これを鎮圧・平定した最強の刀使としても知られている。
プロフィール
人物像
大荒魂を討伐した最大の功労者として知られている。加えて彼女が当主についてから管理局開発現場の技術レベルが急激に向上し、刀使の戦力が増強したとされている。
懐が広い人物であり、寡黙で冷徹そうな外見に見合わずとても情に厚く、周囲の冗談やワガママに付き合ったり、礼を失した発言も受け入れる度量を見せる一面もある。
特に若い頃は今以上に年相応の趣味や悩みなども抱えており、クールだが底抜けに優しいというある意味主人公のような気質を持っていた。
大災厄当時、共に戦場を駆けた戦友達に比べて、若々しい外見を保っている。
本編での活躍
本作における全ての始まりというべき人物であり、その内情は実に複雑である。
1話では全国5校から優秀な生徒を集めた競技会を開催し、御前試合を感染していたが、試合中十条姫和に突如刀を向けられ、姫和及び逃走幇助した衛藤可奈美を意図的に見逃すが……。
胎動編
実は大荒魂「タギツヒメ」に体を乗っ取られており、物語前半の紫は殆どが大荒魂の意識に支配されている状態である。
相模湾岸大災厄に、後の伍箇伝の学長及びに可奈美の母藤原美奈都や姫和の母十条篝と共に大荒魂を迎え撃った。しかし、敵の強大さから結局鎮められず、篝が命と引き換えに隠世に大荒魂を引きずり込む「鎮めの儀」を行うこととなる。美奈都がこれを救おうとして隠世に飛び込むことになり、親友を一度に二人も失ってしまうことになる。
自身の無力さに絶望した時、大荒魂(タギツヒメ)から取引を持ちかけられ、自身を受け入れれば二人を返すという見返りの代償として、大荒魂と同化する道を選んでしまう。
その後は彼女が事件を解決したことにされ、美奈都と篝の名は事件記録から抹消。この影響から二人は刀使の力を失い、同時に寿命を大きく削ったことから、共に本編開始前に亡くなっている。なお、管理局の技術力を向上させたのは、タギツヒメが自身を強化するため、荒魂の源である穢れ「ノロ」を集めやすくするよう仕向けたからである。
加えて、姫和が彼女に刃を向けたのは、母・篝の残した手紙から、大荒魂が彼女に乗り移っていることを知ったため。しかし大荒魂はあえてこれを泳がせ、管理局内の敵対勢力を引きずり出す事を目論んだ。
妹の折神朱音は姉が大荒魂に乗っ取られていることを知り、技術レベルが急激に向上したことで折神家に疑いを持った古波蔵エレンの祖父リチャード・フリードマンや伍箇伝学長の一人真庭紗南と共に、反折神紫派の組織「舞草」を結成。成り行きで反抗勢力となった可奈美達をサポートすることになった。
鎌倉の折神家に乗り込んできた可奈美達を相手に、タギツヒメとしての正体を明かして迎え討つ。もはや完全にタギツヒメに身体を乗っ取られたかに見えていたが、可奈美に龍眼(予測演算能力)を破られて千鳥の一撃を受けたことでタギツヒメとの支配率が一時的に逆転し、わずかに紫の精神が戻り、自分ごとタギツヒメ討つように発破をかける。
その一瞬を逃さず、自分ごとタギツヒメを討ち隠世を封じるよう可奈美と姫和を叱咤するが、直後に頭髪が荒魂と織り合わさった異形の四本腕へと変容。元々の二刀と合わせて驚異の六刀流を振るう怪物と化し、圧倒的な強さで可奈美達を退けた。しかし、直後に思わぬ逆襲を受ける事になる……。
波瀾編
タギツヒメとの死闘の末、事件は一旦解決という形になった。表向きには「大荒魂のノロは各地に散らばり、折神紫は意識不明のまま療養中」と説明されているが、真相は異なる。
討ち損じた大荒魂に対抗するべく、朱音に局長代行を任せ、紫自身は舞草が用意した医療施設を兼ねた潜水艦に恩田累と共に文字通り潜伏。やがて真実を知らされた可奈美や姫和、そして獅童真希と此花寿々花を同艦に招き、分裂した大荒魂の一柱・イチキシマヒメと対面させた。
タギツヒメに乗っ取られた影響からか、肉体年齢は17歳の頃のままであることが判明している。しかし体内に荒魂は残っておらず、本人曰く「見捨てられた」とのこと。
20年間停止していた肉体の老化が再開しているのかは不明(ただ、元から学生時代と比較して胸や背は明らかに成長している)。
可奈美はこれを「トカゲの尻尾切り」と表し、周囲を慌てさせたが、本人は同意しつつ自嘲的な笑みを見せた。この時期の紫は、イチキシマヒメのネガティブな発言にツッコんだりと、本来の彼女が持っていたであろう人間味を取り戻した姿と言えるだろう。
その後、イチキシマヒメの所在が敵側に割れると潜水艦を放棄して上陸。彼女を護衛しながら逃亡する。そしてイチキシマヒメと同化した姫和が暴走した際には、「身体に大荒魂を受け入れた先達」として様々な助言・指導を行い、最悪の場合にはその手で始末をつける覚悟も見せている。
姫和がタギツヒメの強襲を受けた際は、絶望的な言葉で精神を消耗させようとするタギツヒメの言葉を一つ一つ否定して挑発。結果、憤ったタギツヒメに自身を攻撃させ、写シで捉えることで姫和に攻撃のチャンスを作らせようとするなど、捨て身の行動も厭わなくなっている。
他の二柱を吸収したタギツヒメとの最終決戦では、可奈美達らとともに奮戦。しかし最後の最後で写シを張るのが間に合わず、重傷を負う。戦闘継続不能となった紫は、タギツヒメとの決着を可奈美と姫和に託し、自らは祝詞を唱えつつ現世と隠世の境界を閉じ鎮めた。
決戦後は治療に専念しながら、隠世に消えた可奈美と姫和の身を案じる姿を見せている。
BD/DVD6巻特典の書き下ろし短編では局長の役職からは引退。その椅子を代行だった朱音に正式に譲った事が明かされている。
意識について
実の所、胎動編における紫がどの程度意識を保っていたかは不明であるが、タギツヒメはタイムリミットを「十数年後」としており、さらに公式サイトのプロフィールにおいては「20年の間に侵食を受け意識を殆ど失っていた」と記されており、最低でも2年前の時点ですでに身体の自由を失っていたようである。
その間、朱音も内なる何かと会話しているシーンを目撃しているが、洗脳された紫が対話していたのか、紫がかろうじて残った意識で抵抗を試みた結果に見せた隙なのかは不明。
時間軸は違うが、コミックにおいて描かれた朱音の回想では、タギツヒメから「そうして私の中で悔やみ続けるがいい…あの日私を打ち損じたことを…」と嘲笑われる様子が描かれている。
一方、ゲーム上のイベントや「みにとじ」では本来の紫に近い大らかで細事を気にしない性格を見せており、親衛隊のこともよく気遣うなど、かつての面影を見せる場面も多い。
ただしゲームのイベントは結芽の入隊時期などから考えると辻褄が合わない箇所が多く、こちらもゲーム時空という独立した世界になっている可能性が高い。
総合すると、タギツヒメ側に直接的な害を及ぼさない平時は、あえて肉体主導権を紫の側に委ね、自ら剣を抜く必要があると判断した際のみタギツヒメに「交代」していたのかもしれない。
刀使として
二天一流を修めており、童子切安綱・大包平の二振りを用いた二刀流を使う。その実力は作中でも屈指であり、可奈美、美奈都、姫和、結芽といった作中最強格の刀使達の一角を成す。
タギツヒメから解放された後もその強さは健在で、イチキシマヒメ護衛時には多数のタギツヒメ近衛隊(ストームアーマー装備)に囲まれた時にも、容易く一人で切り抜けてしまうほどであった。
ゲーム版『刻みし一閃の燈火』
カップ焼きそばについて
本編外の話になるが、ゲームアプリ版『刻みし一閃の灯火』の宣伝用ギャグ漫画『とじのとも』では、カップ焼きそばを適切な時間に食すことにこだわり、大荒魂の力まで使って結芽を2分50秒で返り討ちにするという大人気なさを見せる回も。
なお、2019年4月に実装された美奈都の個人エピソードにおいて「中学時代、紫は家出したことがある」という衝撃の過去が暴露されると共に、その際カップ焼きそばを食べていたことが判明した。詳細は不明だが前後の会話から察するにそれが初めてのカップ焼きそばであったこと、そしてそのことに美奈都が大きく関わっていたことが伺える内容となっている。
また同エピソード内で、立場上カップ焼きそばを好んで食べているとは誰にも言えない旨を寂しげに告げたところ、「それじゃ今後稽古の時には一緒に食べよう」と誘われて嬉しそうに満面の笑顔を浮かべる様子が描かれた。紫にとっての「カップ焼きそば」はただの好物を超えて、もう二度と会えない亡き親友との思い出の味なのかもしれない。
みにとじなどでは普通に屋台の焼きそばなども好んで食していることがわかるが、プロフィール上ではあくまでも好物はカップ焼きそばである。
その他ゲーム内イベントなど
前述の美奈都の固有エピソードでは『約束よりも別の用事を優先されて腹を立てる』『照れて頬を染め、目をそらす』『美奈都から遊園地の楽しみ方を教わって大はしゃぎする』『美奈都と水泳対決をして子供のような言い訳をする』など、今となっては想像できない等身大の少女折神紫が描かれている。
柊篝の固有エピソードでは風邪を篝に移すまいと部屋の外に追い出したり、美奈都と関わる内にだんだん肩の力が抜けていく篝を見て微笑ましく思うなど、後輩に心を配る姿が描かれている。
また、「折神紫【鎌府高】」のカードエピソードにおいては、美奈都がどこにもいなくなる悪夢にうなされ、それが正夢になることを恐れて一日中美奈都にくっついてまわる様子が描かれている。そのエピソードから遠くない未来に大災厄が発生したことを考えると、紫がタギツヒメと契約を交わすに至った心情が痛いほど理解できるものとなっている。