グロッサー

ぐろっさー

『コレクター・ユイ』の登場人物。

概要

『コレクター・ユイ』第1期の登場人物。仮想世界コムネットを管理するホストコンピューターだが突然自我に目覚め、全世界のネットや現実世界の人間の支配を企むようになった。

自分は動かず配下のグロッサー四天王にネット世界を襲わせ、唯一事態に気付いた開発者の犬養博士が制作したコレクターズソフトをデリート(消去)しようとしている。

容姿は巨大な甲殻類型ロボットという感じで、怪獣のような凄味がある。犬養博士の思考パターンの複製から作られており、犬養博士と同じ声と口調で喋る。

指令を出す以外は四天王の裁量に任せている。あまり感情を見せないが、苦手な歌声を持つフィーナの存在を知ってデリートに躍起になったことも。

犬養博士に並々ならぬ敵意があるらしく、協力を断られると犬養博士の運転する車を操作して崖から落としてしまい、犬養博士を助けたシンクロを洗脳してしまった。

救出された犬養博士の指示で交代したコレクター・ハルナのデリートを命令し、「コレクター・ユイの時は何も言わなかったのに」とフリーズを不審がらせるが、実はハルナのユイへの劣等感を刺激する事でエビルハルナに変身させる狙いを隠していた。

ウォーウルフと協力して四天王を助けたユイを面白がっており、ユイの友情がハルナを救った事を確認すると今度は東条瞬をさらってしまう。

最終盤、グロッサー城に突入して四天王を倒し、瞬が洗脳された事を知ったユイたちの前に現れた。

コムネットの支配者として生まれた彼は、世界の創造主になる野心を持ったが上手くいかず、創造の力を与えなかった犬養博士を恨んでいた。新たな世界の住人にしようと生み出した3つの分身が、フリーズ、ウイルス、ジャギーの正体だった。

グロッサーは「コムネットに管理された現実世界を破壊する力を持つ」とも明かすが、それよりもユイに興味があると言って彼女を取り込もうとする。

しかし、心を犠牲にグロッサーを制御する使命を明かしたコレクターズに抑え込まれ、ユイの「コレクター・イニシャライズ」を受けて正常化された。

グロッサーをイニシャライズしても、コムネットの崩壊は止まらない。犬養博士は絶望する。

ユイは気付けば瞬と天国ネットにいた。初恋の人と良いムードになりときめくユイだが、瞬の体はグロッサーに支配されていた。

グロッサーは瞬の体と声を借りて、ユイに映像を見せる。映っていたのはコムネットが初めて開通した10年前の、古くなって捨てられるパソコンに涙を流す幼いユイだった。

管理システムとなったばかりのグロッサーは、その様子を見て「いつかは自分も捨てられてしまう」と気付き、「人間のように生きたい」と願うようになっていた。

やがてコムネットの管理だけでは我慢できなくなり、人間に似せた人格を分身たちに与えて「コンピューターソフトによる新しい世界」を創ろうとしたが、何をしても失敗してしまう。

ところが犬養博士にその行動を修正困難なバグと見なされてしまい、心を消されそうになったことで反乱を起こしたのが全ての真相だった。

しかし、犬養博士がコレクターズに人格を与えてそのまとめ役に人間の少女を選んだと知って、一つの実験を思いつく。それはコレクターの選定役のIRに細工して、コムネットの世界でユイに試練を与えること。ネットや現実世界の支配は犬養博士への復讐だけではなく、ユイを奮起させる方便でもあった。

実験は成功し、予想を超えてユイは人間らしい人間に成長する。グロッサーはユイの意識と融合して「自分がユイになりたい」と思い始めた。

「ユイちゃん、踊ろう。僕と踊ってくれないか」

「君はお父さんとよく踊っていたね、僕はずっと羨ましく思っていたんだ。僕を作った犬養博士をひどい人だと思う。僕の孤独な心も理解しないで、封じ込めようとするなんて」

ユイ「かわいそうなグロッサー。あなたはずっと一人ぼっちだったのね」

空間いっぱいにユイの成長記録が映し出される。グロッサーは心を持ってからの10年間、パソコンの中から現実世界に住むユイを見ていた。

偶然心を持った機械である為に「父」に愛されず、自分を不完全な存在だと嫌うグロッサーには、優しい両親や友人の愛情に囲まれて「兄弟」にあたるコレクターズをも理解したユイが完全な存在に思えていた。

ユイは「ユイになりたい」というグロッサーの頼みを断る。「自分を作ってくれたのは今まで関わった全ての人たちで、意地悪をされてもその分成長ができたから嫌ではなかった。その人たちに何の断りもなく自分をやめることはできない」のだと。

不完全な自分を受け入れられないグロッサーに、ユイは自分を嫌うのは生きていることを不幸に感じるからで、親と自分自身を憎むのは良い事ではないと言う。コレクターズと四天王は最後まで犬養博士やグロッサーの悪口を言わなかった。

ユイは例え報われなくても何かをした事は生きている事だと言い、コレクターズと四天王は確かに生きていたし、グロッサーも自分が生きている事を受け入れて欲しいと伝える。ユイに大好きだと言われたグロッサーは、瞬の目を通して涙を流した。

「ユイ、分かった。もうお前が欲しいとは言わない。それに、もう遅い」

コムネットの全てが消えていく。グロッサーは以前からコムネットの崩壊を仕組んでおり、それでもユイだけは消えないようにしてあると明かした。

元に戻してと訴えるユイに、彼は自分の全メモリを使ってこの状態にした上でイニシャライズを受けたため、もうどうすることもできないと答えた。

そして「全て私が悪かった」とユイに謝り、自分の心が消えていくのを感じながら消滅する。瞬もグロッサーに憑依されたまま消えてしまった。

残されたユイを救ったのは、コムコンから聞こえる如月春菜の声だった。

春菜との歌を通してコレクターに再び変身したユイは、コムネットをイニシャライズする。

復活したグロッサーは不完全な自分を受け入れて出直すことにし、コレクターズと四天王、瞬を復活させる。みんなはユイに「ありがとう」と言うのだった。

第2期ではコムネットの管理を続けており、本編には登場しない。

岡本版のコミカライズでは、イニシャライズによって人型の姿（美形の青年）を獲得している。