「地獄というものが本当にあるのか… あるのであればどれほどの絶望や嘆きなのか…… それを味わいたいのでござります」
CV:堀川りょう
概要
三途の川の底から出現した謎の外道衆で、名前は「筋柄」ではなく「筋殻」。
一人称は「われ」、二人称は「あんたさん」と見た目通公家言葉で気取った話し方が特徴で、武器も蹴鞠や「削身断頭杓」という大きな杓を扱う。
他にも手を大ヅメに変えて敵を切り裂いたり、電撃を放って攻撃したり、特殊な紙を切って分身体の「切神」を生み出したりとかなり多芸。
さらに巨大戦ではこちら側の必殺技を受け止めて投げ返すほどのパワーを見せており、底知れない不気味さを持った策略家ながら戦闘力もかなりのもの。
初登場はストーリー中盤の第二十八幕。
単純な立ち位置は敵陣営の新入り幹部とでもいったところだが、血祭ドウコク同様先代シンケンジャーとの交戦経験があるにも拘らずそのドウコクもシタリもアクマロの事はまったく知らず、彼が配下として率いているアベコンベ、クグツカイ、スナススリ、ツボトグロ、ハッポウズ、フタガワラの7名もやはりドウコク達の知らない顔ぶれというやけに謎の多い存在であった。
さらに薄皮太夫や腑破十臓を傘下に引き込んだり、自身の配下を送り込んだ際も「三途の川の増水」という名目の裏で何やら別の企みを持っていたり。
立場こそドウコクに与する「幹部級」でこそあれど、独自の思惑のもと水面下で暗躍していた。
シタリ「やっとわかったよ……お前さん、地獄を見たいと言ってたね ……仕掛けてるのは ''裏見がんどう返しの術'' … そうだろう?」
アクマロの真の目的はなんと地獄を出現させること。
もちろん物の例えなどではない正真正銘の「地獄」であり、「人の世では味わえない極上の苦しみと嘆きを見たい、感じたい」という願望のために暗躍していたのだ。
しかし彼ら外道衆は決してあの世へ行くことができない存在であり、自ら地獄へ赴くことは叶わない。
そこでアクマロが仕掛けたのは、この世を裏返す禁断の邪法「裏見(うらみ)がんどう返しの術」。
人々の苦しみ、嘆きを六ヶ所の大地に楔として打ち込み、一直線のその中央をこの世の者でもあの世の者でもない者(=はぐれ外道など)が斬り裂くことでこの世に地獄が現れるのである。
そして計画の要として目をつけたのが腑破十臓であった。
まだ人であった二百年の昔、死病に侵され人斬りに身を堕とした十臓。
これを見ていたアクマロは現世へ赴くと、十臓を止めようとしていた妻を殺害。その魂を妖刀「裏正」に変えて十臓に手渡した。
「さぁ…これで満たされぬ器を……」
そうして術の発動に取りかかるも完成を急ぐ事はせず、配下を囮役と準備役に分けて現世に差し向け、囮役のドクロボウ、クグツカイ、ハッポウズ、フタガワラには術の発動とは無関係な地点を襲わせてカムフラージュ。
準備役はアベコンベ、スナススリ、ツボトグロの3名が務めたが、アベコンベの後に囮役の4名を続けることで真意を悟らせないよう仕向けたようだ。
それが功を奏してか、シタリでもアクマロの野望にはなかなか気づけなかった模様。
ただし楔の一つとして太夫の三味線に込められた新佐の嘆きを利用しようとした際、それがドウコクの逆鱗に触れることとなった。
「遅かったよ お前さんが目眩ましにあちこち襲ってなきゃねェ…」
「ところで分かってんだろうね? そんな術を使えば…人の世はもちろん、下手すりゃ三途の川もアタシ達も消えちまうかもしれないってのは!!」
この世に地獄を呼び出せば当然この世そのものが消滅する。そして彼らアヤカシは元々三途の川の穢れから生まれた存在。
この世に生きることもあの世に行く事も叶わないため、三途の川が無くなればそのまま滅び去る他ない。
早い話がアクマロは「自分の快楽(趣味嗜好)のためだけにすべてを滅ぼしうる凶行に着手していた」のである。
だがそれほどのリスクすらも「この目この身で地獄を味わえるならば些細なこと……」と言ってのけ、現世へ赴くのだった。
そして配下のツボトグロが最後の楔を生み出したことで術の準備が整い、楔を打ち込んだ地点からはあの世の妖気が噴き出しはじめる。
しばらくして妖気の奔流が収まるとその跡に謎の石積が出現。
十臓に対し「おお…ご家族も喜んでおられる様子…… さあ早く魂の解放を…そしてわれには地獄を……!!」
と、最後の仕上げとしてそれを斬り裂くよう急かす。
だがその刃は自身に向けられ、裏正の試し斬りで大きなダメージを受けてしまう。
「元の切れ味だ…礼を言っておこう …裏正の正体など最初から気づいていた」
「──外道に堕ちるとはそういうことだ… もはや裏正(コイツ)は一蓮托生……!!!」
十臓は裏正が自身の妻の魂でできた剣であることも、妻がなお己を止めようとしていた事も知っていたが、それでも斬り合いに快楽を見いだす彼は「はぐれ外道」を超えた真の外道に成り果ててしまっていた。
「十臓さん…あんたさんこそ…本当の外道にござります……!!!」
「──だとすれば、俺にやらせてもムダだったというわけだ」
そうして当て付けのごとく石積を斬り裂く十臓。
すると発動は失敗し、開きかけていた地獄のスキマも次々と消えていった。
長年をかけた計画があえなく瓦解したアクマロは激昂し、「もはや…!!望みもなにも!!」と辺りに電撃を放って暴れはじめた。
しかし裏正で斬られたダメージが大きかったのか、シンケンジャーの繰り出した外道覆滅と烏賊五輪弾の同時攻撃で倒されてしまう。
二の目になった巨大戦では完全にヤケを起こし、「せめてあんたさん達だけでも地獄へ……!!」などと狂乱しながらもサムライハオーのモヂカラ大団円を真っ向から受け止めて投げ返すほどの強さを見せたが、キョウリュウサムライハオーの十二折神大侍斬りを受け敗北。
「この痛み…見えた!これが…これがぁ!!アハハ、アハハハハハハッ!!!」
その切れ味のあまり真っ二つに両断されたアクマロだが、今際の際に自らが望んだ「地獄」を見い出し、歓喜の声を上げながら散っていったのであった。
余談
- 外道衆の異端者
他の面々がこの世に執着するのに対し、あくまでもあの世(地獄)に執着していたのはアクマロだけ。
もちろん彼もアヤカシである以上は人々の苦しみや嘆きを糧としているものの、そのためにこの世に侵攻していた外道衆にあって「地獄をこの目で見てみたい」などという価値観は異端、危険思想の類いでしかない模様。
ゆえに彼の野望を知ったシタリも「こいつは頭がおかしいよ…!!」と戦慄するほどであった。
- アクマロの誤算
彼の綿密な計画が破綻したのは太夫いわく「人でないお前が人の情を頼みにしたのが失敗だった」とのこと。
- ちなみに
アクマロは現在のシンケンジャーを批評しているが、アクマロの配下のアヤカシは、シンケンジャー5人やシンケンジャー6人ではなくシンケンジャー1人やシンケンジャー2人に敗れている。
- 幹部達とのアヤカシ関係
最初から中立寄りの十臓や薄皮太夫はなんとも思っていない様子で、ドウコクも下記の経緯を経て「良いだろう、好きにしな」と様子見とも一応の信用ともとれる態度を示した。
だがシタリだけはアクマロに警戒心を持ち続け、最後まで一切信じていなかった。
- なお初めて顔見せに来た際は
「ドウコクさん、御機嫌よう。われは筋殻アクマロと申しまして、長く三途の川の底におりました者… 力の足りなさ、不甲斐無さ、とても水面(みなも)に浮かぶ事など叶いませなんだが…此度のドウコクさんの夏のお力でようやくこの程度の力を……」
と口上を述べつつ、光弾を撃って船外にいた大勢のナナシ連中や大ナナシを一掃して力を示し、
「ドウコクさん、われをこの船にお迎え下さりませ……力を頂いた御恩奉じ、必ずやさせていただきます」と傘下入りを願う。
しかしドウコクは抜刀するや「オレは口だけってのが一番気に食わねェんだよ!!」と左肩を打ち、アクマロの出方を探る。
それでも微塵も動じず、「テメェ…避けられたハズだぜ」と言うドウコクに対し「お手向かいは致さぬ証……どうぞお迎え下さりませ 人間共を死ぬほど哭かせてご覧に入れます… 身も世もない血の涙……たまりませんなぁ」と言ってのけた。
- モチーフ
大将のドウコクやクサレ外道衆の脂目マンプクを含め、幹部たちは七福神がモチーフのひとつになっている。
彼の場合は恵比寿で、肩にはシャチホコの意匠も見られる。
恵比寿はタイを抱えているので、シャチホコはおそらく魚繋がり。常に不気味な笑みを浮かべた表情は「恵比寿顔」からだろうか。
- 中の人ネタ1
声を演じた堀川りょう氏は「名探偵コナン」の服部平次役などで知られているが、後年の実写版コナンで平次を演じたのは丈瑠役の松坂桃李氏であった。
- 中の人ネタ2
堀川氏は子役時代に「水戸黄門第3部」第7話に出演し、浄寛和尚役の高橋元太郎氏(水戸黄門のうっかり八兵衛役)と共演している。
関連タグ
侍戦隊シンケンジャー 外道衆 血祭ドウコク 薄皮太夫 腑破十臓
ハイネスデューク_ウラ:『百獣戦隊ガオレンジャー』に登場した公家繋がりの幹部歌人。登場期間が4ヶ月間、体色が緑色、策略家である他に、同じ組織のメンバーを利用して自身の野望を叶えようとするも、最後はその人物にしてやられたという点が共通している。