概要
一般には白い馬を総称して「白馬(はくば、しろうま、あおうま)」と呼ぶが、馬の遺伝学を考えた場合は、大きく以下の3毛色に分類される。これらは正常な遺伝子の発現によるものであり、先天的なメラニン欠乏症であるアルビノとは異なる。
- 芦毛(あしげ)
葦毛とも。英語ではGray。生まれたばかりの頃は鹿毛(こげ茶)・栗毛(茶)・青毛(黒)などの色合いで、年を取るに従って徐々に白っぽくなっていき、最終的にほぼ真っ白になる。この性質から、コアな競馬ファンは芦毛の人気サラブレッドの写真を見て、毛色から何歳ころの写真か見当がついたりする。日本では古来、以下の白毛や佐目毛が非常に稀だったので、「白馬」といえばふつう白くなった芦毛の馬を指した。(従ってメジロマックイーンやゴールドシップなどの芦毛馬について、引退後に馬体が白くなった彼らを「白馬」と呼ぶのは日本語として誤っていない。「白毛馬」と混同するのは誤りだが。)
地肌は他の毛色の馬同様黒っぽく、全身が白くなっても鼻や目元や足元など毛の薄い部分は黒みがかっている。
- 白毛(しろげ)
最も真っ白いタイプの馬。英語ではWhite。芦毛と違い、生まれた時からすでに白く、地肌はピンク。
白い毛色をつくる「白毛遺伝子」が発現したり、体の一部に白いぶちをつくる「サビノ遺伝子」が全身に発現したりした場合に生まれる。しかしこれらの遺伝子は少ないため、結果として出現率は非常に稀となっている。
突然変異によって生まれた白毛からも、白毛遺伝子は遺伝する。
- 佐目毛(さめげ)
主に象牙色の馬。英語ではCremello(クリーム色)。一般的な鹿毛(こげ茶)・栗毛(茶)・青毛(黒)の遺伝子を持つ馬に、毛の色を薄くする「クリーム様希釈遺伝子」が強力に発現したため、白っぽい毛色となったタイプ。地肌の色が透けて、ピンクっぽく見える場合もある。
クリーム様希釈遺伝子はサラブレッドではごく初期(18世紀末まで)には淘汰されてしまったため、日本の競走馬の毛色登録の選択肢に佐目毛はない。一方アメリカでは20世紀後半に数頭この遺伝子を持つ馬が現れ(突然変異かサラブレッド以外との交雑の可能性があるとされる)、細々とではあるが生産・登録が行われている。
白馬の競走馬
競走馬においては、「白馬は弱い」という認識が強い。
実際のところ鹿毛系統に比べ目立ちやすい毛色で、昭和までは芦毛の場合は色が目立つ割りに重賞戦線で中々好成績を残した馬がいなかったのは事実である。
また戦前の競馬というのは軍馬の改良を目的としており、戦国時代ならともかく近代戦では目立つ毛色は不利になるため、芦毛が冷遇されていたことも理由と思われる。
しかし平成以降は、タマモクロス、オグリキャップ、セイウンスカイの登場から芦毛に「泥臭い」「叩き上げ」のイメージが付き、さらにメジロマックイーン、ビワハヤヒデ、ゴールドシップ等の優駿の活躍もあり、現在ではいわゆる「主人公属性」のようなイメージが付いている。
白毛の場合はそもそも数が少なすぎるため、強さを語れるレベルになかったが、1996年に良血の白毛であるシラユキヒメが誕生。同馬は日本初の白毛重賞馬であるユキチャンや、白毛にブチ模様で人気を博したブチコを産む等、牝系では徐々に広がりを見せている。
そしてついに、ブチコの娘であるソダシが2020年に白毛馬としては世界初のGIでの勝ち鞍を上げ、同年のJRA年末表彰にて満票で最優秀2歳牝馬部門に選ばれた。
更に翌年にソダシは桜花賞を制し、『白毛馬初のクラシック制覇』となった。
また、地方競馬の川崎競馬場では、12月に白毛・芦毛馬限定の『ホワイトクリスマス賞』が行われる。
フィクションにおける白馬
古今東西を問わず、ファンタジーや歴史ものの映画、アニメ、漫画などの創作物には頻繁に登場する。
三国志演義
劉備が中盤に手にいれた的盧は芦毛の優駿とされる。檀渓を飛んだあとは特に言及されることは無いが、龐統が馬を怪我した時に劉備の乗馬の白馬を送ったとされ、これが年を取った的驢という解釈もある。
マンガ作品
『みどりのマキバオー』の主人公、ミドリマキバオー(左画像)は白毛。
『風のシルフィード』の主人公、シルフィード(右画像)は芦毛。
※もしかして
→白馬探
→白馬組
宮中行事の「白馬節会」は「あおうまのせちえ」と読む。元々は青馬(青黒い~青灰色の馬)を使っていて、白馬を使うようになっても読みは変わらなかった。
関連タグ
論理学…公孫竜の言論の「白馬非馬説」(→Wikipedia「名家 (諸子百家)」)に登場。