概要
2020年現在、単にデロリアンといえばSF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ』に登場する、タイムマシンとして改造された車両が有名である。
この車は劇中でも大きく数回改造がされており、PART3の最後に失われるまで、何回も姿を変更している。
なお、この項目は基本的にネタバレを大量に含むため、この映画を見ていない場合閲覧には注意を要する。
基本仕様
- 次元転移装置のタイム回路のスイッチをオンにする。
- 行き先の時間(月/日/年(西暦)/時/分)をテンキーで入力し、設定を確認。(ディスプレイは3段表示で、上から「行きたい時間」「現在の時間」「前回の出発時間」の順)
- 時速88マイル(約140キロメートル)へ加速する。
以上のプロセスをもってタイムトラベルが可能となる。タイムマシンとして必要な次元転移装置には1.21ジゴワット(架空の単位)の莫大な電力が必要であり、どの仕様にも電源確保用の装置がそれぞれ取り付けられている。
なおタイムトラベルに成功すると、目的時間の同じ場所に時速88マイルで走ったまま突入することになるため、道が無くなっていたり現在には存在しない障害物に衝突する危険性を考えて出発する必要がある。
そして出発側では閃光を発しながらデロリアンが消滅して炎の轍が残り、到着側には3回の閃光・爆風ともにデロリアンが出現する。
デロリアンを選んだ理由は、ステンレスボディーがタイムマシンにとって好都合なことと、見た目のかっこ良さから。
PART1
最初期の仕様。
タイムトラベル用のエネルギー源は核燃料(プルトニウム)で、タイムマシンに改造したドク(エメット・ブラウン)はこれを北アフリカの過激派からだまし取って入手していた。当然これがなくなるとタイムトラベルができなくなる。
他にも、タイムトラベル直後に車体がドライアイス(二酸化炭素の固体)で覆わるといった不具合も残っていた。日本製(FUTABA=双葉電子工業)プロポで遠隔操作することも可能(テスト搭乗者がドクの愛犬アインシュタインだったため)だったりと、実は地味な面でも結構スゴイ。
この実験中にマーティ・マクフライは(意図せず)1955年にタイムトラベルすることになるが、その際に消費してしまったプルトニウム(原子炉)に代わって、雷エネルギーから必要なエネルギーを得るための端子が追加された。イラストはこのときの仕様で、車から伸びているフックがその端子である。
このときエネルギー量の説明で言及されたエネルギーの単位「ジゴワット」(jigowatt)は脚本家のミスとして有名。正しくは「ギガワット」(gigawatt)。
ちなみに、開発したドクは1955年当時に持っていた広い土地と邸宅を売り払ってまで製作したあたり、ガチで彼の人生をかけた発明と言える。
実はドクが閃いた次元転移装置(フラックス・キャパシター)の構想はマーティが辿りついた1955年の事であり、しかもマーティが完成品のデロリアンでやってきた事から次元転移装置の実現に確信を得たようである。
PART2
厳密にはPART1の最後に登場した仕様で、飛行機能(作中の2015年時点では飛行可能な自動車が普及している)や動力源としてミスター・フュージョン(そこらのゴミ等で核融合を起こす機器。ちなみに未来での市販品)を追加、さらにはPART1初期の仕様の不具合も改良したシリーズ中もっとも高性能なデロリアン。
なお改造後のデロリアンでも走行そのものには通常のガソリンを使用していることがPART3で明かされた。
ナンバーも2015年仕様のバーコードのようなものになっており、飛行中にタイムトラベルしてもやはり炎の轍を空中に残す。
一回のみの使用だが、瞬間的にタイムトラベルできる機能を持っていたようである。
PART3
ここでは大きく2回の改造がされている。
1回目は、PART2の最後、すなわち1955年に落雷の直撃を受けて1885年に行ったデロリアンを時代に取り残されたマーティーと当時のドクが「発掘」してタイムトラベル可能な状態まで修復した仕様。イラストの仕様である。
落雷による過電流でタイムトラベルに必要なマイクロチップ(主人公マーティーお墨付きの日本製だが、戦後10年のドクの頭の中では日本製=劣悪品のイメージだったため複雑な表情をしていた)が焼き切れてしまっていたため、真空管や電解コンデンサー等で代用回路を造り接続。可能な限り小型化したらしいがそれでもデカ過ぎて車内に組み込めず、ボンネットに括り付けるというアバンギャルドな姿になった。これによってタイムトラベル機能は復帰したが、飛行機能も破壊されておりこちらは修理できなかった模様。
幸いなことにミスター・フュージョン(核融合炉)は無事で、「電気エネルギーの心配」はなかった。他にも経年劣化で使い物にならなくなったタイヤとホイールが1955年当時主流だったホワイトリボンタイヤ(アメ車などにみられる白いラインの入ったタイヤ)に履き替えられたり、行き先である西部開拓時代の道路事情を踏まえ車高が上げられている。
西部開拓時代で、タイムトラベル直後に偶発的に鉢合わせしてしまったインディアンの一群に攻撃されたことが原因で燃料漏れを起こしてガソリンを失ってしまい(核融合炉はあくまでもタイムトラベル用で、走行には転用できない)、アルコール度数の高い酒で代用を試みようとしたら、今度は燃料噴射装置も爆発して故障した為、自走不可能になる。
そこで2回目は、デロリアンを蒸気機関車で押すことで時速88マイル(約140㎞/h)を得られるよう、線路上を走行するためにホイールが改造されている。タイヤは押す機関車の先頭部に緩衝材として使われた。
一方機関車側は、貨車や客車等余分なものを全て切り離し(このため、マーティとドクは機関車をハイジャックする羽目になった)、できるだけ勾配もカーブも少ない平坦な線路を走り、加速剤として薪の他に、ドクが経営していた鍛冶屋で使っていた強化燃料3本を火室の中に入れて燃やして加速力を上げる事にした。ただし、蒸気機関車のボイラーでは強化燃料の火力に耐えられず、最終的にボイラーが爆発してしまっていた。
この仕様でマーティーは無事に1985年に戻ることができたが、クレイトン渓谷改めイーストウッド渓谷からヒルバレーの住宅地にたどり着いたところで慣性力を失い停止、そのままディーゼル機関車と衝突してバラバラになり、その生涯を終えた。
しかしその直後、人命救助で1885年に残ったドクがデロリアン開発で得た技術力を用いて谷に落ちたSLをタイムマシンに改造。ラストシーンでは妻子を伴い1985年のマーティーたちと再会したのだった。
原子炉や融合炉は実は後部に収まらない?
実車のDMC-12のエンジンルームを見てみると、とても原子炉や融合炉を格納できそうにもない程にエンジンが入っている為、どうやって取り付けたのかは謎。おそらく相当コンパクトかつ省スペースなサイズの原子炉もしくは融合炉だと思われる。
エンジン始動の不具合
1955年から1985年に帰る時に落雷までの時間スレスレでエンストを起こして始動に手こずったが、実は現実のDMC-12に実際にあった不具合である。設定ではその対策として実は緊急始動スイッチが存在する。
落雷電力供給
時計台の避雷針から伸ばしたケーブルにフックを接触させる方法、よく考えたら「デロリアンに長いケーブルを接続して88マイル走らせた方がより確実なんじゃね?」と普通は思うのだが…。
しかし抵抗の事を考えると妥当ともとれる。
ちなみに、途中でケーブルの繋ぎ目が外れてしまい、落雷の最中にドクは自力で再接続しているが、実は感電している。よく落雷で無事だったな。
意外と生涯が短かったデロリアン!?
1985年を基準に考えると僅か3日ほどで「完成→改良→破壊」した忙しないタイムマシンであった事となる。ただし、実際デロリアンそのものは破壊に至るまで100年の時を経ている。
デロリアンが複数!?
1955年には「1985年から来たデロリアン」「1885年から封印されていたデロリアン」「2015年からビフが乗ってきたデロリアン」「暗黒の時代改変が起きた1985年からきたデロリアン」の4つが存在した事となる。まさにタイムトラベルが無いとありえない現象である。ちなみに撮影用に使用したデロリアンも複数だという。
一つ問題なのが、「1985年から意図せず最初にタイムスリップしてきたデロリアン」の存在である。「スポーツ年鑑のせいで現代が暗黒1985年に改変されている」事がパート2で判明している為、何故影響を受けていないのかである。可能性としてはパート1のマーティとデロリアンは1955年にいる間はなんらかの形で影響を受けずに済んだと見るべきだろうか。
開発期間
ドクはタイムマシン開発に30年かけたとあるが、マーティが1985年から来た時にまだ草案の域だった次元転移装置が実証された事を目の当たりにしている。しかも、タイムマシンそのものの完成形まで見てしまっている事から1985年まで確実なタイムトラベルができる為に必要なものが世に出てくるのを待っていた可能性がある。
1955年にマイクロチップの代替にした回路、完成した次元転移装置、時間旅行に消費する多大な電力を必要とするのを知った事によってより確実なものを研究したと思われる。
また、こうなるとベースにした車がデロリアンであった必然性も頷ける。
アトラクションの8人乗りデロリアン
USJを含めた各地のユニバーサル・スタジオのテーマパークにあったアトラクション「バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド」でゲスト(来場者)が乗ることができたデロリアン。文字通り8人乗りになった大型バージョン。
テーマパークの都合上映画と設定は異なり、ここではドクが研究機関を開設し、多数の研究員とともにタイムマシンの研究を行ない、来場者にもタイムトラベルを体験させている。
すると研究所に侵入したビフ・タネンがドクを研究室に閉じ込めて元々のデロリアンを強奪してしまったため、ドクに代わりゲストが8人乗りデロリアンに乗って追跡する。
PART2準拠の高性能に加え「4次元タイムトラッキングスキャナー」という装置が新たに取り付けられており、ビフのデロリアンがどの時間に向かったかを検知できる。「現在」の研究所にいるドクと時空を超えて通信でき、ドクによる遠隔操作も可能。時速88マイル以上の速度でビフが乗ったデロリアンに追突しながら次元転移を発生させることで、そちらのデロリアンを強制的にタイムトラベルさせることができる。
ちなみにタイムサーキットのディスプレイは西暦4桁表示だがそれに収まらないくらい遠い時代にも行けることが判明した。
大人気アトラクションであったが、2016年のUSJを最後に現在このアトラクションはすべてクローズしており、利用することができなくなっている。
本編後のデロリアン
『コンテニュアム・コナンドラム』のデロリアン
part3の半年後に新たに作られたデロリアン。真正面からの見た目はpart2以前と酷似しているが、後部はコード類があること以外は普通のデロリアンとなっている。ナンバープレートはなく、改造途中だったのか、次元転移装置もないためタイムトラベル不可能。
…だったのだが、2035年から1986年に据え置き型のタイムマシンでタイムトラベルしたドクが2015年で寄り道してパーツを入手し、改造したことでタイムトラベルが可能となった。改造後の見た目は、ミスター・フュージョンがあること以外は改造前と同じ。
最終的にSL型タイムマシンのパーツと愛犬のアインシュタインを回収したドクが1893年に戻ることに使用したが、その後は不明(恐らくだが悪用されることを防ぐために破壊した可能性がある)。
『シチズン・ブラウン』のデロリアン
映画本編の1台目と同時に改造されたもの(改造途中のデロリアンが存在していた理由?)と思われるデロリアン。機能や見た目はpart2のものと全く同じものとなっている。
『THE GAME』のデロリアン
part2の最後の1955年に落雷の直撃で1885年にタイムスリップした際に複製され2025年に存在していたものが登場する。こちらも機能や見た目はpart2のものと全く同じものとなっている。
『THE GAME』は『シチズン・ブラウン』をゲーム化したものに近いため、この2作品の一番最初に登場したデロリアンは複製されたもの、後に登場したデロリアンは1台目と同時に改造されたものと思われる。
『THE GAME』にはさらに、青いデロリアンや、黒いホットロッドのデロリアンが登場する。
シリーズ外のデロリアン
『レディ・プレイヤー1』のデロリアン
外見はpart1とほぼ同じだだが、ナンバープレートが「PARZIVAL」である他にもpart2の飛行機能がある。また、『ナイトライダー』のナイト2000ことK.I.T.T.が搭載されており、フロント部のDMCのエンブレムがセンサーライトになっている。(ただし、装飾だけなのか劇中でK.I.T.T.が喋るシーンはない)
『トランスフォーマー』シリーズのデロリアン
2020年に35周年を迎えた「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と「トランスフォーマー」のコラボ企画により、新しいオートボット「GIGAWATT」が誕生。
ビークルモードはデロリアンそのものであり、役職は「TIME TRAVELER」。
ロボットモードは胸部中央の次元転移装置とドクのものを模したゴーグルが特徴。
因みに日本国内でも「GIGAWATT」で名称が統一されているが、これは「ギガワット」とも「ジゴワット」とも呼んでもらえるようにと言う配慮の結果である。