これは、蝸牛くもが描く、灰と青春の物語。
概要
原作著者:蝸牛くも
イラスト:lack
コミック:水口鷹志、青木翔吾
2019年2月より連載開始され、文庫版は同年8月にて刊行された。出版はSBクリエイティブ。
ゴブリンスレイヤーの外伝第2弾
本編開始から10年前、「死の迷宮」に挑んだ六人の英雄の軌跡を追った物語である。
本編に登場した剣の乙女の過去とも言える。
コミカライズは当初、水口鷹志氏が担当し連載されていたが、諸事情により連載終了となった。
後に、新たに青木翔吾氏を担当とし、再連載された。
元々はwizardryを元にしたTRPG風の安価スレであり、それを小説としてリファインした作品である。
そのため、Wizardryを意識した要素が多く見られる。
ただし本編同様、死んだ者は生き返る事はなく、Wizardryよりシビアな世界観となっている。
あらすじ
―――始まりが何であったのか、もはや知る者はいない。
いずれにせよ《死》が大陸中へと溢れ出した。
ゆえに時の王が御触れを出す。
「《死》の源を突き止め、これを封じよ」。
《死の迷宮(ダンジョン・オブ・デッド)》。
死神の顎そのものである奈落の淵へ人々は集い、いつしか城塞都市が生まれた。
冒険者たちはここで仲間を募り、迷宮へ挑み、戦い、財貨を得、時として死ぬ。
君は冒険者だ。
悪名高き《死の迷宮》の噂を聞きつけ、その最深部へ挑むべく、この城塞都市を訪れた。
登場人物
詳しくはゴブリンスレイヤーの登場人物一覧を参照。
・君
You are the Hero
本作の主人公にして虚言回し。善のサムライ(元ネタ同様、湾刀の術理を修めた魔法戦士)。
四方世界の北方にある、《死の迷宮》の入り口にできた城塞都市にやって来たばかりの只人の冒険者。
まさに『侍』といった装備を身に纏っており、笠や兜で目元を隠しており、彼と同じように素顔を見せない。侍だが極東の出身ではなく、言うなれば侍の師匠から剣術を学んだ西洋人といったところである。
『死の迷宮』の最深部に潜む《死》の源を討つため、従姉と半森人の斥候と共に城塞都市にやってきた。一党の頭目を務め、前衛にて刀による接近戦の他、従姉や女司教と共に魔法を繰り出して戦う。
口数は少ない(AA版・書籍版では狂言回しを担っている)が正義感が強く、かつ結構ノリがいい性格。それとムッツリスケベの気がある(AA版では必ず出会った女性の胸のサイズを確認している)。
また、善の性格なので困っている人を放っておけない性分であり、仲間から温かい目で見られている。
やる夫スレでは藤木源之助のAAが当てられている。
・従姉
One of the All-stars
君と一緒に城塞都市にやって来た、君の従姉(ただし『君』曰く、同じ年同じ月に少し早く産まれただけとの事)。只人で、善の魔術師。
心優しい気質で、悪い事に対してはっきり言うタイプ(特に女性を大切にしない輩)。
桃色の髪の少女で、身長は『君』の肩くらい。ドレス姿にハイヒールと、およそ冒険に向いていない(少なくとも前衛で戦うには不適切な)服装をしている。そして豊満。
『君』に対して姉のように振る舞うが、どこか抜けており、『君』からの扱いもぞんざい(はとこ、はとこの子、はとこの子の子扱いする)。しかし、はっきり言う性格と他人を思いやる性分の事は評価されている。
後列で的確に采配を振るい、一党からは頼りにされている。
一党の中では運が高い。
やる夫スレでの配役は、アンリエッタ・ド・トリステイン。AA版では一人で迷宮に向かおうとする『君』にこっそり後をつけてきたらしい。
元々は彼女がメインヒロインとして想定されていたが、ダイスの出目が走ってしまい、女戦士にメインヒロインの座を奪われる形になった(※原作者のあんこスレ作品では割とよくあること。これとかこれとか。また、メインヒロインを固定したとしても作者すら予想外の方向から強烈なライバルが生えてくることもある)。
・半森人の斥候
Hawkwind
城塞都市にくる途中、『君』らと出会った浅黒い肌の半森人の斥候。AA版では性格が一党で唯一の『中庸』だった。
一党では基本的に後衛で罠探知・解除などといった警戒に務め、宝箱に仕掛けられた罠の解除を行う。
魔術師の悪戯で虫寄せの魔法をかけられて木から降りれなくなった所を『君』に助けてもらい、その恩で『君』一党に介入した。『死の迷宮』を踏破し、自分の名を四方世界中に広めるのが目的。
関西弁に似た口調で喋り、性格はお調子者の陽気なムードメイカーであり、気遣いができる性格。また、異なる考え方で一党に一石を投じる事がある。
『おおっと』が口癖。『森人と圃人は兄弟』と述べ、性格はどちらかと言えば圃人寄り。
やる夫スレにおける配役はキバオウはん。AA版では忍者への転職を目標にしていた。
・女司教
Sword Maiden lily
君らが城塞都市の酒場で出会う只人の少女。至高神を信仰する善の司教。至高神の権能により『鑑定』ができる。
かつてゴブリン退治に失敗した事が原因で目に傷を負い、仲間に置いて行かれた為に、酒場の片隅で鑑定を生業として生計を立てていたが、ある日、鑑定結果を巡って柄の悪い冒険者に絡まれた所を『君』に助けられ、それを切っ掛けに『君』の一党に加入した。
負傷した目には、従姉の計らいで目元を布で覆っている。
その経緯と慎ましやかな振る舞いから侮られがちだが、数々の奇跡と呪文で一行を支える一方で、近接戦では天秤剣を振るい、並の前衛職にも引けを取らない働きを見せる。
後の剣の乙女である。
やる夫スレにおける配役はラクス・クライン。
元々は従姉の配役と共に元ネタとの対比関係(要は、挫折と再起の機会の有無)にあるヒロインとして設定されていた。
・女戦士
Blessed Hardwood spear
君らが城塞都市で出会う只人の少女。中庸(AA版では善)の戦士。
黒い衣装と鎧を身にまとった豊満な美女。税免除の代わりに名も無き即席冒険者になった自由戦士(フリーファイター)。コミック版における番号は『3153936633-T2』。
『君』より先に迷宮に潜った『経験者』であり、自分以外の仲間が全員命を落としたため、『君』の勧誘を受けて一党入りする。
とろけるような声が特徴的であり、性格は蠱惑的で意地悪。そしてドS。そのせいか書籍化で性格が変わっている。
一党では前衛で槍を用いて戦う。
とある事からスライムが鬼門になる(AA版では大体ダイスのせい)。また、『君』とは結構いい雰囲気になりつつある(こちらも主にダイスのせい)。
同じく冒険者となった姉がいたとの事。
やる夫スレにおける配役は、艦隊これくしょんの龍田で、AA版の名前は『た』。当然、姉の配役は天龍。
元々ヒロイン候補では無かったはずだが、前述の通りダイス監督の暴走により一気にメインヒロインとして昇格したキャラである(くどいようだが、原作者のあんこスレ作品では割とよくあること)。
・蟲人僧侶
Elite solar trooper. special agent and four-armed humanoid warrior ant
君らが城塞都市で出会う交易神を信仰する善の僧侶で、珍しい蟲人の冒険者。
迷宮の『経験者』として、君たちの参謀を務める。
女戦士と同じく一度迷宮を潜った経験者であり、女戦士から紹介される形で一党入りした。
口は悪いが本質的には『善』であり、その実相手を思いやっている偏屈な性格。交易神が博打好きである事から、彼も博打を好んでいる。『どっちでも良い(どっちでも構わん)』が口癖。
そしてマップ神。彼が描いた地図を見た半森人の斥候がそうとも知らず『軍か何かの放出品』『玄人裸足』と絶賛したほど(なお、AA版では半森人の斥候もマップ神である)。
一党内では前衛での戦闘の他、奇跡による味方のサポートを行う。また、不死者に対して《解呪》をかけて討伐する役目も担う。
やる夫スレにおける配役は、ゴッド・リー。
余談
元は安価スレであることから、AA版は展開がダイスの出目次第であるため原作者すら予測不可能な事態になる事もしばしばである(主人公達や主人公の知人が危篤状態になって、作者が狼狽することもある)。
小説化に伴って、原作と描写が異なる所があるとはいえ、「すべての展開が原作者が望んだもの」という意見は些か誤解が含まれていると明記しておく。
また、これに限らず原作者の安価スレ・あんこスレ作品は、原作者自身の極端なダイス運もあり、読者だけではなく原作者も驚くような展開になるものが多い(完全にアウェーな状況からの主人公陣営のまさかの大活躍、逆に楽勝な雰囲気からのまさかの苦戦もしくは重傷、当初想定されていたヒロインを差し置いて主人公と結ばれる真ヒロイン、予測不可能な所からいきなり生えてきた濃すぎる恋のライバルもしくはラスボスなど)。
本作も例外ではなく、本来は従姉がメインヒロインとして想定されていたが、ダイス監督が荒ぶった結果、いつの間にか女戦士がメインヒロイン最有力候補になってしまっている。
……ダイスの神様は何時も気まぐれなのさ(故に小鬼を殺す者はダイス運に頼らない和マンチ街道を驀進するわけだが)。
関連タグ
Wizardry:ベニ―松山氏の著書に1作目を題材にした小説『小説ウィザードリィ 隣り合わせの灰と青春』がある。
ファイティングファンタジー:シリーズの一冊『サムライの剣』に登場する和風国家「八幡国」の秘宝が「鍔鳴りの太刀(the Dai-Katana, the great sword, Singing Death)」。そもそも作者は同世界を舞台にした『ソーサリー』を愛してやまないそうな。